睡眠中に多く分泌されるという成長ホルモン。このホルモンには、新陳代謝や女性ホルモンであるエストロゲンの分泌を促したりする作用があるのです。他にも、骨や筋肉の形成や、脂肪分解、免疫力アップなどに関与しており、エイジングケアホルモンといっても過言ではないほど。眠ってから3時間くらいの間に、たくさん分泌されるので、睡眠の導入はとても大切だと、快眠セラピストの三橋美穂さんはおっしゃいます。
「眠りの前半に現れるノンレム睡眠は、深い睡眠だといわれていますが、じつはウトウト状態から熟睡状態まで、4段階に分かれているのです。ノンレム睡眠1段階が半分寝て半分起きているようなウトウト状態。2段階は、誰が見ても寝ているとわかるスヤスヤ状態。3段階は、電車で寝ているときに、姿勢を維持できないほどのぐっすり状態。4段階は、さらに深い熟睡状態になります。ノンレム睡眠の3~4段階目を徐波睡眠と呼び、これは大脳を深く休ませる眠り。この徐波睡眠を合図に、成長ホルモンが分泌され始めるのです」(三橋さん)
(睡眠サイクルのグラフ提供/三橋美穂さん)
睡眠には、夢を見ながら記憶を整理するレム睡と、それ以外のノンレム睡眠、この2種類があります。ノンレム睡眠からレム睡眠の終わりまでの1サイクルは、だいたい90分。健康な眠りの場合、徐波睡眠は、最初の2サイクルくらいに間に得られます。だから、成長ホルモンのためにも、眠り始めの3時間はとても大切。私は仕事柄、睡眠時間が少ないのですが、3時間みっちり寝れば大丈夫かも?
「しかし、ノンレム睡眠だけではダメなのです。分泌された成長ホルモンが、体内を巡るための時間が必要ですから。さらに、睡眠の後半に多くなるレム睡眠がないと、記憶の整理やストレス対処行動のシミュレーションができず、体験を学習・整理する機会が失われます。また、4時間半の睡眠が5日間続くと、脳がウツ状態になりやすいというデータや、6時間以下の睡眠が1週間以上続くと、700以上の遺伝子にダメージを与えやすくなる、というデータも。いちばん健康にいいといわれているのは7時間半程度の睡眠。少なくとも、6時間は寝たほうがいいですね」(三橋さん)
なんと! 3時間ほどのノンレム睡眠だけではダメだったのですね!! 当然といえば当然ですが……。とはいえ、多忙で7時間も睡眠時間をとれない人は、どうすればいいのでしょう? 3~4時間しか寝られない場合は?
「体温を下げ、睡眠を促すホルモンであるメラトニンは、午前2~4時に多く分泌されます。メラトニンには抗酸化作用もありますから、短時間睡眠だとしても、午前2時には深く眠っていたほうがいいでしょう。3~4時間しか睡眠時間がないのでしたら、午前0~1時に寝て、明け方4時頃に起きるのがオススメ。
しかし、抗ストレスホルモンであり、脂肪を燃焼するコルチゾールは、午前3時頃から分泌が増え始め、午前8時頃がピークに。また、レム睡眠は午前3~6時の間に増えます。総合的に考えると、徐波睡眠を午前3時までにとり、それ以降のレム睡眠もしっかりとれる、午前0~6時の間に寝ているのが、体にとってベストなのです」(三橋さん)
そのお話を伺ってから、忙しくても、なるべく午前0~6時の間は眠るようにしております。やはり、その時間帯に眠ると、熟睡感があり、疲れもかなりとれますね! このレポートも、良質な睡眠をとり、朝方から書き始めました。そのせいで、原稿アップは遅れましたが、質のいい睡眠の記事を書いている今回に限り、大目に見てもらおうと思っております(苦笑)。
取材・文/美容ジャーナリスト 藤田麻弥
【プロフィール】
雑誌やWebにて、美容と健康に関する記事を執筆。化粧品のマーケティングや開発のアドバイス、広告のコピーも手がける。エビデンスのある情報を伝えるため、日本抗加齢医学会や日本香粧品学会を始め、多くの学会やセミナーを聴講。自身もアンチエイジングに関するセミナーの企画・コーディネートを務める。著書に『すぐわかる! 今日からできる! 美肌スキンケア』(学研パブリッシング)がある。
【最近のハマりもの!】
ストレスが多いと、床についてもリラックスできなくて、寝つきが悪くなりがちですよね。そんなとき私は、お腹をヘコましたり緩めたりする動きをしています。この運動はドクターに伺ったのですが、お腹をヘコませると横隔膜が開くので、腹式呼吸をしているのと同じ状態になり、リラックスの副交感神経にスイッチ。お腹をペコポコ動かすだけで、張りつめていた交感神経が緩み、健やかな眠りへと誘われるのです。
よくある質問