旧約聖書には、こんな記述があります。「喜びのある心は病を癒すが、気分が沈むと骨まで枯れる」と。近年、笑いと健康に関する医学的研究が飛躍的に進歩していますが、大昔から、笑いは健康にいいということがわかっていたのですね。
では現在、笑いと健康の関連性はどこまで解明されているのでしょう? 大阪大学大学院医学系研究科 社会環境医学講座公衆衛生学 准教授 大平哲也(おおひら てつや)先生は、笑いと健康についてご研究されている方。最新エビデンスを教えていただくため、私が大平先生の、あるセミナーの企画・コーディネートをしましたので、その内容をお伝えいたします。
「古事記に天照大神(あまてらすおおみかみ)の話がありますよね。天の岩戸に天照大神が隠れて世界が暗闇になったとき、天宇受売命(あめのうずめのみこと)が奇妙な踊りを披露したことで、八百万(やおよろず)の神々は大笑い! その様子を窺った天照大神を外に引き出し、世界は光を取り戻したといいます。これは、笑いが引きこもりを治した、日本最古の報告だといえますね」(大平先生)
さすが笑いをご研究なさっているドクター。聴講した方々は大笑いです!
「年齢と共に笑いは減る傾向に。小学生くらいまでは1日平均300回笑います。20歳では1日平均20回。70代では1日平均2回。50歳以降の男性の22%は、週に1回も笑わないという結果に。
笑いは高度な脳機能を使います。一瞬で理解して、一瞬で笑う。だから、脳機能が衰えると、笑えないんじゃないかな? と考えたわけです。そこで、65歳以上の方を対象に、笑いの頻度と認知機能の関係を調査しました。すると、ほぼ毎日笑う人に比べて、笑わない人は認知機能が低下している場合が多かったのです」(大平先生)
しかし、認知症だから笑わないのか? 笑わない生活をしているから認知症になりやいのか? そう思った大平先生は、認知機能が正常な人だけ集めて調査した結果、笑わない人から認知症になりやすいというデータが出たといいます。
「ただし、1年後の認知機能との関係を調べたわけなので、笑わないのが原因で認知症になるわけではありません。これを調べるには十数年かかってしまう。ここでいえるのは、認知機能が下がってくる前に、笑いが先に減っていくということ。
もっと簡単にいうと、最近、うちのおじいちゃん笑ってないわ……と思ったら、1年後、認知症になる可能性が高まると考えられます。笑いは、認知症の予測にもなるわけです」(大平先生)
クリアな思考回路を保つためにも、お笑い番組や落語などを観て、意識して笑おうとすることが大切だといいます。
また、本気で笑わず、つくり笑いでも効果あり。心が緊張していると眉間がこわばります。すると、体全体も緊張し、血流が滞りがちに。つくり笑い、つくり笑顔でも眉間のこわばりは和らぐので、体もリラックス。すると、心もリラックスするという良循環になるのです。
さらに、大平先生からこんなご提案も。
「独身の方は、結婚する前に必ずやってほしいことがあります。それは、パートナーと一緒に喜劇映画を観ること。哀しい映画は、大抵の人が同じ場面で泣いたりします。しかし、笑いのツボは人それぞれ。喜劇映画を観て、自分が大笑いしているとき、パートナーも一緒に笑っていたら、結婚生活もうまくいく可能性が高いのです(笑)」(大平先生)
笑いが医学的にもエイジングケアにつながっているというのは驚きでした。さらに、パートナーとの相性も予測(?)できるとは! よく笑うことで心と体の健康を保ち、師走の忙しさを乗り切ってくださいね。
取材・文/美容ジャーナリスト 藤田麻弥
【プロフィール】
女性誌や会員誌、Webにて、美容と健康に関する記事を執筆。化粧品のマーケティングや開発のアドバイス、広告のコピーも手がける。エビデンスのある情報を伝えるため、日本抗加齢医学会や日本香粧品学会を始め、多くの学会やセミナーを聴講。自身もアンチエイジングに関するセミナーの企画・コーディネートを務める。著書に『すぐわかる! 今日からできる! 美肌スキンケア』(学研パブリッシング)がある。
【最近のハマりもの!】
からだエイジングの『エイジングサインをチェック』でも執筆をしておりますので、多くのドクターに取材させていただいております。そこで、どのドクターもおっしゃるのが、ビタミンB群を意識して摂るように、と。代謝に必要な栄養素だからですね。ナッツのピスタチオはB2とB6が豊富なので、おやつ代わりにポリポリ食べています。
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