濱田 英明(はまだひであき)
「からだのバランスを崩してちょっと転んだだけなのに、足の付け根を骨折。長い入院生活を強いられ、仕事ができなくなってしまった」
「子どもの春の運動会でカッコイイ姿を見せようと思ったのに転倒。病院へ行ったら肉離れをおこしていた」
など、まさかのトラブルに発展してしまうケース。重症化しないまでも、平たんな道なのにつまづいたり、転んでしまう経験はありませんか?
「転倒するのは日々の運動不足のせいだけではないんですよ」とPHIピラティスマスタートレーナーの濱田英明先生。
その原因は私たちの生活習慣にあるといいます。今回は転ぶNG生活習慣と対処法についてうかがいました。
先ほどの例でもあったように、運動会でお父さんが転んでしまう理由。これは、若かりし頃のイメージと現在とのギャップにあるのです。若い頃は足が速かった。そのイメージのまま今の自分も“走れるに違いない”と思うんですよね。でも、実際は体力(筋力)も違うため、若いときのように1歩が踏み出せないんです。
日常生活でも平たんな道でも転んでしまう人がいますよね。歩くという行為は関節の曲げと筋力の柔軟性が必要とされます。“できて、当たり前”と思っていますが、筋力が低下していればもちろん、通常の歩行もままならなくなります。頭とからだのギャップの差は思った以上に深刻なのです。
一言でいうと、筋肉の可動域の範囲が狭くなっているからです。そうなると、ちょっとした動きの変化に柔軟に対応できず、ケガや痛みをともなうことになります。たとえば、ひざが痛い、肩があがらない、腰が曲がるなどの症状は、それぞれにともなう筋肉量や筋肉の柔軟性が低下しているのが要因。
そのためには、からだの骨格や筋肉などの構造、機能などを正しく認識するボディマッピングをすることが大切なのだとか。
「歳を重ねれば重ねるほど、意識づけさせることは有効です。これを“動きの学習”と呼んでいます」(濱田先生)
筋肉の可動域が狭まっているとお話しましたが、普段の生活で間違ったからだの動きや筋肉の使い方をしている人が多くなっています。ここで、転びやすい人の特徴を挙げてみましょう。
座っている姿勢で股関節やひざが内側に向いている人、起立するときに足が内側に入っている(内股になっている)人は要注意です。
この立ち方は疲れにくい立ち方ではありますが、股関節が内側に入り込んでしまうと1歩が踏み出しずらくなります。
立ち仕事が多い人は無意識にこの姿勢を取っている人が多いかもしれません。
PCを長時間使う人に多くみられます。
背中がまるく、首やあごが前へ突き出している状態がクセになってしまっているため、歩くときも猫背に。
からだの重心が後ろになる猫背は、太ももの裏の筋肉が低下し、可動域が狭くなります。すると腰にも負担がかかり、ヘルニアになってしまうケースも。姿勢の悪さは若い世代に多いですね。
「転ぶ=股関節の動きが鈍い」傾向が見受けられます。歩く、走るなどの基本動作は股関節のスムーズな動きが必要とされていますが、股関節の動きはお尻の筋肉で動かしているといっても過言ではありません。
つまり、お尻の筋肉が弱い人は足を後ろに引っ張ることができないため、歩く(蹴り上げる)ことができないのです。これは、女性や座り仕事が多い人に多いですね。
日常生活に必要な筋力が備わっているか否かを簡単にチェックする方法があります。
それは「片足立ち」です。
この姿勢を30秒キープできるとOK。逆に体幹のバランスが悪いとすぐに足をついてしまったり、たとえ片足立ちができたとしても以下のような姿勢の人もNG。
体幹と足の筋力を鍛える、ピラティスの簡単なエクササイズ「スタンディングフットワーク」を紹介しましょう。からだのバランスや正しい動きを意識づけて、筋力の可動域を広げることを目的とします。
1. 両足のかかとを合わせてつま先を広げます(こぶし1つ分くらい開きます)
2. ひざを曲げましょう。足首の関節が曲がるところまでで大丈夫です
3. かかとを上げます。上半身は動かさないように(ぐらつく場合は壁や椅子に手をついておこなってもOK)
4. 足をのばして両ひざをつけます(ひざが内側を向かないように)
1〜4のステップをおこなったら、4〜1の逆の手順をおこないます。これを3〜5回、繰り返します。
たかが転倒といっても、骨折から寝たきりになったり、腰痛、ひざや足の痛みをともない、生活を一変させてしまうこともあります。正しいからだの動きをマスターしてQOLを高めていきましょう。
(文・長谷川真弓)
この記事の監修
濱田 英明(はまだひであき)
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