聖マリアンナ医科大学 特任教授
井上 肇(いのうえ はじめ)
厚生労働省が平成20年に発表した『VDT作業に係わる身体的な疲労や症状の有無別労働者割合』では、疲れの部位(複数回答/単位:%)は、目の疲れ・痛みが90.8%、首、肩のコリ・痛みが74.8%、腰の疲れ・痛みが26.9%、頭痛が23.3%、背中の痛みが22.9%、腕、手、指の疲れ・痛みが17.4%、足の疲れ・痛みが8.3%となっています。
また、VDT作業で身体的疲労や症状がある、と答えたのが、一般正社員が70.3%なのに対し、派遣労働者が86.0%と大きく上回っています。これは『正社員に遠慮して、十分な休憩がとれていないため』という調査見解もあります。
また、眼精疲労の中には、パソコンを凝視しすぎたり、緊張する場面に遭遇すると、急に目の下がピクピクと痙攣をし、自分の意志では止められない、という症状もあります。見た目にはわからないほどの細かい動きですが、本人の不快度はかなり高い傾向が。
パソコン病、いわゆるVDT(Visual Display Terminals)症候群だと思われます。
長時間、同じ姿勢で肉体的緊張を強いられていることが原因に。
また、目のピクピク症状で考えられるのは、眼瞼ミオキミア(眼輪筋波動症)。眼精疲労、睡眠不足、精神的なストレスで、顔の運動神経に異常な電気活動が生じ、眼輪筋の一部に異常な興奮が発生することが原因。また、コーヒーなど興奮性の高い食品や、薬の摂取で症状が強く出ることもあります。
PCを使用していると、目や肩など身体に違和感が生じる原因は、主に「パソコン病」と「眼瞼ミオキミア」にあると考えられます。
パソコンで長時間作業するときに起こる、心身に不調をきたす症状です。医学的にはVDT(Visual Display Terminals)症候群といわれます。長時間、同じ姿勢で肉体的緊張を強いられていると、目や筋肉、精神的に負担がかかることで起こります。
主な症状は以下の通りです。
・目の症状 …目の疲れ、充血、かすみ目、ドライアイなど
・身体的な症状…肩こり、手指のしびれ、腰痛など
・精神的な症状…頭痛、けん怠感、イライラなど
まぶたがピクピクと動く場合は、眼瞼ミオキミアの症状が疑われます。これは、目の周囲にあるリング状の筋肉(眼輪筋)がけいれんすることで、まぶたがピクピクと動く症状。「眼輪筋波動症」とも言い、通常は片目に起こります。
目の疲労やストレス、睡眠不足などが原因といわれています。また、コーヒーなど興奮性の高い食品や、薬の摂取で症状が強く出ることもあります。
イライラする、よく眠れない、疲労感がとれないなど、不定愁訴のような不調が続く可能性も。そうなったら、目の疲れが気になるなら眼科に、肩コリがひどいなら整形外科などを受診してください。
また、目がピクピクする眼瞼ミオキミアは、通常、数日から1ヵ月ほどで治まることがほとんどですので、あまり神経質になりすぎず、リラックスし、休息をとることを心がけましょう。
しかし、ピクピクが目の下から目の上に進行し、瞬きが多くなり、最後には目を開けていられなくなる病気もあります。それは眼瞼痙攣。50~70代に多く、女性の割合が高い傾向にあります。大脳基底核の機能障害ですが、抗精神病薬の服用による副作用によることも。
理想的なVDT作業姿勢を心がけましょう。ディスプレイまで40~50cm離し、上腕は垂直にし、肘は水平にして90度に。太ももの上面を水平にし、膝から下は直角になるように意識してください。
ディスプレイ画面の照明と、室内の照明に差が出ないようにするのもポイント。厚生労働省が発表した『VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン』では、ディスプレイ画面の照度は500ルクス以下、書類上及びキーボード上における照度は300ルクス以上にすること、とされています。
連続作業と連続作業の間に、10~15分間は休憩するようにし、連続して1時間作業しないように注意してください。
また、同じ姿勢を続ける肉体的ストレスで、毛細血管に血流はすぐに滞ってしまいます。そんな時は深呼吸がオススメ。大きく息を吐くことで、リラックスモードの副交感神経にスイッチし、同時に体位変換する事で瞬時に血流がよくなりますから。さらに、軽い運動や遠くを見るなども、意識的に行って。
VDT症候群、その症状のひとつもある眼輪ミオキミアは、眼精疲労に気をつけて。長時間パソコンを凝視しない、ホットアイマスク等ご自身が気持ちよいと思われる処置で目の疲労を和らげるなど、こまめなケアを。また、心理的要因が影響していることがあるので、ぬるめのお風呂にゆっくり入る、好きなアロマを嗅ぐなど、ヒーリンググッズを積極的にとりいれ、リラックスし、身体と心を休ませるよう心がけましょう。
眼輪痙攣の場合は、ストレスやドライアイとかは関係なく、進行性の病気です。治療法としては、ボトックス注入が代表的。これは、ボツリヌス菌の毒素を、痙攣している筋肉に注射する方法。2~3ヵ月の間、症状を抑えることができます。この部分はしっかりとした鑑別診断が必要ですから、眼科医の診察を受けましょう。
この記事の監修
聖マリアンナ医科大学 特任教授
日本臨床薬理学会 認定薬剤師/日本臨床薬理学会 指導薬剤師
井上 肇(いのうえ はじめ)
星薬科大学薬学部卒、同大学院薬学研究科修了。聖マリアンナ医科大学・形成外科学教室内幹細胞再生医学(アンファー寄附)講座 特任教授及び講座代表。幹細胞を用いた再生医療研究、毛髪再生研究、食育からの生活習慣病の予防医学的研究、アンチエイジング研究を展開している。
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