メディカルチェックスタジオ東京銀座クリニック 院長
知久 正明(ちく・まさあき)
生理前や生理中になると、イライラしたりお腹が痛くなったりと何かと悩みごとが増えますが、中でも顔や身体のむくみを気にしている方も多いのではないでしょうか。
顔や身体のむくみは、外見にも大きな影響を与えてしまうので非常に厄介です。
そんな生理前や生理中のむくみは、なぜ発生するのでしょうか?そして、効果的な対処法はあるのでしょうか?
むくみは医学的に「浮腫(ふしゅ)」と呼ばれており、血管やリンパ管からしみ出した水分が皮下に溜まることで腫れぼったくなってしまう状態です。 むくみの原因には以下のようなものがあげられます。 ・長時間同じ姿勢を継続する…(水分が体の下の方に溜まってしまうため) ・運動不足や冷え…(血行不良によって水分が溜まってしまうため) ・塩分の過剰摂取…(体内に塩分が蓄積すると、血管から組織に水分がしみ出してしまうため) 一方、生理前のむくみの原因となるのは、女性ホルモンの一種である黄体ホルモン(プロゲステロン)です。 女性の身体は排卵後から黄体ホルモンの分泌量が増加します。 黄体ホルモンは子宮にたくさん栄養を与えて大きくすることで、着床させる準備を整えるてくれるホルモンですが、その副作用としてむくみが起きやすくなるのです。
生理が始まると、黄体ホルモンの分泌量は徐々に減少します。黄体ホルモンの分泌量が減少すると普段より自律神経が乱れやすくなり、それによってむくみが発生してしまいます。 生理後のむくみには、黄体ホルモンはほとんど影響しないといわれています。 生理中にイライラしていたことや、生理痛に よって普段より動く量が減ったことなどが原因でむくみが生じ、その状態が継続している可能性が考えられます。 しかし生理後にむくみを感じる人はそう多くはなく、一般的に最もむくみやすいのは生理前です。
生理のたびにむくむ人もいれば、全くむくまないという人もいます。むくみが強い月と、そうでない月とでばらつきがある人もいるでしょう。 生理によるむくみ症状の大小は、先天的なホルモン分泌量の差など、もともとの体質も関係しています。 それに加えて、そのときの自身の体調や季節変化などの影響を受けることも多いようです。睡眠不足、ストレス、疲労などが重なるとむくみやすくなるため注意が必要です。 また、発汗量が多く塩分を喪失しやすい夏よりも、運動不足になりやすい冬の方がむくみやすい傾向にあります。
むくみは目や瞼など、皮膚がやわらかいパーツに現れやすいという特徴があります。 また、顔や足のむくみが特に気になるという人が多いですが、メイクをしたり靴下やストッキングを履いたりするため、顔や足のむくみは実感しやすい場所でもあるからです。 顔や足がむくんでいると、思わず「太ったのかな?」と不安になることもあるでしょう。 むくんでいるのか太ったかを見分けるコツは、時間による状態変化をチェックすることです。 顔の場合は朝起きたときに、足は夕方以降にむくみやすくなります。むくんでいるのではなく太っただけの場合は、朝でも夜でも状態が変わりません。
生理によるむくみがいつもよりひどいと感じる場合は、黄体ホルモン以外の要素が関係している可能性があります。 睡眠不足、運動不足、疲労の蓄積などによって自律神経異常が起こっていたり、季節の変化による影響を受けていたりすることもあるでしょう。 ただでさえむくみやすいときにさらに生理になれば、その相乗効果でむくみは悪化します。生理後もむくみが続く場合は、生理以外の原因が潜んでいるのかもしれません。
生理によるむくみを予防するには、もともとのむくみの原因となる運動不足、睡眠不足、塩分の摂り過ぎなどに注意することです。 過度な飲酒は睡眠の質を低下させ、睡眠不足を引き起こすためむくみの大敵になります。 むくみを改善するには、以下のようなツボを刺激して血流を促進することも有効です。 ●湧泉(ゆうせん) 腎臓と膀胱の機能を高めて排尿がスムーズにすることで、むくみを解消してくれるツボです。 足裏の中央よりやや上に位置します。足の指を内側に曲げたときに凹む部分です。 ●天窓(てんそう) 顔や頭部の血行を促進し、顔のむくみを改善してくれるツボです。 耳の後ろにある骨からまっすぐに下ろした線と、のどぼとけから真横に伸ばした線が交わる部分にあります。 利尿作用のあるお茶やコーヒー、紅茶、大豆製品を摂取するのもおすすめです。 大豆には女性ホルモンのコントロールに有効なイソフラボンが含まれています。 イソフラボンによってまんべんなく生理がくれば、生理によるむくみを改善できるともいわれています。 生理によるむくみが気になる人は、納豆や豆腐などを積極的に摂取してみましょう。
むくんだ箇所を押して皮膚がしばらく元の状態に戻らなかった場合は、病気が潜んでいる可能性があるため、かかりつけのクリニックや婦人科の医師に相談しましょう。 むくみが重症な場合は、ラシックスなどの利尿剤が処方されることがあります。 ラシックスは尿と一緒に体内の塩分を排出すことでむくみを改善します。 ただし血圧を下げる効果もあるので、低血圧の人は注意が必要です。医師ときちんと相談した上で使用しましょう。
むくみがなくなると、見た目はもちろん、気分もすっきりしますよね。 生理は避けることはできませんが、日々の生活の中でできるだけむくみを予防しておきましょう!
この記事の監修
メディカルチェックスタジオ東京銀座クリニック 院長
医学博士
知久 正明(ちく・まさあき)
東京都出身、1994年日本大学医学部卒業、2000年日本大学医学部大学院修了
国立甲府病院、国立循環器病センター、日本大学医学部循環器内科、敬愛病院付属クリニック院長を経て、
2017年12月からMCS東京銀座クリニックを開業
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