メディカルチェックスタジオ東京銀座クリニック 院長
知久 正明(ちく・まさあき)
脱水症状は誰もが耳にしたことのある言葉ですが、なんとなく特別な環境下で起きる症状のようなイメージがあるのではないでしょうか。
しかし、実のところ、脱水症状は身近に潜んでいるものです。日常生活の中でも起きる可能性のある脱水症状について、メディカルチェックスタジオ東京銀座クリニックの知久正明先生に話を聞きました。
脱水症状は、その名の通り、体の中の水分が抜けることによって起きる症状です。
人は赤ちゃんで体重の90%、成人で70~80%、お年寄りで60%ほどが水分でできています。このうち、2~4%くらいが失われると脱水症状を自覚します。このくらいだと喉の渇き程度ですが、4~6%の水分が失われると頭痛や吐き気を感じるようになり、8%を超えると生命に関わってきます。
脱水症状には大きく分けて、水分が失われるもの(高張性脱水)と、塩分が失われるもの(低張性脱水)の2種類があります。分類上は別れていますが、実際には水と塩の両方が抜け出ていってしまうケース(混合性脱水)が起きることも少なくありません。
よく起きるのは水分が失われていくパターンで、喉の渇きがシグナルになります。水分を十分に取っていなかったり、汗をかいたりすることなどで水分が抜けて脱水症状が起こってしまうのです。
また、「不感蒸泄(ふかんじょうせつ)」と言って、なにもしていなくても呼気や皮膚から少しずつ、水が抜けていく仕組みもあります。
塩分喪失型の脱水症状は、水分喪失型に比べると分かりにくいのですが、嘔吐や下痢をしている際になりやすいものです。体液に含まれた塩基類が体外に出て行ってしまうためです。こちらの脱水は症状が出づらいので気付きにくく、重症になりやすい傾向にあります。
脱水症状と一緒に出る症状として、頭痛を心配している人が多いようです。
実際、脱水症状と頭痛には関係があり、水分喪失型の脱水時に特に多いと言われています。水分が減ることで血液のめぐりが悪くなり、緊張性頭痛と呼ばれる頭痛が起きるからです。
また、自律神経に影響が出れば、血流障害で肩こりが引き起こされ、そこから緊張性頭痛に発展することもあります。頭痛の原因が脱水にあるのであれば、水分を摂取することで痛みは治まるはずです。
頭痛以外に脱水症状によって起こる症状として、発熱や嘔吐、下痢、しびれなどもあります。
微熱程度であれば問題ありませんが、38度を超える場合は体温中枢が乱れていると考えられるため、まずは病院または診療所へ行きましょう。水分を摂取しても吐いたり、水様性の下痢になってしまうため点滴治療が必要になるときがあります。
体のしびれがあるときは、脱水症状による過呼吸になっているケースがあります。深呼吸をして安静にしていても治まらなければ、病院へ行きましょう。紙袋を口にあてて呼吸をする方法が知られていますが、低酸素で死亡する例もあるのでやってはいけません。
脱水症状にならないためには、当たり前ですが、水分をしっかりととることが大切です。
成人の場合、1日に約2リットル以上の水分が必要とされています。最低でも1日に1.5リットルの水分が必要です。脱水になりやすい状況では事前に水分補給をしましょう。
しかし、塩分が不足しているときに水だけを飲んでしまうと、かえって血液が薄まって塩分喪失型の脱水が進んでしまいます。ですから、ナトリウムを含んだ補水系の飲料水を飲むといいでしょう。健康な人であれば、スポーツドリンクも有効です。
また、下痢や嘔吐が続いているときは塩分喪失型の脱水が起きる危険がありますので、塩あめを舐めたり、スポーツドリンクを飲んだりするといいでしょう。冷たいスポーツドリンクは体の中から冷やしてしまうので、常温がおすすめです。
熱中症と脱水症状が併発することもありますので、暑い場所に行く前や、運動を始める前には多めに水分をとることで予防をしましょう。
もし、暑い場所で倒れてしまったら、すぐに病院へ行ってください。涼しいところで休憩をする人もいますが、脱水を起こしていると命に関わることもあります。
また、夏場の方が多い症状ではありますが、冬にも脱水症状は起こります。
乾燥している中でこたつに入っていると不感蒸泄が活発になり、脱水を起こすことがあります。また、冬場の長距離ドライブや、熱のこもるダウンジャケットの着用なども引き金になり得るので、冬場でも適切な水分補給を心掛けましょう。
脱水症状は、意外と身近にある危険です。日ごろから十分に水分補給をするようにして、予防しておきましょう。
この記事の監修
メディカルチェックスタジオ東京銀座クリニック 院長
医学博士
知久 正明(ちく・まさあき)
東京都出身、1994年日本大学医学部卒業、2000年日本大学医学部大学院修了
国立甲府病院、国立循環器病センター、日本大学医学部循環器内科、敬愛病院付属クリニック院長を経て、
2017年12月からMCS東京銀座クリニックを開業
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