骨や歯を丈夫にする栄養素としておなじみのカルシウム、毎日の食事できちんと摂れていますか?
日本は雨が多いため、土壌や農作物にカルシウムが不足しがち。その影響もあり、日本人は慢性的にカルシウム不足といわれます。カルシウムは強い歯や骨を作るだけでなく、体内でさまざまな役割を担っており、不足による代償はかなり大きいよう。
そこで今回は、カルシウムにまつわる基礎知識と、上手に摂取するポイントをご紹介します。
体重の1~2%の重さで体内に存在しているカルシウムは、その99%が骨と歯に、残りの1%が血液などの体液や筋肉などの組織に分布していて、色々な役割を果たしています。よく知られているカルシウムの主な働きは以下のとおり。
・骨や歯を形成する
・筋肉の働きをなめらかにする
・脳や神経の働きを助ける
・出血を止める
特に、血液や筋肉に存在する1%のカルシウムは、心臓の筋肉や脳の神経細胞の働きをコントロールするなど、生命の維持や活動に欠かせない重要な役割をしています。
血中には常に一定量のカルシウムが必要なので、血中のカルシウムが不足すると、からだが危機感を覚えて副甲状腺ホルモンを分泌させ、骨に蓄えられているカルシウムを取り出し、体内に補っています。
厚生労働省が制定している「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によると、日本人の成人の1日あたりのカルシウム推奨量は【600~800mg】。(成長期の子どもは700~1,000mg)
これに対し、「国民健康・栄養調査」では、毎年すべての世代で平均摂取量が推奨量に満たないことが明らかになっています。つまり、大抵の日本人はカルシウム不足!
ちなみに、耐容上限量は18歳以降で男女問わず2,500㎎で、この量が過剰摂取の目安になります。
カルシウムは一度にたくさん摂っても体に貯蔵しておくことができず、必要のない分は排泄されてしまうもの。
このため、からだに供給し続けないと不足状態となり、血中濃度を保つために骨からカルシウムが溶け出すようになってしまいます。
そしてこのような状態が続くと、骨粗しょう症を引き起こす原因になります。
(上で挙げたメカニズムにより)骨がもろくなってしまいます。
カルシウム不足が続くと骨からの補給量がどんどん増加し、血中のカルシウム濃度が高くなってしまいます。そうなると、カルシウムは血管壁に取り込まれ、壁を収縮させます。これにより血液の流れが悪くなるので、心臓はより強い力で血液を送り出そうとし、結果として血圧が上昇して、高血圧や血管の老化を招きやすくなります。このようなメカニズムから、高血圧の予防や改善のためには、塩分の摂取過多やカルシウム不足に注意する必要があるといわれているのです。
カルシウム不足は尿路結石糖尿病やアルツハイマー病、変性関節症を引き起こす原因のひとつともいわれます。
カルシウムは脂肪の代謝にも関わっており、不足すると脂肪を溜め込みやすくなるともいわれています。カルシウム不足によって骨から溶かし出されたカルシウムは血中に入りますが、血中のカルシウム濃度が高くなると、脂肪細胞で脂肪酸合成酵素が多く作られるようになり、中性脂肪が増加してしまうのです。一方、体内に十分なカルシウムがあると脂肪の合成が抑えられ、分解が促進されると考えられています。
そもそもカルシウムは丈夫な骨や筋肉を保つうえで欠かせないものなので、太らないためはもちろん、健康の維持のためにも不足しないようにしましょう。
「まぶたがピクピクとけいれんする」「運動していないのに、足がつる」といったサインは、カルシウム不足による筋肉活動の低下が原因になっている可能性があります。一方、「もの忘れ」「イライラ」は、脳の神経細胞の働きが低下することによるものといわれています。
カルシウムは体内での吸収率がよくないといわれ、最も吸収がよい牛乳でも50%程度、他の食品では20~30%程度だと考えられています。しかも加齢とともに吸収率が悪くなるため、カルシウムを含む食品を日頃から多めに摂取することが大切です。
牛乳や乳製品、骨ごと食べられる小魚、豆腐や納豆などの大豆製品、緑黄色野菜、海藻、貝類などを日々の食事で積極的に摂ることが推奨されています。特に牛乳は、コップ1杯(200ml)に約220mgのカルシウムが含まれており、効率よくカルシウムが摂れる優秀食材。ただし、牛乳が体質に合わない人(牛乳に含まれる「乳糖(ラクトース)」を分解する消化酵素「ラクターゼ」の働きが弱い乳糖不耐性の人)は他の食品からカルシウムを摂るようにしましょう。大豆は女性ホルモンと似た働きをするイソフラボンも摂れるので、女性の骨粗しょう症予防にも◎。緑黄色野菜も、カルシウムの流出を抑えるビタミンKが含まれておりオススメの食材です。
カルシウムは体内でマグネシウムと密接に関わりながら働くため、バランスを考えて一緒に摂ることがポイントです。(マグネシウムは緑黄色野菜や豆類、海藻類、ナッツなどに多く含有されています)サプリメントも体内バランスに沿って、カルシウムとマグネシウムを【2:1】で含むものが多いので、不足しがちな人はサプリで取り入れてみるのも1つの方法です。カルシウムはマグネシウムと一緒に働き、神経を穏やかに導く作用があるともいわれています。ストレスの多い人はしっかり摂りたいミネラルコンビです。
カルシウムの吸収を高めるには、ビタミンDの働きが必要とされます。(ビタミンDを多く含む食品は、イワシなどの青魚類やきのこ類、玉子など)また、ビタミンDは日光を浴びることによって体内で生成されるため、成長期の子どもは外で元気に遊ぶことも大切です。
リンは骨へのカルシウムの沈着を助ける大切な役割を担う一方、過剰に摂取するとカルシウムの吸収が阻害されます。食品添加物に使われることが多いため、加工食品やスナック菓子などをよく食べる人は、カルシウム不足になりやすい可能性があるため要注意です。
このことからも、加工食品やスナック菓子の食べすぎは避け、自炊の食生活を送ることをおすすめします。
カルシウムのサプリメントを過剰に摂取すると、心筋梗塞を発症する危険性が上昇するという調査結果も。他にも、カルシウムの摂り過ぎによる過剰症として、泌尿器系結石や他のミネラルの吸収抑制などがあります。(特に、カルシウムの過剰摂取が鉄の吸収を阻害することはよく知られています)
カルシウムはからだの機能の維持や調節に欠かせないミネラルのひとつですが、【体内での吸収率は他のミネラルとのバランスが影響する】という点はぜひ押さえておきたいポイント。基本は【食事から十分な量のカルシウムを摂取】するようにし、不足しがちな栄養素に関しては適宜サプリメントで補うなど、からだにいいものを賢く取り入れ、健康維持を心がけたいですね。
(文・大津礼保奈)
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