聖マリアンナ医科大学 特任教授
井上 肇(いのうえ はじめ)
胃腸炎の主な症状といえば下痢が挙がりますが、中には嘔吐(吐き気)を引き起こすこともあります。そして、ひと口に胃腸炎といっても種類はさまざまで、種類によって嘔吐の強弱が変わります。一体どのような胃腸炎になると嘔吐の症状が強く出てしまうのでしょうか。
今回は、胃腸炎と嘔吐の関係についてご紹介いたします。
胃腸炎には、急性胃腸炎と感染性胃腸炎がありますが、急性胃腸炎はほぼ感染性胃腸炎のことを意味します。感染原因は細菌感染、ウイルス感染、毒素性感染などがあります。
それぞれ主な症状は似たようなものですが、種類によって下痢の症状が強かったり、嘔吐の症状のほうが強かったりという違いがあります。
胃腸炎は子どもから大人まで年齢に関係なく感染する恐れがあり、感染のしやすさも平等といえます。感染の機序も症状も大人と子どもで変わりはありませんが、子どもが発症した場合、脱水状態に陥りやすくなります。
また、子どもは予備力が少ないために低血糖などを合併し、重症化することも少なくありません。胃腸炎は誰もがかかるリスクを持つメジャーな病気だからこそ油断しがちですが、たかが胃腸炎とあなどらずに注意することが大切です。
胃腸炎の主な症状といえば下痢ですが、ときには嘔吐を引き起こすこともあるため注意が必要です。一概にはいえませんが、ウイルス性感染症の場合は嘔吐症状が強くなる傾向にあります。 また、黄色ブドウ球菌などの毒素性の胃腸炎の場合は、より強い嘔吐を引き起こすケースが多いようです。
一方、細菌性の胃腸炎は嘔吐よりも下痢症状が重くなる傾向にあります。もちろん個人差はありますが、病状を見極める1つの目安になるでしょう。
夏とはいえ、冷えてしまった体はなかなか戻らないもの。そのまま翌日まで持ち越すと、不調の原因になりやすいため「夜は湯船につかってゆっくり入浴して、白湯や温かいハーブティーなどを飲みましょう。食事にからだを温めるスパイスを使ったり、根菜を摂ったりするのも有効です」。
胃腸炎の代表的な症状である下痢に加え、嘔吐の症状も重なった場合は脱水症状に要注意です。どんどんと体内から水分が失われてしまうため、こまめに水分補給をすることを心がけましょう。
また、胃腸炎になると食欲が低下しやすくなることもあり、栄養不足に陥る可能性もあります。電解質や糖がバランスよく配合されている経口補水液を摂取して、脱水とともに低血糖になることを防ぎましょう。
嘔吐や下痢の症状が続くと、1日でも早く止めたいと願うものですが、無理に止めようとするのは逆にNGです。嘔吐や下痢は、身体の敵といえるウイルスや細菌を洗い流すための防衛反応です。
むやみに止めるよりも身体の反応に従い、自然に止まるのを待つことが大切です。
下痢は数日にわたって続くことがありますが、嘔吐は何日間も連続で起こる現象ではありません。脱水を防ぐためにも水分補給を行いながら、止まるまで待ちましょう。
胃腸炎を発症する原因は、基本的に感染です。そのため、胃腸炎発症を防ぐためには、感染しないように気をつけて生活することが大切です。
こまめに手洗いをすることはもちろんのこと、トイレや洗面台などは常に消毒清潔にしておくことを心がけましょう。
また、同居人が胃腸炎に感染した際にはしっかりと隔離を行い、接触しないように注意することが大切です。とくに小児が胃腸炎に感染したときには、おむつの交換時に大人が感染し、本人はもちろん別の人々に感染を拡大させる恐れがあります。普段以上に手洗いなどの対策を徹底して、拡散を防ぎましょう。
胃腸炎に感染し、嘔吐の症状が見られるときにはほとんどの場合で発熱といった症状も伴います。このような症状が見られたときには、速やかに医療機関を受診して医師の判断をあおぎましょう。感染を拡大させないためにも、正しい対処と早い行動が大切です。
この記事の監修
聖マリアンナ医科大学 特任教授
日本臨床薬理学会 認定薬剤師/日本臨床薬理学会 指導薬剤師
井上 肇(いのうえ はじめ)
星薬科大学薬学部卒、同大学院薬学研究科修了。聖マリアンナ医科大学・形成外科学教室内幹細胞再生医学(アンファー寄附)講座 特任教授及び講座代表。幹細胞を用いた再生医療研究、毛髪再生研究、食育からの生活習慣病の予防医学的研究、アンチエイジング研究を展開している。
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