桜の開花も始まり、お花見シーズン到来です。お花見宴会の予定が入っている人も多いことでしょう。さらに、3~4月は歓送迎会が続き、断れないお酒を飲む機会が増える時期でもあります。
そうなると気になるのが、『お酒の飲み方』。どうせ飲むなら楽しく、気持ちよく飲みたいですが、気がつくと、“泥酔”や“悪酔い”をしてしまうという声は少なくありません。今回は、乱れないお酒の飲み方を探ってみましょう。
お酒を楽しく飲むための基礎知識。お酒をセーブするポイントを知っておきましょう。
→陽気な気分(爽快期)
→理性が弱くなる(ほろ酔い期)
→言いたいことを言うようになる(酩酊初期)
→ふらつき、食べこぼし、うまく動けない(酩酊期)
→記憶力がなくなる(泥酔期)
→寝る、いびきをかく、うまく呼吸ができなくなる(昏睡期)
この進行具合は、『脳神経』が麻痺する進行状況と同じです。どんどん脳が麻痺してくるから酔いが深くなります。できることなら、ふらつきの見られる前でやめておきたいところですね。この状態になると転んで頭を打ち、病院に運ばれたりします。この時、頭の後頭部にある小脳が麻痺を起こしています。
記憶力にまで行くと、さぁ大変です。後始末ができなくなります。警察沙汰になってもその状況を思い出せないので、自分を擁護することもできなくなります。この時は海馬(かいば)という部分が麻痺を起こしています。
最後の段階、大きないびきで寝るようになると本当に心配です。生命維持に一番大切な延髄(えんずい)がやられてしまうので、呼吸が止まってしまうことがあります。急性アルコール中毒の方が亡くなるのは、この延髄(えんずい)という部分がやられてしまうからなのです。
●気分が良くなる原因→脳がアルコールで麻痺している
●気持ちが悪くなる原因→アセトアルデヒドがたまる
基本的にはこの二種類です。『脳だけが酔えるアルコール』は、今のところありません。必ずアルコールがアセトアルデヒドになります。しかし、このアセトアルデヒドがすぐに無害の酢酸(お酢)に変わる人と、ずっとアセトアルデヒドのまま体に残ってしまう人がいます。
酔ってテンションが上がり、楽しい気分になるのはアルコールで『脳みそが酔っている』状態なのです。
お酒に酔って楽しくなるのは、アルコールが大脳新皮質(だいのうしんひしつ)という脳の外側部分に運ばれて、いつも働いている人間の制御機能、『理性』が働かなくなるからです。そして、『本能や直感』の大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)が元気になり、まるで子供のように思ったとおり話したり、行動したりするようになり、とっても楽しく感じるようになります。
この状態がいつまでも続いてほしいなぁ、と思うから、お酒にどんどん依存するようになってしまうのです。
日ごろから高い理性で自分を制御し、感情をコントロールしながら頑張っているビジネスマンがお酒にはまる理由は、この理性のタガをはずし、本能のままになれることを求めているからなのです。適量のお酒は、スーツを脱ぐように、本来の、本能のままの自分になれる手助けになるのです。
さらに飲み続けると記憶の場所、海馬(かいば)や平衡感覚の小脳(しょうのう)、生命維持の延髄(えんずい)が麻痺してしまい、転んだり記憶を飛ばしたり、急性アルコール中毒になってしまったりします。
一般的に、うまく代謝ができずに気持ち悪くなったり、頭痛がしたりする時や、脳の麻痺が進んで大声を上げたり喧嘩をしたり酩酊状態になったときの事を言います。要するに楽しく飲むだけではすまない状態まで飲んでしまったときです。
アルコールそのものが多すぎる場合にもなりますし、そもそも代謝酵素が働かずにそうなってしまう方もいます。
意外と混同しやすいこの二つのワード。
泥酔はお酒が強い人ほど気をつけてほしいのです。泥酔はたくさんのお酒が脳の神経を麻痺させてしまう怖い状態です。理性もなくなり、強気になり、千鳥足となり、記憶がとんでしまう。このような状態が泥酔です。お酒が弱くてすぐに吐いてしまう方は、あまり量を飲めませんので、この泥酔状態にはなりにくいでしょう。たくさん飲める!と豪語している方は注意しましょう。
悪酔いはお酒の弱い人も気をつけたほうがいいキーワードです。気持ちが悪くなる、頭痛がする悪酔いは、アセトアルデヒドが原因です。お酒の弱い人は、このアセトアルデヒドがたまってしまうので、この気持ち悪さ、頭痛があらわれ、悪酔いします。
もともと日本人は、欧米人などに比べて、お酒にあまり強くない体質と言われています。
お酒にはエチルアルコールという物質が含まれていて、肝臓で分解されます。そのとき、毒性が強い“アセドアルデヒド”という物質に変化します。このアセドアルデヒドが、お酒を飲んだときに起こる動悸や、赤くなる、吐き気や頭痛などの状態を引き起こします。このアセドアルデヒドを分解する働きを持っているのが、“ALDH2”(アルデヒド脱水素酵素2)という酵素です。
この酵素が上手く働くと、アセトアルデヒドはただの酢酸(お酢)に代わり、悪酔いせずに飲める体質ということになります。が、日本人はこのALDH2の働きが悪い人が多いため、お酒に弱く、無理して飲むと悪酔いや泥酔をしてしまう人が多いのです。(そもそもこの酵素を持っていない、毒素のもとであるアセトアルデヒドを全く分解できない日本人もいるのです。)
頭痛がしない程度の「適量のアルコール」とは、どれくらいの量なのでしょうか。悪酔いの原因がアセトアルデヒドなら、体内でアセトアルデヒドが無理なく分解されて無害化される程度の量が、適切な量だといえます。
実は、「お酒の適量」は、厚生労働省が目安として提示しています。それによると「通常のアルコール代謝能を有する日本人においては、節度ある適度な飲酒として、1日平均純アルコールで20g程度である。」と、明示されています。
それによると、アルコール20gとは大まかに以下のような数字になります。
・ビール…中ビン1本
・日本酒…1合
・チュウハイ(7%)…350mL缶1本
上記の数値は、大規模な疫学研究から、日本人のアルコール消費量と総死亡率の関係から割り出されたものだそうです。
もちろんアルコールの分解能力は個人差がありますが、一つの目安にはなりそうです。
飲酒の適量の目安は、翌日の体調にあります。その目安の一つは、翌朝の「のどの乾き」にあります。
アセトアルデヒドの分解には水が必要で、体が脱水状態になるとアセトアルデヒドの分解作用が弱くなり、頭痛のもとになる可能性があります。お酒を飲んでいるときは、同程度の水分も意識して補給しましょう。
空腹の状態で飲酒をすると、胃が活発に働いているため、アルコールの吸収が早くなり、アセトアルデヒドの分解が間に合わなかったり、アルコールで胃が荒れてしまったりする可能性があります。飲酒の前には適度にお腹に入れておきましょう。
お酒が強くないと感じている人やそうでない人でも、ALDH2という酵素がきちんと働いているのかどうかは、実は遺伝子キットで調べることができます。ほほの内側を綿棒でこすり、唾液をピペットという容器に入れ、所定のところへ郵送するだけです。インターネットで検査用のキットを1万円から3万円程度で購入できますので手軽に調べられます。大学生のお子さんや新社会人さんにもいいですし、ビンゴの景品でも面白いですね。
これは逆を返せば、遺伝子で決まってしまう代謝酵素、ALDH2を、自身でどうにか変異させてやる!ということは難しい、という事を物語っています。
検査でALDH2の働きが低くても、どうやら現在は研究が進んでおり、この酵素を活性化させる薬が研究されています。広島大学が献身的に研究をしていますので近い将来が大変楽しみです。
ちなみにALDH2は、なにもお酒の強さだけではなく、いろいろな病気の発現に関与していますので、この研究は大きな可能性を持っていると期待できます。
血中アルコール濃度が大切です。アルコールがたくさん入っているお酒が酔いやすいです。基本的にはビールよりも日本酒、日本酒よりもウイスキーが、少量でも酔いやすいとは言われています。
お酒の種類が変わり、飽きが来ずにたくさん飲んでしまう、というのが大きな理由のようです。味や種類が変わると新鮮に感じ、多く飲んでしまうようです。
ALDH2がうまく働く人でも、次のような飲み方は悪酔いするので注意しましょう。
ALDH2が働く体質であっても、そんなに早く分解酵素は働いてくれないので、乾杯の勢いでガブガブと飲み続けると酵素の代謝が追いつかず、悪酔いしてしまうのです。“飲むスピードは酔いと比例する”ということを頭に置いて、お酒を飲むことが肝心なのです。
空腹
すきっ腹で飲むのは、胃壁に負担をかけるだけでなく、アルコールを分解するために懸命に働く肝臓もスタミナ不足状態に。お酒を飲むなら肝臓がうまく働いてくれる栄養素(対策を参照)をしっかり摂ることが大事です。
飲む頻度
シーズン的に毎日飲み会があるなんてことも多いかもしれませんが、毎日飲みは、確実に肝臓の機能を低下させます。また、肝臓の機能にも負担がかかるので、のちのちダメージが出る可能性も。もしも2日連続の場合は、3日目は休肝日に。3日以上連チャンの飲み会は避けましょう。
見た目だけでなく、内臓も年齢とともに機能は徐々に低下していることが多いです。さらに、お酒をよく飲む人はそれだけ肝臓に負担をかけるので、アルコールの分解機能が低下するだけでなく、脂肪肝や肝硬変という病気になる可能性も高まります。また、飲酒でダメージを受けるのは、肝機能だけではありません。お酒(特に日本酒)は糖質量も多いため、メタボ、糖尿病、高血圧などの大きな要因にもなります。他にも、飲みすぎは体のさまざまな臓器にダメージを生じます。下記の対策を読みながら、楽しくほどほどの量を自分なりに探してみましょう。
●茵ちん五苓散(いんちんごれいさん)
吐き気、胃腸のむかつき、むくみ、頭痛
●黄蓮解毒湯(おうれんげどくとう)
赤ら顔、頭痛
●田七人参(でんしちにんじん)
●牛黄(ごおう)
上の二つは病院の処方箋でも出していただけます。またはドラッグストアでも購入できます。水分代謝の改善や頭痛、体の火照りを解消してくれます。意外と医療従事者がお酒を飲む時に服用していたりします。ともに、お小水の出がいつも以上に良いのが確認できるはずです。
とりわけ前者の茵ちん五苓散に含まれるインチンコウには、利胆作用があり、肝臓からの酵素が多く含まれる胆汁が出やすくなる作用が認められています。
下の二つは肝機能が気になる方に良く使われる伝統的な漢方薬で、漢方の専門薬局で購入することができます。ややレアなものですので、偽者もおおく出回っています。ぜひ、薬局の方と相談して購入しましょう。
どれも漢方薬の中では、効き目を感じるのがはやい部類です。飲む前、飲んだ後に二回服用すると、翌日のスッキリ感が違います。全てを併用できることもメリットですね。
●シジミ
●ごま
●カフェイン
●ウコン
●田七人参
以上が良いと言われています。
どれも肝臓で行われているアルデヒドの代謝に関与し、よりそのサイクルの活性化が期待されています。飲んで帰った時は、お家でシジミのお味噌汁に炒りごまを振って食べると、香りもよく、肝機能にもよくオススメです。
飲み過ぎにはもちろん注意しますが、いつも飲んでいるお薬の効き目が変わる事にも注意してください。
いつも飲んでいる血圧の薬や、風邪薬など、お酒が入った後に飲むと効き目だけでなく、副作用も出やすくなります。お酒によって血流がかなりよくなりますので、その分早く、そして一気に薬が効いてしまいます。血圧の薬でしたら、一気に血圧が下がりふらつき、転倒の原因になりますし、風邪薬でしたら解熱作用が効き過ぎ、気持ちが悪くなる場合があります。そのようにたくさん飲む日は、薬の服用時間をずらしても大丈夫か、医師と事前に相談しておきましょう。
上記の漢方薬を飲んでみましょう。利尿作用があり身体が軽く感じられます。次の日に残さないためにも服用しておきましょう。
そしてお風呂に浸からないことです。お風呂は血圧を下げます。血圧が下がると頭がぼーっとし、お風呂の中で、気を失う原因になります。ただでさえ嘔吐や下痢で電解質のバランスも崩れ、フラフラしていますので、これ以上循環を悪くさせることを避けます。家族の方も、そのような方の入浴は止めてくださいね。
吐き気があれば吐き、下痢をしているのであれば出してしまいましょう。吐き気止めや下痢止めはなるべく使用しないようにしましょう。身体の自然な排泄は基本的に極力止めない方がよく、その代わりに電解質のバランスを整える為にスポーツ飲料水などを飲み、ミネラルを補給します。
お酒の二日酔いで吐き気、下痢を生じている可能性もありますが、知らないうちに外のトイレでノロウイルスをもらってしまっている場合もあります。ウイルスを早く追い出すためにも下痢止め、吐き気止めはなるべく使用しないようにしましょう。
また、吐き気がひどいようなら生姜をとりましょう。紅茶にひとかけら入れても良いですし、なければ生姜のチューブでも構いません。生姜には胃腸の働きを良くする効果がありますので妊婦さんのツワリにも使われているくらいなのです。
健康診断の時に『脂肪肝』、『AST,ALT,γ-GTPが高い』と言われた方は、飲まない方がいいでしょう。肝臓は解毒以外に、ATPというエネルギーを作る、脂肪の代謝、たんぱく質を作る、など、色々な働きをします。ここが故障すると身体の倦怠感が抜けなくなる、将来的に飲める薬が減る、薬の副作用が出やすくなる、など困ることが多く出て来ます。また、肝臓には胃腸薬のガスターや、皮膚炎のステロイドのような特効薬もなく、肝臓の血液検査結果が悪くても安静にするほか、余り良い方法も有りません。悪化させないに越したことはない臓器です。
遺伝子検査をするもよし、漢方薬を試してみるもよし、血液検査を見直すもよし。飲む量やお酒の種類、使う漢方やお風呂のルールなど、あらかじめ飲む前に決めておけば、楽しく飲めることでしょう。
自分のためにも、周りの方のためにも、お酒の種類と一緒に対処法も頭に入れておきましょう!
よくある質問