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歯を失う可能性も!?35歳以降は特に注意したい、歯周病の脅威!

歯を失う可能性も!?35歳以降は特に注意したい、歯周病の脅威!

中川 種昭

慶應義塾大学医学部教授(歯科・口腔外科学教室)

中川 種昭(なかがわ たねあき)

CM等でよく耳にする「歯周病」というキーワード。病名自体は知っていても、具体的な症状や原因を認知していない人も多いのでは?
35歳以上から発症リスクが高まり、最悪、歯を失ってしまうこともある歯周病。発症する可能性は誰にでもあるので、予防策や治療法を知っておきましょう!

蓄積された菌により、歯茎が炎症を起こした状態

ブラッシング不足等によって歯と歯茎の隙間に菌が蓄積されることで、歯茎が炎症を起こした状態が歯周病です。
歯茎が腫れると「ポケット」と呼ばれる隙間が生じ、そこにさらに菌が溜まって炎症が悪化すると、歯茎から出血したり膿が出たりするようになります。

自覚できる歯周病の具体的な症状は、
・歯茎から血や膿が出る
・口臭がある
・口内がネバネバする
などがあげられます。

歯茎のすぐ下には骨があります。増加した菌によって骨が溶けてしまうと、歯が移動して歯並びが悪くなったり、歯がぐらついたりすることもあります。
最終的には歯が抜け落ちて、大切な歯を失ってしまう可能性もあるという厄介な病気なのです。

歯周病の最大の要因は「喫煙」!

歯周病の最大の要因は「喫煙」!

歯周病の原因となる菌を繁殖させる、最大の要因ともいわれているのが喫煙です。

私たちの歯と歯茎の隙間からは白血球が染み出しており、この白血球が菌への感染を防いでくれる役割を果たしています。
しかし喫煙によって白血球の力が弱まると、歯周病の原因菌へ非常に感染しやすい状態になってしまうのです。
1日20本以上の煙草を10年以上継続して喫煙している人は、歯周病の発症リスクが非喫煙者の約5倍になるといわれているほど。
さらに喫煙によって発生する有害物質が、歯茎に直接的なダメージまで与えてしまいます。

また、喫煙によって、がんの発生リスクが高まる可能性もあります。
非喫煙者と比較したがんの発生率は、舌にできるがんは3倍、喉のがんは約30倍にもなるといわれています。

35歳以上になると発症リスクが急増

虫歯で歯を失う率は各年代でほとんど変化がないのに対して、歯周病の発症率は年齢を重ねるごとに増加します。
特に35歳以降になると急激に高まり、40歳以上になると、歯周病によって歯を失う可能性も大きく上昇するというデータがあります。

これは加齢に伴う免疫力の低下が原因と考えられるので、歯周病は加齢疾患ともいわれています。
口内に菌が存在しても、免疫力が高ければその菌を撃退することができるわけです。
歯周病の発症を避けるためには、免疫力が非常に重要となります。

糖尿病の人は歯周病になりやすい?

糖尿病の人は歯周病になりやすい?

喫煙と並んで、歯周病の大きな要因となるのが生活習慣病の一種である糖尿病です。
糖尿病の人は血糖値の増加により菌に感染しやすい状態であることや、血管がもろくなっていることなどが歯周病が発症しやすい理由だと考えられています。
体が炎症を起こしやすい状態にもなっているので、少しの菌でも過敏に反応してしまうのです。

 

予防策は適切なブラッシングと定期検診

予防策は適切なブラッシングと定期検診

歯周病の予防策は、適切なブラッシングと定期的な歯科検診です。

定期的に歯科医院で検診を受けて、口内のコンディションをチェックする習慣を身につけましょう。
自分では磨ききれない箇所もあるので、定期的にクリーニングを受けるのもおすすめです。

ブラッシングの際には歯と歯茎の境目を意識して、歯ブラシを歯に直角にあてながら、磨き残しがないように順番を決めてブラッシングしましょう。
歯ブラシ、フロス、洗口剤の3つのステップで口内を清潔に保つのが、最も効果的な予防法です。

歯ブラシはいろいろな箇所へきちんと毛先が届くように、少し小さめの物をセレクトするのがベター。
自分の下の前歯4本分くらいの長さの歯ブラシを選ぶと良いでしょう。
電動歯ブラシもおすすめです。歯科医院で自分に合ったブラッシング指導を受ければ、さらに安心です。

女性の方が歯周病になりやすいって本当?

女性の方が皮膚がやわらかいのと同様に、粘膜や歯茎も薄くデリケートでやわらかいことが多いのです。
歯茎が薄ければその分抵抗力が弱くなるため、同じ量の菌が歯茎に蓄積しても、女性の方が炎症を起こしやすいといわれています。

しかし女性に限らず、男性でもデリケートな歯茎の人はいるでしょう。
自分で歯茎のタイプを判別することは難しいので、歯科医院で検査を受けて自分の歯茎を分析してもらうのが良いかもしれません。

大人の菌が食べ物の口移しなどで感染し、子どもが歯周病になる可能性もありますが、思春期以前は感染しても菌が定着しにくいというデータがあります。
歯周病菌が定着しやすくなる思春期以降(18歳以降)からは、十分に注意しましょう。

歯周病になったら医療機関で適切な治療を

歯周病になったら医療機関で適切な治療を

歯周病になってしまったら、ポケットの奥深くまで侵入した菌をセルフブラッシングで取り除くことは難しいので、早めに医療機関を受診して治療を受けましょう。

歯周病の治療は悪い個所をきちんと調べて、治療個所を明確にすることが非常に大切です。
そのために、プローブという機器を歯と歯茎の隙間に差し込みながら、ポケットの深さをチェックします。

次にスケーターという機器を使って歯茎の中を掃除します。
場合によっては部分麻酔を使った外科手術によって、歯茎を切開して汚れを除去することもあります。

メンテナンスで再発を防止することが大切

歯茎の中をどんなにきれいにしても、毎日のブラッシングが十分でないとすぐに汚れが蓄積してしまいます。
医師によるブラッシング指導を受けて、適切なブラッシング方法を身につけて実践しましょう。

歯周病は再発しやすいので、医師の判断に従って定期的にメンテナンスに通う必要があります。
治療自体は三ヶ月程度で終了しますが、検査結果が悪ければ治療は長引きますので、治療期間は数ヶ月~数年とケースバイケースです。
歯茎再生手術などの特殊な治療を行う場合は自費診療になりますが、歯茎だけの治療は保険診療内で済むことが多いようです。
歯周病治療が保険診療かどうかは医療機関によって異なるので、事前に確認しておくのが良いかもしれません。

大切な歯を守るためにも歯周病はしっかりと予防し、万が一発症したらきちんと治療を受けるのがベストです、まずは予防のために、日々の丁寧なブラッシングを心がけましょう!

中川 種昭

この記事の監修

慶應義塾大学医学部教授(歯科・口腔外科学教室)

日本歯周病学会 理事/日本口腔科学会 評議員/日本抗加齢医学会 評議員

中川 種昭(なかがわ たねあき)

1979年 慶應義塾高等学校卒業 
1985年 東京歯科大学卒業
1989年 東京歯科大学大学院修了
1990年 東京歯科大学 助手(歯周病学講座)
1996年 東京歯科大学 講師(歯周病学講座)
1997年 University of Washington(Seattle,USA) Visiting assistant professor
1999年 東京歯科大学 講師(復職)
2001年 東京歯科大学 教授
2002年 慶應義塾大学医学部 教授(歯科・口腔外科学教室)

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