聖マリアンナ医科大学 特任教授
井上 肇(いのうえ はじめ)
最近、満員電車に乗るのに気が引ける、自分の枕が臭い……かも?と、自分のニオイについて気になりだしたら、それは加齢臭が出始めているサインかもしれません。
加齢臭は「ロウソク」や「古い本」「青チーズ」に似ているといわれます。
女性の加齢臭には、いくつかの原因があります。その原因を知れば、適切な対策を行うことができます。
いわゆる加齢臭の原因は、皮脂が活性酸素によって酸化して発生する「ノネナール」という成分と言われています。男女問わず、ノネナールが40代から増えることで、加齢臭が出やすくなります。皮脂の分泌は男性ホルモンの分泌で影響されるので、男性の方が加齢臭が強いと思われがちです。
しかし女性でも、加齢によって女性ホルモンが減少して男性ホルモンが優位になるため、結果的に男性と同じように皮脂の分泌が亢進し加齢臭が発生しやすくなります。特に、閉経後の女性では、男性よりもノネナールの生産量が多いという報告もあります。
加齢臭が発生しやすい部分は、皮脂量が多い部分。頭皮や胸元、ワキ、首の後ろなどは要注意なので、清潔を心がけましょう。
本来、日本人は体臭が少ない人種に入ります。特に、汗臭いなどという表現が使われますが、本来汗は通常の食生活をしていればほぼ無臭です。しかし、日常生活であまり汗をかかない人は、汗腺機能が休んでいるため、汗腺に老廃物や垢が溜まり不潔になり、そこに常在菌が繁殖し汗を分解し臭いが発生しやすくなります。適切な発汗は、体臭予防に重要です。ただし、肌を清潔に保つため入浴習慣はとても重要です。
現代社会はストレス社会。強いストレスは、身体機能を失調させるだけでなく、食生活にも影響し、これが体臭の原因にもなります。ストレスからくる飲酒の増加や、極端な味付けの食事などは、アルコール代謝成分や、食物の臭い成分が発汗混入して体臭の原因になります。また、タバコも加齢臭を悪化させる原因のひとつであるといわれています。なるべくストレスの少ない生活を心がけ、適切な睡眠や運動、偏りのない食生活など、生活習慣を整えましょう。
若い女性特有の甘い香りは、ラクトンという成分が正体です。このラクトンは30代以降に減少するため、それまでラクトンが打ち消していた体臭が臭うようになります。
人の鼻は、同じ臭いをかいでいると慣れるという習性があります。自分から加齢臭がでていても気付かない人が多いのもそのためです。加齢臭かな?というエイジングサインを感じても放置しておくと、臭いは強くなり、自分では知らないうちに周りの人から「オヤジ臭い」とささやかれているなんてことも!?
極端な食生活をしない限り、農耕民族である日本人は体臭が少ない人種です。この事が、欧米に見られる香水の文化ではなく、匂い袋(間接香水)を使う独特の文化を生み出しています。加えて、日本古来からの水浴の習慣は、皮膚を常に清潔に保て、一層体臭を少なくしています。日本の伝統を承継することは個人の体臭の悩みの解決にもつながります。
もともと日本人は体臭が少ない民族として知られてきました。この理由のひとつに、和食のもつ特性があげられます。
和食は、低脂肪高繊維質で、加齢臭の原因とされるコレステロールや中性脂肪が少ないのです。また、食物繊維を多く含み、便秘を改善してくれるため、腸内で老廃物が発酵して悪臭を発生するのを防いでくれる働きもあります。
体臭が気になり始めたら、食生活の中心を和食にスイッチして、余分なものを溜め込まない体をつくりましょう。
皮膚表面の汚れや過多な脂肪分は、石鹸などで洗い落とし、清潔な状態を保つようにしましょう。汗をかく暑い夏などにはこまめに下着を変えて、常在菌が繁殖するのを防ぐことも大切です。汗を直接吸収する木綿の下着を着たほうが、肌に直接ワイシャツを着るより、臭いを軽減できるでしょう。
この記事の監修
聖マリアンナ医科大学 特任教授
日本臨床薬理学会 認定薬剤師/日本臨床薬理学会 指導薬剤師
井上 肇(いのうえ はじめ)
星薬科大学薬学部卒、同大学院薬学研究科修了。聖マリアンナ医科大学・形成外科学教室内幹細胞再生医学(アンファー寄附)講座 特任教授及び講座代表。幹細胞を用いた再生医療研究、毛髪再生研究、食育からの生活習慣病の予防医学的研究、アンチエイジング研究を展開している。
よくある質問