聖マリアンナ医科大学 特任教授
井上 肇(いのうえ はじめ)
マスカラやアイライン、つけまつ毛など、まつ毛の生え際ギリギリまでアイメイクをしていると、目が乾いて瞬きが多くなることがあります。
その原因として、脂分を分泌し、涙の蒸発を防いでいる「マイボーム腺」という分泌腺がつまってしまっている可能性が考えられます。
目が乾く、痛い、まぶしいといった不快症状だけではなく、充血したり、目を細めることによって表情が老けて見えたり、見た目にも影響が出るのです。
ドライアイのセルフチェック法として、目を10秒以上開けていられるか、というのがあります。10秒も開けていられなかったら、ドライアイになっているかもしれません。
マイボーム腺とは、まつ毛の生え際の内側に、まつ毛と並ぶようにして点在している非常に小さな腺のことです。脂肪を分泌し、涙の成分に油分を加えて油膜をつくり、涙の蒸発を防ぐ役割があります。マイボーム腺は、加齢によって分泌力が衰えやすい傾向があります。
昨今の目ヂカラ・ブームは若い方だけでなく、エイジング世代にも広がっています。まつ毛の際ギリギリにアイラインを引き、まつ毛の根元からマスカラを塗り、つけまつ毛用の糊を使うなど、専用のアイメイクリムーバーでなければ、なかなか落ちないものばかり。普通のクレンジングでは落としにくいので、残ったアイラインやマスカラ、つけまつ毛の糊が、マイボーム腺を詰まらせてしまうのです。
メイクを落とさず寝てしまうのも同じこと。肌だけなく、目にもダメージを与えてしまうこと、知っておいてください。
女性の場合、加齢によるマイボーム腺の分泌力不足と、落ちにくいアイメイクで、目が乾き、瞬きが多くなってしまうことが多いようです。
マイボーム腺機能不全は、放っておくとドライアイになってしまいます。また、目が乾くからと、目元を手で触ったりすると、詰まったマイボーム腺に雑菌が付いて、俗にいうものもらい(麦粒腫)になることも。(ちなみにもマイボーム腺の詰まりからくるものもらい様の病態を(霰粒腫)とよびます。)
マイボーム腺の詰まりによるドライアイには、以下のような対策が有効です。
すでにマイボーム腺が詰まってしまっている場合、蒸しタオルのケアをおすすめします。マイボーム腺の詰まりは、40℃以上の温度で融解するので、40~42℃程度のやや熱めな蒸しタオルを目の上に5分ほど当てましょう。あまり熱いと、ヤケドの危険性があるので注意。蒸しタオルが冷めたら、また蒸しタオルをつくって当て、5分間じんわりと温めてください。1回の蒸しタオルでマイボーム腺の詰まりがすべて改善するわけではないので、瞬きが少なくなるまで、毎日実行するのがコツです。ただし、すでに炎症があり、充血している場合は温めず、眼科医に診てもらってください。
アイメイクで詰まってしまったマイボーム腺をケアする方法として、まぶたの周囲を清潔に保つことが大切です。英語ではリッドハイジーン、日本語では「眼瞼清」と言います。先に蒸しタオルで詰まりを溶かし。専用のシャンプーなどを使用して洗浄すれば、より効果的です。
マイボーム腺の詰まりによるドライアイが、目の健康を害している可能性があります。意識的に瞬きを多くして目を潤わせる、パソコンやスマホなどを長時間見ない、コンタクトの装用時間を短くする、といった日常的なドライアイ対策を行うことも大切です。
この記事の監修
聖マリアンナ医科大学 特任教授
日本臨床薬理学会 認定薬剤師/日本臨床薬理学会 指導薬剤師
井上 肇(いのうえ はじめ)
星薬科大学薬学部卒、同大学院薬学研究科修了。聖マリアンナ医科大学・形成外科学教室内幹細胞再生医学(アンファー寄附)講座 特任教授及び講座代表。幹細胞を用いた再生医療研究、毛髪再生研究、食育からの生活習慣病の予防医学的研究、アンチエイジング研究を展開している。
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