日本形成外科学会専門医/麻酔科標榜医
脇坂 長興(わきさか ながおき)
小鼻の両脇から唇の両端に伸びる二本のシワを「ほうれい線」といいます。
ほうれい線が目立ちはじめた、口元の笑いジワがいつまでも消えない、など、ほうれい線の深さや長さが気になりだしたら、表情筋が衰え、肌のハリや潤いがなくなってきているサインかもしれません。
ほうれい線は、中年以降に深くなり目立ってくるため、エイジングによるシワと思われていますが、実はこのほうれい線、赤ちゃんにもあります。若い頃は肌の内部からほうれい線を押し出すハリや潤いのパワーがあるため、シワとしてあまり目立たないのです。しかし、紫外線の影響や加齢により皮膚の真皮層にあるコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸といった成分が減少し、肌が乾燥し表情筋が衰えて頬がたるむと、一気に深く、くっきりと目立つようになるのです。
ほうれい線は、鼻の端と唇の端を結ぶナナメのしわのことです。一般的に、表情によって起きるシワを総称して「表情ジワ」と言います。しかし、ほうれい線は、骨格と筋肉の構成で作られるもので、厳密にいえばシワではなく、「頬骨の影」のようなもの。表情には関係ありません。
若い頃は全身の筋肉に元気があり、顔の表情筋も豊かに動きます。しかし加齢に伴って頬の表情筋が衰えると、重力に抗えずに頬がたれ下がるようになり、ほうれい線が目立つようになります。
若い頃はコラーゲンやエラスチンといったうるおい成分が豊富で、肌にピンとハリがあります。しかし加齢に伴ってそれらの成分が減少すると、肌の弾力が弱くなり、肌がたるんでほうれい線が目立つようになります。
コラーゲンやエラスチンは、紫外線(UV)によって破壊されたりするので、日焼け対策が疎かな人はほうれい線が目立つリスクが高くなります。
肌のハリは、肌のうるおいと密接な関係があります。保湿ケアなど肌のお手入れを怠っていると、肌が乾燥気味になり、肌の弾力が失われてほうれい線が目立つようになります。
歯茎が加齢に伴ってやせてくると、相対的に頬骨の出っ張りが目立つ骨格になり、頬の段差が大きくなるのでほうれい線が目立つようになります。
米国アトランタの美容外科医Foad Nahai博士らの研究によると、女性の口元のシワ(ほうれい線)は男性よりも深くなりやすいとのこと(Aesthetic Surgery Journal ,2009)。
その理由は、以下の通り。
つまり、女性の方が口元が乾燥しがちで、皮膚と筋肉との間の結合組織が薄いためほうれい線が深くなりやすいというのです。
女性が男性に比べてシワに敏感なのは、美意識の高さゆえだけでなく、もともと肌がシワになりやすい構造という現実も関係しているのかも?
ほうれい線は一度形成されてしまうと元に戻りにくいため、目立ってきてから慌てて消そうとしてもすぐに消えてはくれません。ケアをしないでいると深く、長くなり、腹話術の人形のような口元になってしまうことも。実年齢よりもはるかに老けた印象でみられてしまうので、注意が必要です。
顔の筋肉がゆるみ、頬がたるむとほうれい線はさらに深くなってしまいます。少しでも頬のたるみを減らすために、リンパマッサージで老廃物を積極的に洗い流しましょう。
ほうれい線の改善には、さまざまな治療法があります。
筋肉を麻痺させるボツリヌス菌の毒素を注入して表情ジワを予防する。(ボトックスなど)
採血した自分の血液から、お肌を再生させる成分「細胞増殖因子(グロースファクター)」を抽出して、気になる部位に注入する
皮膚表面にミクロ単位の細かい穴を開け、肌の再生を促す。表面積が小さくなるように肌が再生するためシワが改善される。(フラクセルなど)
高周波の熱作用により、コラーゲンの産生を促します。(サーマクールなど)
美容外科には他の治療法もあるので、セルフケアで解消できない深くくっきりとしたほうれい線に悩む場合は、専門医に相談してみるとよいでしょう。
この記事の監修
日本形成外科学会専門医/麻酔科標榜医
日本形成外科学会専門医/麻酔科標榜医/日本美容医療協会会員/特定非営利活動法人F.M.L.理事/医療法人 翠奏会理事長/聖マリアンナ医科大学幹細胞再生医学寄附講座講師
脇坂 長興(わきさか ながおき)
1962年生まれ。聖マリアンナ医科大学医学部卒業。
同大学病院の形成外科で skin rejuvenationを研究。
方法論よりも患者様が一番良くなる治療を提供することが 形成外科医の使命であると考えている。
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