聖マリアンナ医科大学 特任教授
井上 肇(いのうえ はじめ)
些細なことで激痛が走り、日常生活にも支障が出る痛風。
「気になってはいるけれど、ついついお肉やお酒を摂り過ぎてしまう」という男性陣は要注意。
いざ発症したときに慌てないよう、今回は痛風の症状や治療法を詳しくご紹介します。
大半の人が最初に経験する痛風の症状は、左足の親指関節(MTP関節)の激痛です。
さらに痛風が進行すると、MTP関節に加えて、耳介(耳の穴の周りの部分)や肘関節周囲に「痛風結節」と呼ばれる皮膚の隆起が現れるようになります。
痛風になると膝に痛みを感じるイメージが強いのですが、実は足指関節に発症することが圧倒的に多いので、膝が痛むことはほとんとありません。
痛風は血中の尿酸が結晶になって、関節組織内ににじみ出ることで生じる関節炎の一種です。
しかし、尿酸値が高い(=高尿酸血症)からといって、必ず痛風が発病するとは限りません。
高尿酸血症の人がMTP関節などに痛みを感じ、関節炎症状が認められれば痛風と判断されます。
痛風の診断には、関節液を採取してそこに存在する尿酸結晶を顕微鏡で確認するという検査方法が勧奨されています。
痛風は、尿酸値の高い人に起きやすい病気です。その原因は、尿酸が体内で作られる量と、体外へ排泄される量のバランスが崩れ、いわゆる「尿酸値が上がる」ことにあります。
その具体的な数値は、血清尿酸の値が7mg/dlを超えた場合とされています。その状態が長く続くと、尿酸が血液に溶けきれなくなり、結晶化して関節に沈着します(尿酸塩結晶)。
それが関節を刺激して、白血球が排除しようと攻撃をかけて炎症が起きるのです。
尿酸値が高くなりやすい要因は、暴飲暴食が知られています。
特に尿酸を多く産生しやすいプリン体を多く含んだ食べ物は要注意とされています(魚卵や動物の内臓など)。
また、尿酸値は過大なストレスを受けたり、激しい運動をするなどしても高くなると言われています。
突発的に痛風を発症する場合もあるということです。
痛風は急性発作と間欠期(発作が起こらない時期)の繰り返しです。急性発作は1週間~10日くらい継続し、その後は普段と全く変わらない状態に戻ります。
しかし高尿酸血症の状態が長く続くと発作の頻度が高くなり、慢性的に関節に痛みを感じる痛風性慢性関節炎となりますので注意が必要です。痛風性の尿酸結節や、腎臓に尿酸結晶が沈着して腎臓が障害される痛風腎など、重篤な病気につながることもあるので気を付けましょう。
さらに心筋梗塞や脳梗塞など、命にかかわる心血管系疾患・脳血管系疾患が発症しやすくなるともいわれています。
痛風によって生じる症状に男女差はありません。
しかし、痛風は発症患者の約9割が男性という、発症率に圧倒的な性差のある疾患です。
女性の場合は女性ホルモンが尿酸値を低下させてくれるため、痛風になりにくいという特徴があるのです。しかし閉経や極端なダイエットによって女性ホルモンの分泌量が低下すると、男性と同様に痛風が発症する可能性が出てきます。
痛風の発作が起こったら、医療機関の内科を受診して適切な治療を受けることをおすすめします。
まずは痛みと炎症を取り除く抗炎症剤や、尿酸値を正常化するための薬物を用いた投薬治療を行います。
痛風治療に使用する薬は、尿酸の生成を抑える薬、尿酸の排泄を促進する薬、尿をアルカリ性にして尿酸を溶けやすくする薬などが一般的です。
この3種類の薬を上手く使い分けることで、痛風の発作を予防するのです。
副腎皮質ステロイドという薬も痛風治療に有効です。
短期の服用であれば副作用を心配する必要はありません。
発作予防にコルヒチンという薬を使用することもありますが、副作用の強い薬ですから、服用の際には慎重に医師と相談しましょう。
痛風の発作と思われる親指関節の痛みが出たら、まずはアスピリンやロキソニンなど、薬局で購入できる痛み止めを服用して痛みを和らげましょう。
痛風の発作は激烈な痛みを伴うので、薬を飲まず我慢することはおすすめしません。
その後に改めて、医療機関を受診しましょう。
痛風はかなりの割合で、偏った食生活が原因となります。
痛風の発作を予防するには、食事に気をつけることが必須です。
食事によるプリン体摂取量は「1日400mg以下」を目安にしましょう。
プリン体を多く含む食品は、鳥レバー、イワシの干物、白子、あんこうの肝、干ししいたけ、鰹節などです。
痛風発作の対処法は、とにかく安静にすることです。 マッサージや運動などは、症状を悪化させる可能性があるので避けましょう。
関節が痛いからといって、痛み止めのシップを貼り付けるのはおすすめできません。患部に触ることで痛みが悪化して、耐えられなくなるからです。
「そよ風が吹いて産毛が揺れただけでも痛みが走る」のが痛風ですから、とにかく余計な刺激を与えないように注意しましょう。
痛風と診断されたら、食生活に留意して慢性化を防ぎ、痛風腎などの重篤な病気に発展しないようにすることが大切です。
そして薬と上手く付き合いながら、発作予防と病気の進展を防止できるよう努力しましょう!
この記事の監修
聖マリアンナ医科大学 特任教授
日本臨床薬理学会 認定薬剤師/日本臨床薬理学会 指導薬剤師
井上 肇(いのうえ はじめ)
星薬科大学薬学部卒、同大学院薬学研究科修了。聖マリアンナ医科大学・形成外科学教室内幹細胞再生医学(アンファー寄附)講座 特任教授及び講座代表。幹細胞を用いた再生医療研究、毛髪再生研究、食育からの生活習慣病の予防医学的研究、アンチエイジング研究を展開している。
よくある質問