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「将来のAGAになりやすい傾向と薬剤の効きやすさを遺伝子によって予測」アンドロゲンレセプターの遺伝子検査

将来のAGAになりやすい傾向と薬剤の効きやすさを遺伝子によって予測

男性型脱毛症(AGA)の原因は遺伝と男性ホルモンと言われており、Nyholtらの研究報告ではAGAは遺伝率0.81という報告があります。また男性ホルモンのDHT(ジヒドロテストステロン)は毛乳頭細胞の細胞質内のアンドロゲンレセプター(AR)に結合することで受容体‐DHT複合体は核内に移行し、転写因子として働いて標的遺伝子に転写を調節しています。アンファー研究所ではこのAGAの発症および進行とアンドロゲンレセプター遺伝子についてその相関について2002年から研究をしてきました。

アンドロゲンレセプターには感受性に個人差がある

アンドロゲンレセプター(AR)遺伝子は6個のエクソンから成っていますが、そのうちの第1エクソンに存在するCAGおよびGGCの繰り返し数にはわずかながら個人差が存在しています。 ところでAR蛋白はAR遺伝子を鋳型にして合成されます。そのときCAGおよびGGCの繰り返しが少ないと、AR蛋白の合成効率(すなわちAR遺伝子の発現効率)が高くなると考えられています。それによって、細胞の中にAR分子が沢山できます。AR分子が沢山できることでアンドロゲン(例えばDHT)をよく受け取るため、その作用を受けやすくなります。AGAになりやすいのは、それらの細胞がDHTの作用を受けやすいためだと考えられており、CAGおよびGGCの繰り返し数がAGAの発症および進行に深く関係しています。

薬剤の効きやすさもアンドロゲンレセプターの感受性に支配されている

我々の行った研究では、AGA被験者1,196名(18歳から62歳)を対象にAR遺伝子の第1エクソンにあるCAGおよびGGCの繰り返し数とフィナステリドの有効性との相関性について調べました。その方法はハミルトンノーウッド分類にII-v 型を加えて改定基準を作り、その基準に従って患者頭部の写真から脱毛症状の程度を判定しました。 判定されたI からVIIまでの症状型を数値1から9に変換したのち治療効果を点数化して、CAGおよびGGC繰り返し数の関係を解析しました。その結果、繰り返し数が少ないほどフィナステリドによる治療効果がでやすい傾向があり、繰り返し数が多いほど治療効果がでにくい傾向があることがわかりました。

遺伝子検査によって将来のAGA発症予測と薬剤の効きやすさがわかる

この研究によって、2つのことが予測できる検査体系が開発できました。1つ目はまだAGAが発症していない被験者が将来AGAになりやすい傾向の遺伝子を持っているのか、なりにくい傾向の遺伝子を持っているのかがわかります。2つ目はAGAの治療薬であるフィナステリドが効きやすい体質なのか効きにくい体質なのかを薬剤を飲む前に知ることができます。この検査体系は、我々が所属するNPOフューチャーメディカルラボラトリーと株式会社エスアールエルが共同開発したものです。 <参考文献> 1. Wakisaka N, Taira Y, Ishikawa M, et al.Effectiveness of finasteride on patients with male pattern baldness who have different androgen receptor gene polymorphism. J Investig Dermatol Symp Proc. 2005 Dec;10(3):293-294. 2. Ellis JA, Stebbing M, Harrap SB Polymorphism of the androgen receptor gene is associated with male pattern baldness.J Invest Dermatol. 2001 Mar;116(3):452-455. 3. Hillmer AM, Hanneken S, Ritzmann S, et al Genetic variation in the human androgen receptor gene is the major determinant of common early-onset androgenetic alopecia. Am J Hum Genet. 2005 Jul;77(1):140-148. 4. 佐藤明男, 小島夕葉, 豊島公栄, 他. アンドロゲン受容体遺伝子多型とフィナステリド感受性に関する研究. SKIN SURGERY, 15(2) : 67-74, 2006. 5. 高森健二, 勝岡憲生. 症例から学ぶあなたにもできる脱毛外来. 診断と治療社, 101, 2007.

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