医療法人社団ウェルエイジング・医療法人翠奏会・医療法人リアルエイジ静哉会 総院長/東京女子医科大学 名誉教授/東京薬科大学 客員教授
川島 眞(かわしま まこと)
頬にポツポツをあらわれるシミや目尻やおでこに刻まれたシワ。これらの原因は加齢による老化現象だけではないんです。生き生きとした健康的な肌を維持するためには、実は、紫外線予防が一番大切なのです」と語るのは、医療法人社団ウェルエイジング・医療法人翠奏会・医療法人リアルエイジ静哉会 総院長 川島 眞先生。紫外線がもたらす肌の影響「光老化」の原因と対処法について詳しく教えていただきました。
子どもの頃はずっと外にいましたね。1日中、海や山で遊んでいましたし、もう少し大きくなってからは野球ばかりしていました(笑)。あの頃、「紫外線対策」なんて言葉もありませんでしたし、ケアしている人なんてまわりにいませんでした。ですが今、私が光老化の研究をするようになって、子どもの頃の紫外線対策がいかに大切か、ということを痛感しています。なぜなら、子どもの頃から紫外線対策をしっかりおこなっていれば、大人になってからの皮ふの病気になるリスクも避けられるからです。
紫外線と皮ふがんの関係性は高く、無防備に紫外線を浴び続けることで、からだに害を及ぼします。今の研究では、皮ふがんの最大の原因は紫外線であるといわれており、日焼けを繰り返すことで皮ふの細胞の遺伝子が異常をきたし、がん細胞へと発展します。
また、皮ふがんといわずとも、美容という面でも多大な影響をもたらすことは間違いありません。先ほども話したとおり、シミやシワ、たるみなどのエイジングサインは、加齢による老化現象だけでなく、紫外線による要因もあるということはあまり知られていません。ですが、顔のシワ、シミの約80%は、紫外線が原因であるということが研究でわかっています。光老化、皮ふがんのリスクを減らすためにも、紫外線対策が欠かせないことは、もうおわかりですね。
では、紫外線から肌を守るためにはどのような対処が必要なのでしょうか? 「紫外線は容赦なく降り注いているんだから、防ぎようがないのでは?」「夏でも長袖を着なきゃいけないの?」など、何をどうケアすればいいのかわからない、という疑問や質問に答えていきましょう。
A:紫外線は色もなく、見えないため、知らず知らずのうちに浴びてしまっています。レジャーなど屋外はもちろん、オフィスや家の中でも紫外線は容赦なく降り注いできますので、「日焼けするな」ということが難しいのかもしれません。だからこそ、紫外線から肌を守る方法を習慣にしてほしいのです。屋外スポーツやレジャーで日に当たるとき、室内や車の中も要注意です。ガラスを通して紫外線A波は入ってくるので、必要な予防手段を講じます。日焼けサロンなど、“あえて”紫外線に当たるようなことも避けることが肝要です。
A:帽子やサングラス(白内障は眼の光老化です)、長袖・長ズボンなどで物理的に紫外線を遮るのが一番簡単です。顔や手のように衣服で覆えないところには、日焼け止め(サンスクリーン剤)を使うと良いでしょう。日焼け止めのパッケージに、サンスクリーン剤の効果を表す値として、SPFとPAの2種類があります。
紫外線のなかでUVBに対する防御能力を表しています。例えば、SPF30とは塗らない場合は20分で赤く日焼けするのを30倍に延ばすことができる、つまり 20分☓30倍=600分まで大丈夫ということになります。
紫外線のUVAによる害を防ぐ能力を表しています。その防御能力により、1から4までグレードが+で示されています。ただし、これらの防御能力はかなり厚塗りをした状態での測定値ですので、通常の塗り方なら、数値の半分くらいの能力と思ってください。
A:肌の光老化は、実際の効果としてSPF15、PA1+のサンスクリーン剤を日常的に継続して使用することにより防ぐことができますので、普段はSPF30、PA++くらいの製品を使用するのがおすすめ。日常的に継続して使用すれば、光老化予防効果があるとされています。美肌のためには、一年中、光対策に心がけることを忘れないでください。
A:はい、あります。最近の日焼け止めは、クリームタイプのほかに、乳液やジェルタイプなどテクスチャーの軽いものも多く登場しています。ですが、日焼け止め本来の機能を考えると、
ことが大前提。皮ふの表面を覆い、紫外線をカットすることを考えたら、クリームがおすすめです。反対に、気をつけたいのが、スプレータイプ。お手軽・簡単だという理由で使用している方が多いと思いますが、スプレーでサーッと吹き付けるだけでは機能を果たしているとは到底いえません。事実、「スプレータイプを使用したのに焼けてしまった」という方も多いのではないでしょうか? 外出前にクリームタイプの日焼け止めをしっかり塗り、外出先で塗り直し用にスプレータイプを併用する方法をおすすめします。
ここ最近、注目されているのは、光老化は皮ふだけでなく、目にも起こるということです。その代表的な病気が白内障です。白内障は水晶体というレンズのタンパク質が変性して白い濁りを生じ視力の低下をもたらす病気ですが、この原因は加齢、薬物、外的衝撃、温熱、放射線などのほかに紫外線の影響も多く占めていて、無視できないのが現状です。今や「目の光老化国民病」といっても過言ではありません。
目の光老化の予防法は日傘、サングラスの活用が有効です。日本人は白人に比べ網膜の色素が多く、まぶしさを感じにくいといわれていますが、屋外での活動時には確実に角膜や水晶体は傷ついています。日傘は紫外線を通さない白色よりも黒色を。サングラスはファッションとしてではなく、紫外線遮断効果が確認されているサングラス、または、サンスクリーン効果の付与されたコンタクトレンズがよろしいかと思います。
(文・長谷川真弓)
この記事の監修
医療法人社団ウェルエイジング・医療法人翠奏会・医療法人リアルエイジ静哉会 総院長/東京女子医科大学 名誉教授/東京薬科大学 客員教授
東京女子医科大学名誉教授(前・皮膚科主任教授)/日本美容皮膚科学会理事/日本香粧品学会理事長
川島 眞(かわしま まこと)
東京大学医学部卒業。パリ市パスツール研究所に留学。東京大学医学部皮膚科講師などを経て東京女子医科大学 皮膚科学教室 教授・講座主任。アトピー性皮膚炎をはじめ、美容、皮膚ウイルス感染症、接触皮膚炎などを主に研究。2018年4月より医療法人社団ウェルエイジング、医療法人翠奏会、医療法人リアルエイジ静哉会の総院長に就任。
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