聖マリアンナ医科大学 特任教授
井上 肇(いのうえ はじめ)
電車に乗っている最中、急な便意が!目的の駅まであと3駅。お腹を下しているわけではないのに、その10分が我慢できずに途中下車。
そんな症状が増えてきたら、骨盤底筋が衰え始めているサインかも!
歳をとると、体の様々な部分の筋力が弱まってきます。特に、下半身で筋力の低下が顕著に起こり、足腰が弱くなるだけでなく排便を制御する肛門括約筋などの筋肉にも変化が現れます。
肛門括約筋には、無意識に動く内肛門括約筋と、自分の意志で動かすことのできる外肛門括約筋があります。意識して排便を我慢する際に必要になるのがこの外肛門括約筋で、この筋力が低下すると、排便を我慢しようとしても抑えられなくなり失禁を起こしやすくなります。
女性の場合は、出産時に会陰部にケガをして(会陰裂傷)した為に肛門括約筋が傷ついて起こるケースも。
便失禁には、大きく分けて3つの種類があります。それぞれの便失禁を簡単に説明しましょう。
便意を一切感じないのに、便がいつの間にか漏れている便漏れです。便漏れの半数は、この漏出性便失禁だとされています。 漏出性便失禁は、直腸癌術後などを除けば、高齢者によく認められる症状で、肛門括約筋が緩んでいたりすることから起こります。
突然、強い便意をきたすものの、トイレまで我慢できずに便漏れを起こしてしまう便失禁です。肛門括約筋の衰えや、肛門括約筋の末梢神経の障害、直腸の機能低下などが原因とされています。一方で、男性に発症割合の多い過敏性腸症候群 (IBS)に由来することもあります。肛門括約筋が衰えることで便失禁を起こしやすくなります。
漏出性便失禁と切迫性便失禁が併発する便漏れで、それぞれの原因が混合して発症します。便失禁の3割以上がこれに相当するとされています。
何もしないでいると、肛門括約筋は加齢に伴ってどんどん衰えていってしまいます。下着が汚れていたり、無意識におならが出てしまうような症状が増えてきたら要注意。症状が進行し続けたら、便失禁に悩まされる事も。
外肛門括約筋は、トレーニングで鍛えることができます。上の図を参考に、外肛門括約筋にあたる部分に意識を集中しながら、肛門を5秒間しめて力を抜く、というトレーニングを朝昼晩、各10~20回繰り返しましょう。3ヶ月程続けたら効果が現れてくるはず。
また、軟便気味の人は、便の性状を整えることで症状が改善するケースが多く見られます。あまりに気になるようであれば、消化器を専門とする内科に行ってご相談することをお勧めします。
この記事の監修
聖マリアンナ医科大学 特任教授
日本臨床薬理学会 認定薬剤師/日本臨床薬理学会 指導薬剤師
井上 肇(いのうえ はじめ)
星薬科大学薬学部卒、同大学院薬学研究科修了。聖マリアンナ医科大学・形成外科学教室内幹細胞再生医学(アンファー寄附)講座 特任教授及び講座代表。幹細胞を用いた再生医療研究、毛髪再生研究、食育からの生活習慣病の予防医学的研究、アンチエイジング研究を展開している。
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