慶応義塾大学医学部耳鼻嗚咽科専任講師
神崎 晶(かんざき しょう)
突然、片耳が聞こえなくなる突発性難聴。「携帯電話を耳に当ててはじめて聞こえないことに気づいた」という人も少なくありません。
ストレスや疲れが原因だと考え「しばらくしたら治るだろう」などと侮ることなかれ。実は、3人に1人は完治が難しい病気なのだといいます。
では、突発性難聴にはどんな治療法があるのでしょう。慶應義塾大学の神崎晶先生に話をうかがいました。
普段聞こえていた耳が聞こえなくなると、日常生活に大きな支障が出ます。難聴患者を多く診ている神崎先生も、突然の難聴に驚いて病院に来る方がほとんどだと言います。
「片耳が聞こえないとかなり違和感がありますので、そのまま放置する方はあまりいないでしょう。ただ『今日はどうしても外せない会議がある』といった事情で病院に来るのが遅くなってしまうケースはあります。
医師としては、なるべく早く、近所の耳鼻咽喉科で診察を受け聴力検査をすることをすすめます。
少なくとも14日以内に治療を開始することが重要だといわれています」(神崎先生)
突発性難聴は、3人に1人は自然に治るといわれています。ですので、何もせずに治ることもありますが、誰がその1人に該当するかはわからないので、しっかりと治療を受けることが大切です。
聴力検査ができる病院であれば、突発性難聴かどうか診察ができますので、まずは近い病院にかかるといいでしょう。
「治療には、ステロイドホルモン(ホルモン剤)と、血流をよくする薬(血流改善薬あるいは循環改善薬)の投与の2つの方法があります。
飲み薬か、症状によっては7~14日間通院して点滴をするケースもあります。 病院の施設によっては高気圧酸素療法を取り入れているところもありますが、都内に2~3か所しかなく、選択肢の一つとして考えておけばいいと思います。
突発性難聴患者のうち、3人に1人は自然に治るほか、3人に1人は治療で治るといわれています。
怖いのは、3人に1人の割合で、治療をしても治らないケースがあることです。 治らないというのはつまり、聴力が回復しないということ。回復しない患者さんに対して、残念ながら、100%治す治療法は確立されていません。
難聴と付き合いながら生きていくことを余儀なくされる方も少なからずいらっしゃり、突発性難聴は、実はとても重い病気なのです」(神崎先生)
原因不明の病気なため、「こうすれば突発性難聴にはならない」というはっきりした予防策もありません。 大切なのは、なってしまったあとに、いかに治療を早く始められるかです。
「とにかく、すぐに病院に来てほしいですね。仕事を優先して治療のタイミングを逃してしまう人がいますが、治療が遅れて回復まで時間がかかってしまったら、仕事へのダメージはさらに大きくなります。
総合病院や大学病院などに予約すると先の日程になってしまうのであれば、近所の耳鼻咽喉科にかかり薬を処方してもらったあとに紹介状を書いてもらうといいでしょう。 あるいは、待ち時間があったとしても予約なしで大きな病院に来てもいいと思います。治療を1日でも早く始められるようにしてほしいなと思います」(神崎先生)
現在は、聴力チェックができるスマートフォンアプリも出ています。「耳鳴りがする」「いつもより聞こえにくい気がする」など少しでも自覚症状があれば、アプリでチェックしてみるのもいいでしょう。
あるいは、友人と電話しながら、左右の耳で聞こえ方に違いがないかを確認してみるなど、自分のやり方でセルフチェックを行い、治療が遅れないようにすることが大切です。
この記事の監修
慶応義塾大学医学部耳鼻嗚咽科専任講師
医学博士/日本耳鼻咽喉科専門医
神崎 晶(かんざき しょう)
日本耳鼻咽喉科専門医、アレルギー学会専門医、補聴器適合判定医、補聴器相談医、騒音難聴認定医、めまい相談医。日本耳鼻咽喉科学会、日本耳科学会、日本聴覚医学会、アレルギー学会など多数の学会に所属。2013年、1st Global Otology Research Forum(GLORF)Award(第1回グローバル耳科研究フォーラム賞)、平成26年度日本医学会医学研究奨励賞、財団法人長寿科学振興財団 会長賞(平成19年度)
など受賞歴あり。
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