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男性のがん死亡数第一位、肺がんになりやすい人の特徴は?

男性のがん死亡数第一位、肺がんになりやすい人の特徴は?

知久 正明

メディカルチェックスタジオ東京銀座クリニック 院長

知久 正明(ちく・まさあき)

男性のがん死亡数第1位といわれている「肺がん」。

肺がんは初期症状が現れにくいという特徴があり、早期の発見が難しい厄介ながんです。今回は肺がんの特徴や症状、危険因子について解説します。

肺の中の気管支や肺胞ががん化

肺は私たちの体内に左右に1つずつ存在しますが、右側の肺は「上葉・中葉・下葉」の3つに、そして左側の肺は「上葉・下葉」の2つに分かれています。 そして肺の中には気管支が木の枝のような状態で広がっており、その先に肺胞と呼ばれる組織があります。この気管支や肺胞が、がん化した状態が肺がんです。

肺がんの進行とともに現れる症状は?

肺がんは早期ではほとんど症状が現れませんが、病状が進行するに伴い以下のような症状が現れます。

<呼吸器症状>
・ 乾いた咳が出て、なかなか治らない
・ 黄色、緑、茶褐色など色の付いた痰が出る
・ 血痰(血の混じった痰)が出る

<循環器症状>
・ 胸の痛みがあり、それが持続する
・ 息切れがする
・ 顔や首がむくむ

<消化器症状>
・食欲不振、体重減少
・食べ物が飲み込みにくい
・だるくて疲れやすい、微熱が続くといった全身症状が出る

上記に加えて、肺がんの症状の一つに「ばち状指」があります。
これは手の指が太鼓のばちのように変形した状態です。
正常な指は爪と軟部組織の角度が160度ほどですが、ばち状指は180度以上になってしまいます。ばち状指が起こるメカニズムは不明ですが、他の肺疾患や心臓疾患によって現れる可能性もあるので、ばち状指が出たからといって必ず肺がんだと断定することはできません。

また、肺炎を合併したり、細胞の一部が破壊されたりしたときに上昇する「CRP値」が、肺がんの末期に急激に上昇することがあります。しかし、これも肺がん特有の症状ではありません。

肺がんは初期症状がほとんどない?

上記のような症状は肺がんの初期にはほとんど出ることはなく、大概が中期~末期にかけて現れます。 また、これらの症状は肺がん特有のものではないため、他の疾患による症状と区別がつかないケースもあります。風邪や疲労のせいだと思って、見逃してしまうこともあるでしょう。そのため、肺がんは早期での発見が難しいといわれているのです。

もし複数の症状がみられたり長引いたりしている場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

肺がんの最大のリスクファクターは「喫煙」

肺がんの最も大きなリスクファクターとなるのが、なんといっても喫煙です。

喫煙している本人が吸引する「主流煙」はもちろんですが、周囲の人が吸引する「副流煙」も健康に悪影響を与えます。

それに加えて、「三次喫煙」と呼ばれるリスクも存在するのです。洋服の繊維や部屋のカ-テンなどに付着したタバコの煙が、さらに化学反応を起こすとさらに有害な物質を発生させます。これを吸引してしまうのが三次喫煙です。つまり目の前で喫煙していないとしても、時間差で周囲の人の健康に悪影響を与える可能性があるということです。最近では、喫煙後45分はエレベータに乗ってはいけないというルールを設けた自治体もあるほどです。

喫煙者と非喫煙者を比較すると、喫煙者は男性では※「4.5倍」女性では「4.2倍」、非喫煙者よりも肺がんになりやすいというデータがあります。また、肺がんになった方の中で、喫煙していなければ肺がんにならずにすんだ確率は、男性の「68%」女性の「18%」というデータもあるのです。

その他にも、大気汚染や有機溶剤の吸引も肺がんの原因になるといわれています。

肺がんは種類によって特徴が異なる

肺がんには喫煙の影響を受けやすいものとそうでないものがあります。
肺がんには扁平上皮がん、腺がん、小細胞がん、大細胞がんの4種が存在します。

●扁平上皮がん

肺の中の太い気管支に発生し、喫煙の影響を非常に受けやすい。見つかりにくく、咳や血痰などの症状が現れやすい。

●小細胞がん

肺の中の太い気管支に発生し、喫煙の影響を非常に受けやすい。手術がしにくく、増殖・転移が速い。

●腺がん

肺の奥に発生しやすく、喫煙の影響を受けにくい。レントゲンなどで見つかりやすいが、CTを用いた検診では約80%の確率で早期発見できるといわれている。

●大細胞がん

肺の奥に発生しやすく、喫煙の影響を受けにくい。増殖が速く、小細胞がんと似た性質を示すものもある。

しかし喫煙の影響を受けにくい腺がんであっても、喫煙者は男性では※「2.8倍」、女性では「2.0倍」、非喫煙者よりも肺がんになりやすいというデータがあるので、影響が全くないわけではないということを認識しておきましょう。

喫煙していた期間によってリスクは変動

「今は禁煙しているけれど、昔は喫煙していた…」と不安になる人もいるかもしれませんが、実は禁煙をしてからの年数が長くなればなるほど、肺がんのリスクは減少します。

非喫煙者と比較した肺がんの発生しやすさは、禁煙してからの期間によって以下のように変わります。

喫煙をやめて9年以内:3倍
喫煙をやめて10〜19年以内:1.8倍
喫煙をやめて20年以上:非喫煙者とほぼ同じ

不安があれば、まずはかかりつけ医に相談を

不安があれば、まずはかかりつけ医に相談を

何か気になる症状があれば、まずはかかりつけの内科のドクターに相談しましょう。
血液検査、レントゲン撮影、胸の聴診などを行い、異常があった場合は病院でCT検査などを行うことになります。

また、症状がなくとも早期発見のために定期的に人間ドックや検診を受けることもおすすめです。親族に肺がんを患った人がいる場合や、40代以降の男性の喫煙者は特に注意が必要です。ただし肺がんは20代でも発症する可能性があるので、若いからといって油断はできません。

肺がんの種類にもよりますが、※肺がんはステージⅠであれば5年生存率は80%程度になります。ステージⅡになると約50%、ステージⅢで約22%、ステージⅣで約5%と減少していくので、少しでも早いタイミングでの発見と治療が重要です。

※参考
全国がんセンター協議会(2017年集計)


初期症状の乏しい肺がんのような病気を早期発見するためにも、定期的に人間ドックや検診で自分の身体を見つめなおしても良いかもしれませんね。

 

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知久 正明

この記事の監修

メディカルチェックスタジオ東京銀座クリニック 院長

医学博士

知久 正明(ちく・まさあき)

東京都出身、1994年日本大学医学部卒業、2000年日本大学医学部大学院修了

国立甲府病院、国立循環器病センター、日本大学医学部循環器内科、敬愛病院付属クリニック院長を経て、
2017年12月からMCS東京銀座クリニックを開業

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