日本形成外科学会専門医/麻酔科標榜医
脇坂 長興(わきさか ながおき)
髪の毛のコンディションは第一印象を大きく左右するので、パサパサに痛んだ枝毛はイメージダウンにつながってしまいますよね。
やはり「枝毛は切らないと治らない」ものなのでしょうか?今回は枝毛のメカニズムや対処法をご紹介します!
髪の毛がダメージを受けて表面のキューティクルがはがれてしまうと、内部に蓄えていた水分が失われて髪の毛が乾燥します。それによって、髪の毛の繊維が裂けてしまうことで枝毛が発生します。
毛根からすでに分裂した髪の毛が生えてくることはありませんので、枝毛は外部からの物理的な刺激によって発生する後天的なものです。つまり外部刺激から髪の毛を守り、健康に保つことが枝毛予防のために最も重要なのです。
枝毛の大きな原因となるのは、カラーリングやパーマによって髪の毛に負担をかけてしまうことです。
また、シャンプーをした後にきちんと乾かさず、濡らしたままの状態で寝ているという人も要注意です。髪の毛が濡れているときはキューティクルが開きやすい状態にあるので、濡れたまま寝てしまうと、寝具との摩擦によってますますキューティクルが開いて髪が傷んでしまいます。
ストレスも枝毛の原因になります。ストレスによって血管が収縮して血行不良になると、髪の毛にまで十分な栄養素が行き渡りません。その結果、健やかな髪が育まれず枝毛になり易い髪になることがあります。
髪の毛はタンパク質でできているので、良質なたんぱく質を摂取して髪の毛を健康に維持することが枝毛予防につながります。
普段の食事では、肉類や大豆類を積極的に摂取しましょう。たんぱく質の合成に関わる亜鉛や、吸収したたんぱく質が髪の毛になるまでの工程で貢献してくれるビタミンやその他のミネラルも必要です。つまり、いろいろな栄養素をまんべんなく摂取することが大切なのです。
髪の毛は皮膚の延長ですから、普段から肌が荒れている人は、髪の毛にも十分な栄養が行き届かず枝毛が発生しやすい状態にある可能性があります。野菜やフルーツなど、肌に良いと言われる食品を摂取することも枝毛予防につながるでしょう。
枝毛が発生するのは頭髪に限ってのことではありません。
例えば眉毛に枝毛ができる可能性もあります。ただし眉毛のように短い毛は毛の成長サイクル(=生え変わるまでの期間)が短いのでダメージを蓄積しにくく、枝毛などのトラブルが発生しにくいと言われています。そういう意味では、同じ頭髪でもバックやサイドの長い髪の毛よりも、短い前髪の方が枝毛が発生しにくいでしょう。
陰毛に枝毛ができることもあります。陰毛は衣服等と常にこすれているので、ダメージを受けやすい個所でもあります。ただし陰毛はもともと太くて丈夫なので、髪の毛に比べると枝毛はできにくいでしょう。
髪の毛の長い女性に限らず、子どもや男性にも枝毛が発生する可能性はあります。
しかし子どもは大人よりも髪の毛に蓄積されたダメージが少ないため、枝毛になる確率は低いでしょう。
男性も髪の毛が短いので枝毛になる可能性は女性ほど高くありませんが、カラーリングやパーマによって枝毛のリスクが高まるのは女性と同じです。
髪の毛をごしごしこすらないようにしましょう。 髪の毛をこすって刺激を与えると、キューティクルの損傷が増してしまいます。
ワックスなどの整髪料を使用するのは問題ありませんが、髪の毛につけるときに強くこすったり、整髪料を落とすためにシャンプーをするときに何度もこすったりすることが枝毛につながる可能性があります。
肌と同じく髪の毛も紫外線を浴びることでダメージを受けています。 紫外線を浴びたときには髪の毛もきちんとトリートメントしましょう。紫外線を浴びないように、帽子などで髪の毛をガードして外出することも有効です。
ドライヤーを使用する場合は熱をあてすぎないよう、髪の毛から少し離して乾かすようにしましょう。できれば熱を加えず、風量で乾かすくらいがベストです。
“2週間集中リペア”などとうたっている商品を使用して、集中的にトリートメントすることも有効です。髪の毛の内部に栄養分を吸収させると同時に、外側からもコーティングをして髪の毛を健康な状態に導きます。
「シャンプーする前にブラシで髪をとかして、髪の毛に付着した汚れやフケなどを取り除いておくのが良い」という情報を目にしたことはありませんか?
しかし、これは枝毛にとってはNG行為かもしれません。髪の毛が渇いた状態で静電気が発生するようなブラシで髪をこするのは、枝毛の原因になりかねません。もちろん、髪の毛が濡れているときでもNGです。
しかし静電気が発生するブラシではなく、つげの櫛を使用することで枝毛がさらさらになることがあります。つげの櫛で毎日髪をとかすと、毛羽立っていたキューティクルがはがれるので、枝毛が改善されるわけではありませんが、見た目や手触りが良くなります。つげの櫛は日本古来の木製の櫛で、他の櫛に比べて静電気がおきにくいのが特徴です。
トリートメントやつげの櫛を使うことで一時的に見た目や手触りを良くすることはできますが、物理的に枝毛を改善しているわけではありません。本当に枝毛を改善するには、その部分を切るしか方法はないかもしれません。ですから常に枝毛ができないように、髪の毛を丁寧に扱うことが大切です。
どうしても枝毛を改善したいという場合は、専門機関で相談するという選択肢もあります。髪の毛は皮膚の延長なので、「枝毛は皮膚科で治す」と考える人もいるかもしれません。しかし皮膚科は皮膚病を見る診療科で、枝毛は皮膚病とは異なります。
枝毛に悩んだら、髪だけではなく頭皮の異常までを診てくれる頭髪専門病院を受診するのが良いでしょう。頭髪専門病院は髪の維持としての育毛だけでなく、発毛に必要な頭皮環境を考え発毛治療を通して豊かな美しい髪をつくることを重視しているので、「枝毛を改善して外見をきれいにしたい」というニーズにもマッチするかもしれません。
枝毛がなくなって髪の毛がきれいになると、気持ちも明るくなりますよね。一度できた枝毛は改善が難しいので、普段からしっかり枝毛予防を心がけましょう!
この記事の監修
日本形成外科学会専門医/麻酔科標榜医
日本形成外科学会専門医/麻酔科標榜医/日本美容医療協会会員/特定非営利活動法人F.M.L.理事/医療法人 翠奏会理事長/聖マリアンナ医科大学幹細胞再生医学寄附講座講師
脇坂 長興(わきさか ながおき)
1962年生まれ。聖マリアンナ医科大学医学部卒業。
同大学病院の形成外科で skin rejuvenationを研究。
方法論よりも患者様が一番良くなる治療を提供することが 形成外科医の使命であると考えている。
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