日本形成外科学会専門医/麻酔科標榜医
脇坂 長興(わきさか ながおき)
40歳前後になるとちらほら現れる白髪。一定の歳になればほとんどの人に現れる白髪ではありますが、同じ50歳でもグレーの髪の人もいれば、黒々とした髪の人もいて個人差があります。さらに「抜くと増える」「ストレスが強いと一晩で真っ白になる」なんて迷信めいた話も……。
そもそも人はなぜ白髪になるのか? あのウワサは本当なのか? 白髪になってしまった髪は二度と黒くならないのか? などあまりにも身近過ぎて知られていない、白髪のメカニズムについて、脇坂クリニック大阪院長・脇坂長興先生に教えていただきました。
「白髪はごく自然な老化現象ですから、完全に防ぐことはできません。ただ、長年白髪の発生は遺伝的要素が大きいといわれてきましたが、他の要素も同程度あるいは遺伝以上に深い関連があるのでは……というのが最近の定説。正しい対策をおこなうことで、白髪の発生を遅らせたり、増加を抑制したりすることは可能と考えられています」と脇坂先生。白髪になるのを黙って受け入れるのではなく、何かしらやれることがあるようです。
まず、人はなぜ白髪になるのか? そのメカニズムからひも解いていきましょう。
「髪の色は、髪の毛皮質(コルテックス)に主に存在するメラニン(メラニン色素)の種類と量によって決まります。メラニンには黒色メラニンや真正メラニンとも呼ばれる『ユーメラニン』と、黄色メラニンや亜メラニンとも呼ばれる『フェオメラニン』があり、一般的に『ユーメラニン』が多ければ暗い髪色、『フェオメラニン』が多ければ明るい髪色といわれますが、そのどちらも含まないのが白髪です」(脇坂先生)。
メラニンと聞くと、すぐにシミの原因として敵視してしまいますが、髪の毛においては重要な働きをしているのですね。そして、何らかの理由でメラニンがつくられにくくなると、髪の毛に色をつけられなくなり、白髪が発生するのだそうです。
メラニンはメラノサイト(メラニン細胞)でつくられるのですが、それがつくられなくなる理由は下記の3つ。
1. メラノサイトの機能不全
2. メラノサイトの減少あるいは消滅
3. メラノサイトの元(メラノブラスト・メラノサイト幹細胞)の減少または消滅
これらの現象を引き起こす原因は老化が最も大きいのですが、近年は無理なダイエットや偏った食生活などによって白髪になる人が増えているといわれています。また、若白髪の原因は解明されていませんが、ストレスが影響するとも。
残念ながら今現在、白髪になった髪の毛を黒くする治療薬はありません。加齢や遺伝は仕方ありませんが「白髪の進行を緩やかにすることができる」脇坂先生からのアドバイスはこちら。
良質なタンパク質をしっかり摂る。ヨウ素を含む海草類(昆布、ヒジキ、ワカメ、海苔など)や魚介類(イワシ、サバ、カツオ、ブリなど)、銅を含む豆類をバランス良く食べ、ビタミンCやビタミンEも併せて摂りましょう。
ストレスによる白髪、若白髪を予防するためにも、自律神経のバランスを保つことが大切。そのために、しっかり睡眠をとり、軽い運動を習慣にしましょう。
ストレスを完全になくすことはほぼ不可能なので、上手に付き合うこと。おすすめは深呼吸。ゆっくり吸って、ゆっくり吐く腹式呼吸を3回ほど繰り返します。
頭皮マッサージが効果的。乾いた状態で擦ると頭皮が傷つきやすいので、入浴前に指と手のひらで頭皮全体を動かすようにマッサージするのがおすすめ。
「白髪を抜くと増える」という問いに対して脇坂先生は「それは、ありません」とキッパリ。ただ、無理に白髪を抜くと毛穴周辺の皮脂組織が傷ついて毛嚢炎など頭皮の炎症を起こす場合があり、毛母細胞が繰り返しダメージを受けると、髪の毛そのものが生えてこなくなる可能性があるので要注意。「白髪を見つけたら抜くのではなく、根元からカットする」のがベター。
「ストレスが強いと一晩で真っ白になる」という話もまことしやかに伝えられますが、これも医学的にはあり得ない話とのこと。「いつもきちんとセットしているのに、疲労でやつれ、髪が乱れていたのが白髪に見えたのでは?」というのが、現実的な見解のようです。
できてしまった白髪は、白髪染め以外しか即効性のある対策はありませんが、頻繁に染めると、やはり髪や頭皮にダメージを与えてしまう場合があります。「自分で白髪染めをする場合は使用方法をよく読み、指示された染色時間を厳守すること。美容室で白髪染めをする場合も、2ヵ月に1度を目安にし、その間に目立ってきた白髪はヘアマニキュアで対処するのが理想」とのこと。
個人差はあれど、人生の半分を白髪と共に過ごす方も多いわけですから、できるだけ増えないような食生活や生活習慣を心掛け、上手に付き合いたいですね。
(文・川原好恵)
この記事の監修
日本形成外科学会専門医/麻酔科標榜医
日本形成外科学会専門医/麻酔科標榜医/日本美容医療協会会員/特定非営利活動法人F.M.L.理事/医療法人 翠奏会理事長/聖マリアンナ医科大学幹細胞再生医学寄附講座講師
脇坂 長興(わきさか ながおき)
1962年生まれ。聖マリアンナ医科大学医学部卒業。
同大学病院の形成外科で skin rejuvenationを研究。
方法論よりも患者様が一番良くなる治療を提供することが 形成外科医の使命であると考えている。
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