八重垣 健(やえがき けん)
夏の暑さで食欲不振になると、そうめんやソバ、冷や奴、ヴィシソワーズ(ジャガイモとタマネギの冷製スープ)などの冷たいスープ、スイカ等々、ツルっとのど越しのいい食べ物を好む人が増えます。すると「パパのお口、臭~い!」と子供に嫌がられたり、「あなた、夏になると口臭がキツくなるわね。ちゃんと歯磨きしてるの?」と、パートナーにズバッと指摘されることも。それはイカンと丁寧に歯磨きしても、口臭は一向に消えなくて……。
夏だけでなく、朝ご飯を抜かしたり、朝食をゼリー状の栄養補助食品等で済ませている人も、口臭がキツくなる傾向にあるようです。
一般的に、口臭の主な原因は、舌苔だといわれています。舌苔とは、舌表面に付着している白くて苔っぽいもののこと。口の粘膜は、皮膚の垢と同じように、古くなった細胞が剥がれ落ち、舌の上に白く溜まって腐敗し、それが舌苔に。さらに、白血球や細菌、食べ物のカスからも成り立っています。
舌苔が発生する臭いの元は、硫化水素。温泉や火山、下水などで発生する、卵やタマネギが腐ったような臭いも硫化水素なのです。舌苔が増えるということは、口の中がドブのような状態に……。歯を丁寧に磨いても、舌苔があると口臭は防げません。
では、なぜ舌苔が増えるのか? それは食事に原因があるようです。よく噛んで食べると、飲む込む前に食材を塊のような形状にしていること、ご存じですか? この塊を、医学用語で“食塊(しょっかい)”といいます。ゴクンと飲む込むときに、食塊が舌の上を摩擦し、掃除してくれるのです(下図参照)。
食欲のない夏は、あまり噛まずにツルっと飲み込める食事が好まれます。すると、食塊がつくられず、舌の掃除が不十分になって、口臭がキツくなるのです。
1日の中で、舌苔がいちばん多いのは寝起き。夏だけでなく、朝ご飯抜きや、ツルっと飲み込めるゼリー状の栄養補助食品を朝食替わりにしている人は、食塊ができないので、口臭がキツくなる傾向に。
舌苔の中には、歯周病菌が含まれている場合がとても多いのです。現在、歯周病がない人でも、舌苔を放っておくと歯周病菌を貯めるかも……。歯周病は強い口臭の大きな原因なので、口の臭いが強烈になってしまいます。
舌苔は、寝起きにいちばん多くなるので、食塊をつくれる朝ご飯をしっかり食べましょう。ご飯やパンは、飲み込むときに塊になりやすいので、主食として取り入れて。中でも、ベーグルは食塊をつくりやすいので、口臭が気になる人にオススメ。また、キウイやパイナップルに含まれている酵素は、舌苔を分解しやすいので、食後のデザートに。
食塊のできる朝食を摂った後、歯磨きの前に舌ブラシで舌苔を落とすと、より口臭は減ります。歯ブラシで舌掃除している人もいますが、それは避けるべき。普通の歯ブラシで、1度の舌掃除につき2~3回(人によっては5~6回)擦るだけで、血液成分のヘモグロビンがにじみ出てしまうくらい、ミクロの傷がつくからです。ミクロの傷とはいえ、舌の表面が毎日傷つくと、その刺激で将来、細胞ががん化する恐れも……。
歯科医師が推奨する舌ブラシのメーカーは2社。株式会社ジーシーの『舌フレッシュ』と、亀水化学工業株式会社の『タングメイト』です。2社の舌ブラシは、100gまでの圧力で、1度の舌掃除につき、30回擦ってもヘモグロビンがにじみ出てこなかったと、国際論文で発表されています。製品は、歯科医院や大型ドラッグストアで購入することが可能。
舌の掃除は、朝食後、歯磨き前に行いましょう。舌ブラシで落とした舌苔は、口腔内に飛び散る場合が。飛び散った舌苔は、うがい程度では落ちないため、歯磨きをする必要があるのです。
舌ブラシを使うときは、鏡を見ながら大きく口を開け「アッカンベー」するように思い切り舌を突き出します。こうすると、舌ブラシで掃除したときの嘔吐反射を抑えることが可能に。舌ブラシは、舌の奥から手前に向かって動かし、舌苔を掻き出します。毎日、舌ブラシを使っている人なら、舌表面の右側3回、中央3回、左側3回のブラッシングが目安。
舌を傷つけないため、舌ブラシは100g以下の圧力で使いましょう。キッチンスケールなど、食材の計量器に舌ブラシを押し当てて、100gの圧力を覚えておくと便利です。キッチンスケールがなくて、100gの圧力を測れない人は、次の方法で確認を。株式会社ジーシーの『舌フレッシュ』と、亀水化学工業株式会社の『タングメイト』使用の場合、舌の平らな面にブラシを押し当て、ブラシの首付近の柄が曲がり始める直前が100g程度だと覚えて。これらの舌ブラシ以外では、舌の表面を軽く撫でるくらいのチカラ加減で使ってください。舌は柔らかいので、歯を磨く感覚でゴシゴシするのは厳禁!
舌の掃除をしていても、仕事のプレゼンなどで緊張して口が渇くと、口臭は強くなります。外出先での緊急時には、粉茶が効果的! スプーンすり切り1杯程度の粉茶を、舌の上にのせ、上アゴに押しつけるようにして口の中全体に広げます。茶葉に含まれるポリフェノールが、口臭を生み出す細菌を抑制。ミントや歯磨きより、粉茶のほうが、臭いの原因菌に作用するというデータがあるのです。
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八重垣 健(やえがき けん)
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