日本形成外科学会専門医/麻酔科標榜医
脇坂 長興(わきさか ながおき)
虫刺されの跡がなかなか消えない、特に歳を重ねるごとに虫に刺された跡が黒く変色し、シミのような状態になっている。また虫に刺された時に掻きむしってしまった傷跡がそのまま残っている。
若い頃にはすぐに消えたのに、跡がなかなか消えなくなってきたら、それは肌の新陳代謝が低下しているというエイジングサインかもしれません。
虫刺されによって跡が黒く残ってしまうのは、患部が炎症を起こしてメラノサイトを刺激することで、メラニンが作られてしまうためです。
通常、メラニンは新陳代謝によって皮膚が生まれかわっていく過程で古い皮膚と一緒にアカとなって体外へ排出されます。この時点でメラニンがあった肌は本来の肌の色に戻りますが、皮膚が老化すると、細胞の活性が衰えてメラニンの排出スピードが遅くなり、色素が皮膚にたまりやすくなります。
通常、炎症性色素沈着は放っておいてもしだいに消えていきます。しかし、皮膚の炎症がひどかったり、色素沈着が真皮にまで達したりした場合は、消えなくなる場合があります。
虫に刺された場合、患部をきれいな水で洗い流して清潔にし早急に塗り薬で治療すれば、速やかに治ってしまうことも少なくありません。とはいえ、虫刺されの種類によって症状も対処法も異なります。
人が刺されやすい虫と虫刺され症状、その対処法を解説します。
ブヨはブユ、ブトともいい、春〜夏の期間に水辺の周辺の草むらなどで発生するコバエのような虫です。
ブヨはノコギリのような口で皮膚をかじり、流れた血を吸血します。吸血されているときはほとんど痛みはありません。しかし皮膚の中に注入されるだ液成分は蚊よりも毒性が強く、アレルギー反応と炎症を引き起こします。
ブヨに刺された場合は刺された部分をきれいな水で洗い冷まして、激しく動くことは控えましょう。
お薬は、抗ヒスタミン薬やステロイド外用薬が用いられます。
アブはハエの仲間で、森や川の近辺に生息しています。アウトドアでの虫刺され被害の原因として多い虫です。
アブは血を吸うときにブヨと同じく、人の体内にだ液成分を注入します。刺された直後は強い痛みが走り、出血斑も出現します。そして少しずつ、かゆみを伴いながら赤く腫れ上がります。
アブに刺された場合は、ブヨと同じように刺された部分をきれいな水で洗い流します。患部を冷まして、激しく動くことは控えましょう。
お薬は、抗ヒスタミン薬やステロイド外用薬が用いられます。
動物の体毛に隠れて生息する虫で、世界に2000種ほどが存在します。人を刺すノミとしてはヒトノミやネコノミ、イヌノミなど多種存在します。ペットブームもあり、ネコノミに刺される人が多くなっています。
ノミは小さな虫ですが、ジャンプ力が高いため、足首から下太ももの範囲が多く狙われます。しかしネコを抱いてノミが人に移った場合は、全身いたる場所が刺される可能性があります。
ノミに刺された場合は、ステロイド外用薬を塗布する治療法が一般的です。ただし、アレルギー体質や環境によって症状がかなり異なるので、自己判断が困難な場合は医師の診察を受けましょう。
虫刺され跡を残さないためには、掻き傷を作らないこと。つまり、掻かないようにすることが重要です。
もし跡が残ってしまったら、薬用美白剤で沈着してしまった部位をケアしましょう。炎症によるシミの原因は紫外線によるシミと同じメラニンですから、薬用美白剤がなければ薬用美白化粧品をこまめに塗ることでケアが可能です。
また、紫外線を浴びるとシミの色が濃くなり、より目立ちやすくなることがあるので要注意。
ケミカルピーリングとは、グリコール酸などの薬品を使って古い角質を化学的に溶かし、新しい皮膚の再生を促すという治療です。美容皮膚科などで、比較的手軽に治療を受けることができます。
ご自身でケアをする場合は、グリコール酸を含む石鹸などが市販されていますから、それらを試してみるのもよいでしょう。これらの石鹸は、治療で使用するグリコール酸よりはるかに薄い濃度なので、自宅で安心して使用できます。
この記事の監修
日本形成外科学会専門医/麻酔科標榜医
日本形成外科学会専門医/麻酔科標榜医/日本美容医療協会会員/特定非営利活動法人F.M.L.理事/医療法人 翠奏会理事長/聖マリアンナ医科大学幹細胞再生医学寄附講座講師
脇坂 長興(わきさか ながおき)
1962年生まれ。聖マリアンナ医科大学医学部卒業。
同大学病院の形成外科で skin rejuvenationを研究。
方法論よりも患者様が一番良くなる治療を提供することが 形成外科医の使命であると考えている。
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