メディカルチェックスタジオ東京銀座クリニック 院長
知久 正明(ちく・まさあき)
年齢を重ねるとともに肌がたるんだり筋力が低下したりするように、血管も加齢とともに老化します。
特に現代は、食生活の欧米化などによって血管の老化スピードが速まり、実年齢よりもはるかに高い血管年齢の人が増加しているといわれています。
血管年齢は健康面にはもちろん見た目にも大きく影響しますので、血管の老化を防止することは非常に重要です。
血管はその名の通り血液が通る管で、心臓から出た血液は全身に張り巡らされています。
血管は動脈、静脈、毛細血管に分類されています。
動脈は身体に必要な酸素や栄養素を運ぶ役割を果たします。
一方静脈は、各組織で機能を果した血液を心臓に戻す役割を果たします。毛細血管は組織に酸素と栄養素を与えている細かい血管です。
そもそも老化とは、細胞の持つ生命維持システムが機能しづらくなってしまうことです。
血管の老化は血管の弾力性が下がったり、コレステロールが血管内に溜まって目詰まりしたりすることで、血管の「血液を運ぶ」という機能が低下する現象をさします。血管の老化によって、心筋梗塞や脳梗塞など命にかかわる疾患を誘発する動脈硬化のリスクも高まるため十分注意が必要です。
血管が若いと全身に栄養素が十分に行き渡るため、全身の細胞が若返り、新陳代謝も活発になります。それによって、見た目も若々しくなるのです。
特に血管年齢は肌のコンディションに大きく影響するため、年齢を重ねても肌がきれいな人の中には血管年齢が若い人が多いようです。
血管の老化は20歳から始まるともいわれているため、若い人でも油断はできません。 血管が老化する速度は実際の年齢だけでなく、危険因子の有無にも関係します。 血管を老化させる危険因子には以下のようなものがあげられます。
●高血圧 …血管内の圧力が高くなることで血管に負担がかかります。
●脂質異常症 …血液中のコレステロールが増加することで血管に蓄積しダメージを与えます。
●糖尿病 …血管に強い糖化ストレスを与え、血管の老化を加速させます。
●喫煙 …煙草の煙に含まれるニコチンや有害物質が血管に酸化ストレスを与えます。
●歯周病 …歯周病原因菌の炎症によって血管内にプラークができやすくなり血管に負担がかかります。
その他にもメタボリック症候群や睡眠時無呼吸症候群などの疾患や、睡眠不足、運動不足、精神的ストレスなどの生活習慣も血管の老化を加速させます。
血管年齢を若返らせるには、日ごろの食生活に気を配ることが大切です。 バランスの良い食事を規則正しく摂ることはもちろんですが、以下のような食品を積極的に摂取することも血管老化防止に有効です。
●お茶 …お茶に含まれるカテキンには抗酸化作用があるため、酸化ストレスによって血管がダメージを受けるのを予防してくれます。 カテキンはポリフェノールの一種ですが、他にもポリフェノールが含まれる食品として赤ワイン、蕎麦、チョコレートなどがあげられます。
●乳酸菌を含む発酵食品 …乳酸菌が発酵して作り出されるラクトトリペプチドに、血管年齢を若返えらせる効果があることが分かっています。 ヨーグルトやチーズなどの乳製品、納豆、ぬか漬け、キムチ、みそ、醤油などの発酵食品もおすすめです。 同じ乳酸菌を摂取し続けると効果が低下する可能性があるため、適度に種類の異なるヨーグルトを食べた方が良いでしょう。納豆に含まれる酵素・ナットウキナーゼは、血管老化防止のためには加熱せずに摂取するのが良いといわれています。
●玉ねぎ 玉ねぎに含まれるポリフェノールの一種・ケルセチンには強い抗酸化力があります。 酸化ストレスによって血管がダメージを受けるのを予防してくれるため、血液をサラサラにする食材としてお馴染みです。
その他にもEPAやDHAを多く含む青魚類、ビタミンB1を多く含む玄米や米ぬか、豚肉などもおすすめです。 血管を若く保つためのサプリメントも販売されていますが、サプリメントはあくまでも補うためのものなので、基本的には食事によってしっかり必要な栄養素を補えるように心がけましょう。
血管の老化を防止するには、日々の適度な運動が必須です。 ウォーキングなどの有酸素運動によって、血圧を健常な状態に近づけることができるといわれています。
また、ひと口に運動といっても、自律神経のバランスを良くする運動をセレクトするのがおすすめです。
自律神経の中でも副交感神経を活性化させることで、血管が広がって血管のコンディションを良くすることができます。副交感神経はリラックスして気持ちが落ち着いているときに作用します。
ジムなどでトレーニングするだけでなく、時間があるときには自然あふれる公園でゆったりジョギングするなど、リラックスできる運動をセレクトすると良いでしょう。
また、慢性的な睡眠不足によって体に疲労が蓄積すると、高血圧や動脈硬化にも繋がりますので、質の良い睡眠をしっかりとるようにしましょう。
断食によって余っているエネルギーをなくせば、血管脂肪を減らすことができます。
余分な血管脂肪がある人の場合は、食事を控えることも血管の若返りに効果があるといえるでしょう。
しかし、朝食を抜くと脳に必要な糖分が足りなくなってかえってイライラしてしまったり、自律神経の乱れから血糖や脂質が上昇したりしてしまうため、食事を控えている際にも朝食は適度に食べるようにしましょう。
血管年齢は日々の不摂生や不規則な生活習慣などによって、着々と老化していきます。 血管が老化すると見た目にも健康面にもさまざまなデメリットが生じるため、運動、食事、睡眠、ストレスなど、日ごろから血管を若く保つことができる習慣を心がけてください。
この記事の監修
メディカルチェックスタジオ東京銀座クリニック 院長
医学博士
知久 正明(ちく・まさあき)
東京都出身、1994年日本大学医学部卒業、2000年日本大学医学部大学院修了
国立甲府病院、国立循環器病センター、日本大学医学部循環器内科、敬愛病院付属クリニック院長を経て、
2017年12月からMCS東京銀座クリニックを開業
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