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脳卒中が潜む「危険ないびき」のサインを見抜こう!

脳卒中が潜む「危険ないびき」のサインを見抜こう!

井上 肇

聖マリアンナ医科大学 特任教授

井上 肇(いのうえ はじめ)

日本における死因の上位を占めるといわれている脳卒中。
その脳卒中といびきには、因果関係があるということをご存知ですか?

普段から非常に大きないびきをかいているという人は、脳卒中のような重篤な疾患を引き起こす可能性があるので十分に注意しましょう。

命にもかかわる「脳卒中」とは

命にもかかわる「脳卒中」とは

私たちの脳には非常にたくさんの血管が走っており、それらの血管が脳に必要な酸素や栄養を供給しています。この血管が破れて出血したり、詰まったりしてしまうことで起こる病気を「脳卒中」と呼びます。

脳卒中を大きく分けると脳の血管が詰まる「脳梗塞(のうこうそく)」と、脳の血管が破れて出血する「脳出血」に分類できます。脳梗塞・脳出血のいずれも、麻痺、言語障害、意識障害などの症状が現れます。そして最悪の場合は死につながる可能性もある、非常に恐ろしい病気なのです。

脳卒中の患者数は現在約150万人にものぼるといわれており、がんや心臓病と並んで日本における死因の上位を占めています。

参考
脳卒中とは? 脳卒中の症状と予防法

いびきの出る原因と種類

人には、喉に気道があります。気道が空気の通り道になり、呼吸ができます。いびきは、睡眠中にこの気道に舌が落ち込んだりして気道が塞がれ、呼吸の時に塞がれた部分からの空気の出入りの際に、周囲の組織が震えて振動する事で生じます。

いびきには、比較的安全な「単純いびき症」と、脳卒中に発展する危険のある「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」の2種類があります。

いびきの種類(1)単純いびき症

いびきをかいてもぐっすりと熟睡でき、寝起きもいい場合のいびきは、あまり問題のないいびきです。疲れていたとか、枕が普段よりも高かったなどの理由があります。

いびきの種類(2)睡眠時無呼吸症候群(SAS)

睡眠中、常時大きないびきをかき、呼吸ができずにしばらく止まり、しばらくした後にまたいびきが再開するようないびきは危険です。医学的には、睡眠中の呼吸が10秒間以上止まり、1時間あたり5回以上の無呼吸(または呼吸が弱くなる低呼吸)が発生している場合は睡眠時無呼吸症候群と診断されます。

こう言った窒息状態を繰り返すと、血中の酸素が不足し、心臓にも負担がかかります。

そのため、睡眠をとってもしっかりと体が休まらず、疲労を蓄積させ、少しずつ寿命を削っているようなものです。

いびきの出る原因と種類

いびきで脳卒中のリスクが増加

いびきで脳卒中のリスクが増加

いびきは単純に睡眠中に大きな音を出して周囲に迷惑をかけるだけでなく、重症化すると睡眠時無呼吸症候群を引き起こす危険性があります。

この睡眠時無呼吸症候群は、さまざまな疾患の発症リスクを高めるというデータもあり、特に脳卒中といった脳血管系そして心血管系疾患のリスクを大きく増加させることが知られています。

しかしいびきが脳卒中を誘発するというよりも、脳卒中が原因となっていびきが続発するというケースの方が多いようです。

こんないびきは危険サイン!

こんないびきは危険サイン!

いびきの発生と同時に以下のような現象がみられる場合は、脳卒中によっていびきが引き起こされている可能性があるため早急な措置が必要です。

・刺激を与えても目を覚まさない…脳卒中によって意識を失っているため。
・痙攣している
・チェインストークス呼吸が起こっている
・いつも以上に大きないびきをかいている…脳卒中による身体の運動機能の麻痺、筋弛緩に伴い舌根沈下が起こり、より大きないびきが生じるため。

チェインストークス呼吸とは、小さい呼吸から大きな呼吸に変化した後、10~20秒程度の呼吸停止が起こり、その後も同様に無呼吸→呼吸再開が反復するという周期をくり返す状態です。一周期は30秒~2分程度のことが多いそうです。

参考:チェーン・ストークス呼吸

脳卒中になりやすい人の特徴は?

脳卒中になりやすい人の特徴は?

いびきに限らず、高血圧症や糖尿病などの生活習慣病は脳卒中の発症リスクを高めます。仕事のストレスや過労も脳卒中の発症リスクを高めるため、忙しい働き盛りの人も注意が必要です。加齢に伴って血管の硬化(動脈硬化)が進行している高齢者は、血管が破けたり詰まったりしやすくなるため、脳卒中の発症リスクは若い年代以上に大変高くなります。

年代に限らず最も脳卒中の発症リスクが高いのは、不摂生な食生活を続けている生活習慣病患者です。塩分が多い食事や高カロリーな食事が中心となっている人、過度の飲酒をしている人は危険です。

脳卒中の発症リスクは30代から高まるといわれているので、30代以降は自分の血圧や体調を知り、塩分控えめの健康的な食生活を心がけましょう。リラックスできる趣味を持ったり、適度な運動をしたりするのもおすすめです。定期的に脳ドックを受診して、脳の健康状態を把握しても良いでしょう。

気になる症状や異変があればドクターに相談を

いびきには脳卒中のように命にかかわる疾患が潜んでいる可能性もあるため、「たかがいびき」とあなどらず、気になる症状や異変があればドクターに相談してみましょう。

 

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井上 肇

この記事の監修

聖マリアンナ医科大学 特任教授

日本臨床薬理学会 認定薬剤師/日本臨床薬理学会 指導薬剤師

井上 肇(いのうえ はじめ)

星薬科大学薬学部卒、同大学院薬学研究科修了。聖マリアンナ医科大学・形成外科学教室内幹細胞再生医学(アンファー寄附)講座 特任教授及び講座代表。幹細胞を用いた再生医療研究、毛髪再生研究、食育からの生活習慣病の予防医学的研究、アンチエイジング研究を展開している。

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