板橋 里麻(いたばし りま)
年々平均気温が上がり、猛暑日が増えているような気さえする日本の夏。あの高温多湿な日々がこれからやって来るかと思うと、憂うつになっている人も多いのでは?
そんな夏の季節に、やっぱり心配なることといえば夏バテが挙がります。いざ暑くなってからではなく、早めの時期から備えるのが夏バテ攻略の第一歩。食生活では、どんなことを意識すればいいのか、管理栄養士の板橋里麻さんに教えていただきました。
そもそも、夏バテとはどういう状態で、何が原因で起こるのでしょうか? 板橋さんは、東洋医学的な視点から夏バテの原因のひとつを解説してくれました。
「日本は湿気が多い国なので、梅雨の時期になると余分な水分がからだに溜まりやすくなります。すると、胃腸の機能が低下して代謝の悪化を招きます。そんな状態で暑い夏を迎えて冷たい飲み物をガブ飲みすると、水分が蓄積して水分代謝が滞り、胃腸の機能低下もさらに加速します。食欲がない、栄養素をうまく消化吸収できないなどの症状があらわれ、疲れやすい体をつくり出します」
以上のことからわかるように、まだ暑さに慣れていない梅雨の時期から、余分な水分を溜めない夏バテ対策をすることが大切のようです。具体的には、「水分を摂り過ぎないこと、代謝を低下させないためにからだを冷やさないこと」が大切。この時期は、体内の余分な水分を出すために、利尿作用のある下記の食材を摂ると良いそうです。
きゅうり、オクラ、ズッキーニ、とうもろこし(ヒゲも)、小豆、ハトムギ、バナナ、梨、スイカ、メロンなど。
次に体力をつけるため、具体的には「エネルギー代謝をスムーズにして疲れにくいからだをつくる」ための食材を。
「ビタミン、ミネラル、アミノ酸(タンパク質)をしっかり摂ることが必要です。特に、【ビタミンB1】はエネルギー代謝をスムーズにします」と板橋さん。ビタミンB1を多く含む食材には、下記があります。
豚肉、レバー、大豆・大豆製品、枝豆、玄米など。
中でも豚のヒレ肉は、ビタミンB1にくわえ、体力維持に欠かせないアミノ酸も豊富。低温で茹でたり、低温でグリルしたりするのがおすすめです。
湿気と暑さによる夏バテは、体力だけでなく精神的にも消耗させます。そんな時は「リフレッシュ効果を促すセロリ、レモン、柑橘系フルーツ、レモングラス、ミントなどの気分をシャキッとさせる香りを活用して」と板橋さんがアドバイスしてくれました。
さらに、熱帯夜が続くと、睡眠の質が低下するうえ、屋内の冷房と屋外の暑さによる温度差が原因で自律神経のバランスが崩れ、精神的な疲れの原因になることも。安眠対策に役立つのは……
赤身のお肉、お魚、大豆・大豆製品に多いトリプトファン、発芽玄米、トマト、ナスに多いGABAなどのアミノ酸など。
夏とはいえ、冷えてしまったからだはなかなか戻らないもの。そのまま翌日まで持ち越すと、不調の原因になりやすいため「夜は湯船につかってゆっくり入浴して、白湯や温かいハーブティーなどを飲みましょう。食事にからだを温めるスパイスを使ったり、根菜を摂ったりするのも有効です」。
最後に夏バテ対策に役立つ「豚しゃぶとろろそば」をご紹介。調理時間は約3分という手軽さで、スタミナがつきつつカロリーも抑えめという嬉しいレシピです。
疲労回復効果が期待できるビタミンB1が豊富な豚肉に、利尿効果のあるオクラなどの夏野菜をトッピング。さらに余分な水分が体内に停滞することで引き起こされる胃腸の不調を改善する長芋もプラスしています。
【材料】
豚肉(しゃぶしゃぶ用) 80g
長芋 100g
オクラ 3本
めんつゆまたはだし醤油 大さじ2程度
そば(ゆで麺タイプ) 1玉
大葉 2枚
梅干し お好みで
【作り方】
1.鍋にお湯を沸騰させ、そば、オクラをさっと茹で、冷たいおそばが良い場合は水でしめる。お湯を捨てないで、続いて豚肉を入れてさっと火を通し、氷水にとる。茹でたオクラは輪切りにし、長芋はすりおろしておく。
2.そばを器に盛り、1を盛り付け、千切りにした大葉を添える。めんつゆを回しかけて、全体を混ぜ合わせながらいただく。お好みで梅干しをのせていただくのも良い。
そばをご飯に変えて「豚しゃぶとろろ丼」にするのもおすすめ。短い時間で調理ができるので、台所に立つのが嫌になる暑い日にもぴったり。さっぱり、美味しいとろろそばで栄養をつけて、夏に備えましょう!
(文・川原好恵)
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板橋 里麻(いたばし りま)
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