聖マリアンナ医科大学 特任教授
井上 肇(いのうえ はじめ)
目が乾燥するようになった、目がショボショボ・ゴロゴロするようになった、瞬きが多くなった、といった症状は、涙の成分が変わってきているサインかもしれません。多くの高齢者がドライアイの症状を持っていると言われています。
「涙」と聞くと感動した時や悲しい時に流すイメージをしてしまいますが、実は、涙は私たちの眼を乾燥から守る上で、非常に大切な働きをしています。
涙は、水分やムチンなどの粘液質、皮脂といった成分から構成されていますが、眼の潤いを保つ上で特に重要なのは皮脂です。水分だけでは、涙はすぐに蒸発して眼が乾いてしまうため、蒸発せずに眼を乾燥から守ってくれる皮脂が必要になるのです。
この皮脂は、瞼のふち(裏側)にある、マイボーム腺という部位から分泌されます。しかし、歳をとって、マイボーム腺が油分を押し出す力が弱くなったり、詰まりやすくなったりすると、皮脂がうまく分泌されなくなり、眼が乾きやすくなってしまうのです。また、加齢により涙の分泌量が低下することも大きな原因のひとつです。
眼の乾燥が進むと、乾燥した角膜の表面に傷ができやすくなったり、細菌やウイルスに感染して炎症を起こす「角膜炎」になりやすくなったりします。
目の疲れやドライアイの改善には、目を温めたり保湿したりといった対策が効果的です。エアコンを使うなら、室内の加湿にも気を配り、なるべく乾燥しにくい状態をつくりましょう。ドライアイで眼の疲れを感じる時は、ホットタオルを目の上にのせ、加湿しながら目を休ませてあげることもオススメです。涙の量が増えるだけでなく、ピント調節能力の回復も期待できます。
ドライアイにはマッサージが有効です。眉間の中央にある「印堂」というツボを、円を描くようにマッサージします。また、こめかみから目の周りをマッサージしながら1周しましょう。
目の周囲はデリケートなので、あまり力を入れ過ぎないようにしましょう。
ドライアイにいいとされる食材を食べましょう。
ドライアイ解消には、体の新陳代謝が大切。新陳代謝を促進させる亜鉛は、カキやレバー、豆類、卵黄などに多く含まれます。また、青魚に豊富に含まれるDHAやEPAは、網膜や視神経を健やかに保つ効果があります。その他、ビタミン類が豊富なナッツや野菜類もドライアイ対策に有用です。
現代人の生活環境で、もっともドライアイに関係するのが、スマホをはじめとするパソコンやゲーム機器といったモニタの長時間使用です。特にスマホ画面はサイズが小さいので凝視してしまい、瞬きの回数が少なくなります。瞬きが少ないと目が乾いてドライアイになりやすいので、意識的に瞬きをしたり、スマホを見ない時間を作るなど、目のケアに努めましょう。
この記事の監修
聖マリアンナ医科大学 特任教授
日本臨床薬理学会 認定薬剤師/日本臨床薬理学会 指導薬剤師
井上 肇(いのうえ はじめ)
星薬科大学薬学部卒、同大学院薬学研究科修了。聖マリアンナ医科大学・形成外科学教室内幹細胞再生医学(アンファー寄附)講座 特任教授及び講座代表。幹細胞を用いた再生医療研究、毛髪再生研究、食育からの生活習慣病の予防医学的研究、アンチエイジング研究を展開している。
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