聖マリアンナ医科大学 特任教授
井上 肇(いのうえ はじめ)
久しぶりにカラオケに行き、十八番のあの歌を歌ったら、高い声が全然でなくなっていた。寝ている時に電話がかかってきて、急に出ようとしたらうまく声がでない。そんな症状があったら、声を出すための筋肉、「声帯」 が衰え始めているサインかもしれません。
わたしたちは、「声帯」という 喉の奥にある筋肉を振動させることで声を出しています。声帯は空気の通り道になっていて、空気が通る際に声帯を震せることで音(声)がでる仕組みです。しかし、歳をとると声帯は伸びにくくなり、萎縮していきます。すると2枚の声帯の間に隙間ができ、若い頃のようなハリのある若々しい声が出せなくなります。おじいさんのような「しわがれ声」の原因は、声帯の老化だったのです。
重い荷物を持ったり、かたいビンのふたを力いっぱい開けようとする時をイメージしてみてください。無意識に、息をとめているのが分かりませんか?この時、喉の奥の声帯は完全に閉じた状態になります。加齢により声帯に隙間ができると、そこから空気がもれ出て、力が入りづらくなることがあります。また、声帯が閉じにくくなることで気管にものが入りやすくなり、頻繁にむせるようになることもあります。放っておくと、寝ている間に自分の唾液で咽せて死ぬ様な思いをする事も!?
寝起きの口腔内、咽喉等は乾燥している場合があり、うまく声が出せません。水分補給をしたりうがいや歯磨きをすることで、口や喉をうるおしましょう。寝起きの口腔内は雑菌がいっぱいです。歯磨きなどのオーラルケアは、口がさっぱりする爽快さばかりか、声も出しやすくなる理由の一つです。
なお就寝時に空気が乾燥していたり、口呼吸をしていると喉が乾燥し、風邪や喉の炎症を引き起こす原因になります。そうなると寝起きどころか1日中声が出にくくなります。就寝時に喉に負担がかからないよう、適切な環境を保ちましょう。
寝起きは身体がまだ完全には目覚めておらず、全てにおいて固まっている状態です。首の周りの筋肉を動かしたり、首を回したり伸ばすなどのストレッチをして、のど周辺の筋肉をほぐしましょう。口を開け閉めしたり、舌を動かす、リップロールといった発声の準備運動も効果があります。
寝起きの悪い人は、えてして機嫌が悪く声も小さなものです。そういう人に限って、生活習慣の乱れから寝不足だったり、質の高い睡眠が得られてません。普段から生活習慣を整え、質の高い睡眠をしっかりと取りましょう。スッキリとした起床は、声も爽やかに通るようになります。
最近では、声や声帯の異常を専門に扱う「音声外来」や「音声外科」といった外来を設置する耳鼻咽喉科が増えてきています。あまりに気になるようであれば、一度受診してみてください。
また、アレルギーでも声がかれる事があります。花粉症の方やアレルギー性鼻炎などを併発している方は、声がかれたり、歩くと息切れがする様な事があれば、生体に炎症が起きている可能性があるので要注意です。しっかり検査しておきましょう。
この記事の監修
聖マリアンナ医科大学 特任教授
日本臨床薬理学会 認定薬剤師/日本臨床薬理学会 指導薬剤師
井上 肇(いのうえ はじめ)
星薬科大学薬学部卒、同大学院薬学研究科修了。聖マリアンナ医科大学・形成外科学教室内幹細胞再生医学(アンファー寄附)講座 特任教授及び講座代表。幹細胞を用いた再生医療研究、毛髪再生研究、食育からの生活習慣病の予防医学的研究、アンチエイジング研究を展開している。
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