渡嘉敷 亮二(とかしき りょうじ)
久しぶりに電話した相手に「誰だかわからなかった!」といわれたり、昔のホームビデオを見て、自分の容姿だけでなく“声”の違いに愕然としたことはありませんか? 声は加齢とともに枯れて弱々しくなり、女性は低く、男性は高くなる傾向があるようです。
声帯は、喉頭の内側中央にあり、左右一対のひだ状になった筋肉。息を吸うときには左右のひだが開き、声を出すときには閉じます。閉じた声帯のすき間を、肺からの空気が通過すことにより振動して音(声)が出る仕組み。(下の中央図)
声帯は筋肉でできているので、加齢や使わないことにより衰えます。すると、声帯のひだが閉じにくくなるので、振動しづらくてかすれ声に。
また、声帯の表面の粘膜の下にはヒアルロン酸があり、弾力性を保っています。また声帯表面の粘膜は唾液と同じ粘液で覆われており声帯が振動する際の潤滑油の役目をしています。加齢によりヒアルロン酸や粘液も減少するので、艶のないしわがれた声になりがちです。(下の右図)
聞きとりにくい、乾いたダミ声になってしまうかもしれません。また、声を出す際に声帯のひだがきちんと閉じないので、息が漏れ、しゃべるたびに疲れやすくなります。声帯の筋力低下が深刻になると、常に息が漏れるため、声が出にくくなってしまう場合も。
意外ですが、お酒は声に影響を与えないのです。お酒は声帯を通らず、食道に入っていくからです。“酒焼けした声”というのは存在しないというわけ。しかし、タバコは気道を通り、肺に入ります。声帯が炎症を起こし、ブヨブヨに腫れてしまうので、声を枯らす原因に。
自分でできる声のエイジングケアは歌。歌うことは、声帯の筋トレになります。できれば毎日、せめて2日に1度は4~5曲ほど、伸びやかな歌を歌いましょう。ドクターが推薦するのは、美空ひばりさんや尾崎紀世彦さんの曲。いわゆる、歌のうまい歌手の曲を選べばいいでしょう。
歌うことは、声のジョギングといえるほど、声帯の筋トレに有効なのです。しかし、シャウトするような激しい歌は、ダッシュを繰り返すようなものなので、声帯を傷めがちだから要注意。本の音読も、ウォーキングに匹敵するのでオススメです。
また、声帯表面の渇きには、こまめに水分を補給し、加湿器で空気をうるおわせてください。携帯用の吸入器はイチオシアイテム。寝起き、食間、寝る前の1日4回ほど、ミストで声帯をダイレクトにうるおわすと、艶のある声を保てます。携帯用吸入器は、家電量販店にて4千円前後で購入可能。クリニックの治療にも、声帯の粘膜に直接ヒアルロン酸を注射する方法が。即効性があり、その効果は3ヵ月~半年ほど続きます。
外側からのアプローチとして、のどをマッサージしてみましょう。声帯は伸縮することで、伸びやかな声をつくりますが喉頭の外側の筋肉が凝り固まると声帯がのびやかに伸縮しにくくなります。のど仏を左右にコリコリ動かしたり、そのまわりをやさしくマッサージしてください(上の左図)。マッサージしているときに、軽く痛みを感じたら、声帯が凝っている状態かも。そんなときは、痛みを感じないチカラ加減で、ほぐすように毎日マッサージしてあげてください。お風呂の湯船に浸かりながらマッサージすると、のどの周りの筋肉がほぐれやすいので、より効果的です。
声のトレーニングも筋トレと同じで、何歳になっても遅すぎるということはありません。トレーニングすることで、若い頃よりいい声になりえるそうです!
この記事の監修
渡嘉敷 亮二(とかしき りょうじ)
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