メディカルチェックスタジオ東京銀座クリニック 院長
知久 正明(ちく・まさあき)
日本人の3~4人に1人が頭痛持ちともいわれていますが、特に雨の日は頭痛が起こりやすいと感じる人が多いようです。
頭痛が起こると何もする気になれませんし、ひどい場合は仕事や家事を中断して床に伏せてしまうという人もいるでしょう。また、原因のわからない頭痛が続くと「何かの病気では?」と不安な気持ちになることもあります。
ただでさえ憂うつな雨の日に、頭痛まで起こってしまうのは避けたいもの。頭痛は日常生活に支障をもたらすこともありますし、頻発すると精神的にも肉体的にもストレスになります。今回は雨の日に発生しやすい頭痛のメカニズムや対策について、医療法人社団ウェルエイジング ウィメンズヘルスクリニック東京の知久正明先生にお話をお聞きしました。
「雨が降ると頭が痛くなる方が多いと思いますが、それは気圧や気温の急激な変化が、自律神経系に影響することで頭痛が誘発されるからです。特に雨の日は気圧だけでなく湿度が高くなると不快感もますため体調不良になりやすいと考えられます。」(知久先生)
天候が原因で起きる体調不良は『気象病』と称されますが、頭痛もその一種です。特に注意したいのは梅雨や台風が多い時期ですが、最近ではゲリラ豪雨の時に起きることがあります。また、春や秋など季節の変わりめにもおきやすいです。
「慢性的に発生する頭痛には片頭痛、緊張性頭痛、群発性頭痛の3種類が存在します。そのうち、天候に影響を受ける可能性が高い頭痛は片頭痛と緊張性頭痛の2種類です」(知久先生)
雨の日の気圧の変化は頭痛の発生に影響を与えますが、片頭痛と緊張性頭痛とでは、そのメカニズムが異なります。
急激な気温や気圧の変化によって、体内で「セロトニン」という物質が生成されます。セロトニンは交感神経を刺激して血管を収縮させます。この血管収縮によって、緊張性頭痛が起こります。頭痛による痛みがさらに血管を収縮させ、緊張性頭痛を悪化させるという悪循環が発生することもあります。
成人の約10%が片頭痛を罹患しているといわれており、「ズキンズキン」と響くような痛みが片一方の頭に生じるのが特徴です。
片頭痛の原因としては様々な説がありますが、一般的には血管拡張説がその一つとして考えられています。低気圧になると血管が開き、開いた血管が神経を刺激することで片頭痛が誘発されるからです。これは高所など気圧が低いところではペットボトルが膨らむのと同様の原理です。
「気圧の変化による頭痛が発生しやすい時間帯は、自律神経のバランスが変化する早朝と夕方でしょう」(知久先生)
雨の日にはできるだけ気圧や気温、そして湿度の変化に影響を受けないように、冷暖房や除湿器によって室温や湿度をコントロールしましょう。雨の日の頭痛は、気圧の変化が大きな要因となりますので、室内の気圧を一定に保ったり、外出を控えめにしたりすることも有効です。
それでも頭痛が起こってしまった場合は、無理をせずに安静にするよう心がけてください。
片頭痛が起こってしまった場合は、患部をタオルで冷やしたり、暗所で休んだりするとよいでしょう。逆に緊張性頭痛の場合は温めるとよくなります。
雨の日に頭痛が起こると、その痛みによるストレスで肩こりを感じることがあります。肩こりによって血流が悪くなることで頭痛が発生する場合もあるので、頭痛と肩こりには相関関係があるといえます。頭痛を悪化させないために、ストレッチやマッサージで肩こりを日ごろから予防しましょう。
また、肩こりと同様に、頭痛によるストレスでめまいが起こることがあります。めまいが起こったら安静にして、症状が改善されるまで休憩しましょう。めまいが治らない場合には内科か耳鼻科を受診しましょう。
片頭痛の予防法は、誘発物質と呼ばれる「チラミン」を摂取しないように心がけましょう。
「チラミンを多く含む食品は赤ワイン、チョコレート、熟成チーズなどです。これらの食品の摂取を控えることが、頭痛の予防にもつながります」(知久先生)
また、片頭痛の予防には呉茱萸湯(ごしゅゆとう)・五苓散(ごれいさん)、筋緊張性頭痛には葛根湯・五苓散などの漢方もよいそうです。漢方には市販されているものもありますが、内科クリニックで処方してもらうこともできます。
雨の日に頭痛が起こると、薬を飲んで治そうと考える人も多いでしょう。
薬は薬局で購入できるものもありますし、クリニックの頭痛外来などで処方してもらえるものもあります。
頭痛の発作時に用いる薬剤としては、発痛物質を抑える「アセトアミノフェン」や「非ステロイド抗炎症薬」などです。非ステロイド抗炎症薬は胃に負担がかかるので、服用の際には注意しましょう。
また、拡張した血管を収縮させる「トリプタン系」「エルゴタミン」などを用いることもありますが、最近はトリプタン系を処方することが多いようです。
この記事の監修
メディカルチェックスタジオ東京銀座クリニック 院長
医学博士
知久 正明(ちく・まさあき)
東京都出身、1994年日本大学医学部卒業、2000年日本大学医学部大学院修了
国立甲府病院、国立循環器病センター、日本大学医学部循環器内科、敬愛病院付属クリニック院長を経て、
2017年12月からMCS東京銀座クリニックを開業
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