聖マリアンナ医科大学 特任教授
井上 肇(いのうえ はじめ)
若い頃は1日寝れば風邪なんて治ったのに、今では3日たってもぐずぐず…。最近すぐに人の風邪をうつされる。一旦風邪をひくとだるさがなかなか抜けない、熱が下がらない。そんな症状が出たら、それは免疫機能が低下しているサインかもしれません。
私達の体は、血液の中にある白血球という細胞によって外界の菌やウイルスから守られています。しかし、年齢が上がるとともに、造血機能が低下してしまいます。その結果、生体防御が低下して、20代の頃のように、一晩寝てしまえばすっかり回復……ということが難しくなってしまうのです。
また、加齢による腸内環境の悪化や、ストレスによる自律神経系の乱れも、免疫力低下を促進する一因と考えられています。
私達の体は、約60兆個の細胞からできていますが、このうち3000億個以上の細胞が毎日生まれ変わっています。その際、健康な人の体内でも、1日に3000~4000個ほどのガン細胞が生まれています。
ガン細胞は、免疫機能が正常に働いていればすぐに摘み取られ、増殖することはありません。しかし、加齢と共に免疫機能が低下すると、ガン細胞を見逃してしまう危険性が高まります。
その結果、がんを発症するリスクが高くなってしまうことが考えられます。
空気が乾燥すると、細菌やウイルスに感染しやすくなるため、自宅では、室温20~25℃、湿度60~80%になるような調整を意識しましょう。また、エアコンをきかせすぎるのも免疫力を低下させます。「暑い」「寒い」といって、年がら年中エアコンに頼ることはせず、夏場であれば冷房を適温まで弱めたり、冬場であれば温かいドリンクを飲んだり、セーターを重ねて着るなど体を冷やさないように気を付けてください。体を温める効果のある生姜湯などおススメです。
最近の研究から、腸内環境を改善することで、免疫力がアップすることが分かってきています。腸内環境を改善するために、善玉菌を含む「プロバイオティクス」という食品と、善玉菌のえさとなる成分を含む「プレバイオティクス」という食品を摂るように心がけましょう。
プロバイオティクスには、ビヒィズス菌や乳酸菌を含んだ健康飲料の他、ヨーグルト・チーズ・納豆・味噌・キムチなどがあります。プレバイオティクスには、オリゴ糖を含むバナナやはちみつ、食物繊維を含むきな粉やほし柿などがあります。
巷は新型コロナ感染症と肺炎で大変な状況ですが、風邪だって、体内にウイルスや細菌が侵入することで起こります。感染経路は新型コロナと同じです。風邪は体調管理は風邪予防がの大前提、予防接種が最も大切ですが、ウイルスを寄せ付けない生活習慣作りも大切です。
<風邪予防に効果が期待できる生活習慣の例>
・うがい、歯磨き
・身体の清潔(帰宅したらシャワーやお風呂に最初に入る)
・マスクの着用
・室内の適度な温度設定と加湿そして換気
発熱や関節痛などの全身症状が出ていれば別ですが、風邪の典型的な症状である「くしゃみ」や「鼻水、鼻詰まり」は、別の病気である可能性もあります。
もっとも紛らわしい症状が、花粉症などのアレルギー性疾患です。喉のトラブルや、くしゃみや鼻水、鼻詰まりといった症状は、まさに風邪と同一です。また鼻水が黄色く着色していたら副鼻腔炎かもしれません。咳が止まらないなら、咳ぜんそくを疑うどころか、肺がんの可能性もあります。
季節的に反復する症状だったり、天候の急変などで引き起こされることもありますが、結果的に、風邪を併発している可能性もあります。 とはいえ、風邪の症状が2週間以上続くことは滅多にありません。体の不調が2週間以上続く場合、風邪以外の病気も疑いましょう。
この記事の監修
聖マリアンナ医科大学 特任教授
日本臨床薬理学会 認定薬剤師/日本臨床薬理学会 指導薬剤師
井上 肇(いのうえ はじめ)
星薬科大学薬学部卒、同大学院薬学研究科修了。聖マリアンナ医科大学・形成外科学教室内幹細胞再生医学(アンファー寄附)講座 特任教授及び講座代表。幹細胞を用いた再生医療研究、毛髪再生研究、食育からの生活習慣病の予防医学的研究、アンチエイジング研究を展開している。
よくある質問