聖マリアンナ医科大学 特任教授
井上 肇(いのうえ はじめ)
暑い夏の季節には、夏バテに悩まされる人が増えます。倦怠感や食欲不振などの夏バテの諸症状を放置して、それをずるずると引きずってしまうと、いつまでも体力が回復せず頭痛などの症状も続きます。
夏バテになってしまった場合は、いち早く解消法を取り入れて体調の回復を目指すことが大切です。今回は、夏バテを解消するための方法をご紹介いたします。
夏バテとは、夏の暑さによって自律神経系が乱れることによって起こります。症状はさまざまですが、主に全身の倦怠感と食欲不振の2つが多く見られるのが特徴です。
体調が安定しないことはもちろんですが、「身体が重く感じてだるい、やる気が出ない」「食べ物を見ても口に入れたくない」「頭が重くてイライラする」など、気持ちにも影響を与えて不定愁訴(ふていしゅうそ)の症状を引き起こします。
不定愁訴とは、体調の低下を感じるものの検査をしても明確な病変が見つからない状態のこと。「なんとなく元気がない」など、漠然とした身体の不調を感じる状態です。
先述している通り、夏バテは高い気温のせいで自律神経が乱れることが原因です。
室内では空調が効いていて快適な環境で過ごせますが、一歩でも外に出ると太陽の強い日差しが容赦なく襲いかかります。じりじりと照らしつける太陽の下、息苦しささえ感じさせる高気温の中にいることで身体の恒常性が保てなくなり、自律神経失調症になってしまうのです。暑熱馴化(夏の過酷な環境に身体が慣れていくこと)が間に合わず、自律神経失調症の状態が続くと、身体の発汗機能にも影響が加わります。これによって身体のミネラルバランスが崩れ、熱中症にもなりやすくなるため注意が必要です。
夏は夜でも気温が高く、蒸し暑さを感じずにはいられませんが、睡眠不足に陥ると夏バテになりやすくなるため要注意です。
とくに、寝不足による夏バテは頭痛を引き起こすことも多いもの。疲れやすくなったり集中力が低下したりなどの状態にもつながるため、睡眠環境を整えることが大切です。
夏バテを解消するためには、適度な運動を取り入れて発汗を促すこと大切です。しかし、炎天下の中で無理に運動をすると、熱中症になるなどの心配もあります。 長時間の運動は避け、水分補給をしっかりと行うことを意識しましょう。
あまりに熱い夏の日は外で運動をするのではなく、室内でストレッチなどを行うのもおすすめです。身体を適度に動かすことで肉体的な疲労を得ることができ、良質な睡眠につながります。また、汗を流すために夏でも入浴することを心がけることもポイントです。
夏バテを解消するためには、日頃の食事にもポイントがあります。
ミネラルやビタミンが豊富な緑黄色野菜、発汗機能を高める唐辛子、たんぱく質を含む肉類をバランスよくとりましょう。
夏場にはのど越しがいいそうめんが好まれますが、炭水化物の代謝にはビタミンB1が必須です。ビタミンB1は豚肉に多く含まれていることで有名ですが、必要に応じてサプリメントなどを利用して補給してもいいでしょう。
また、汗をかくとミネラルが不足しがちなので、梅干しやフルーツなどを意識的に食事に取り入れることも大切です。フルーツはスムージーなどにすると、のどごしがよく気軽に摂取できますね。
夏バテは、さまざまな不調を引き起こす油断ならない症状です。
長引かせてしまうと、残暑の季節になっても不定愁訴の状態が続き、体調も心も不安定になってしまいます。
夏バテの症状を少しでも感じ取ったときには、今回ご紹介した解消方法をすぐに取り入れましょう。
この記事の監修
聖マリアンナ医科大学 特任教授
日本臨床薬理学会 認定薬剤師/日本臨床薬理学会 指導薬剤師
井上 肇(いのうえ はじめ)
星薬科大学薬学部卒、同大学院薬学研究科修了。聖マリアンナ医科大学・形成外科学教室内幹細胞再生医学(アンファー寄附)講座 特任教授及び講座代表。幹細胞を用いた再生医療研究、毛髪再生研究、食育からの生活習慣病の予防医学的研究、アンチエイジング研究を展開している。
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