Dクリニック東京 名誉院長
塩谷 信幸(しおや のぶゆき)
身近になった今だからこそ知りたい、美容医療の現状、真実、そしてこれからを追う連載第2弾。
今回は、いざ手術を受けるときに役に立つ、美容医療施術のメリット・デメリットについて、北里大学形成外科名誉教授・塩谷信幸先生にくわしく聞いてみました。
最近、美容医療が身近に感じられるようになった……そんなふうに感じている人は少なくないでしょう。その最たる理由が、レーザー療法の進歩。シミやあざ、毛穴、脱毛、たるみと、さまざまな悩みを解消できるレーザー療法は、ここ数年でもっとも進歩した技術といっても過言ではありません。そのおかげでメスに頼らなくても良くなったのです。
特に進歩が目覚ましいのが、シミの治療。女性の場合は肝斑が混じっていることが多く、ヘタにさわると症状が悪化すると言われてきましたが、今では肝斑にも使えるレーザー機器が開発されています。
ただ“あらゆる悩みに対応できる”といっても、ひとつのレーザー機器ですべてを解決できるわけではありません。レーザー機器は日々新しい機種が開発されていますが、それは扱う医師の知識と技術力も伴っていなければならないということを意味します。レーザー療法を考えるなら、レーザー療法に詳しく、技術力に長けた医師を選ぶことが大切です。
・ダウンタイムが少ない
・シミ、毛穴、脱毛、たるみとさまざまな悩みを解消できる
・施術後、炎症後に色素沈着を起こす可能性がある
・アフターケアまでしっかりおこなうクリニック選びが必須
ボツリヌス毒素注入療法は日本ではそれほど盛んではありませんが、アメリカでは専門の医師がいるくらいポピュラーな施術法です。これは、濃度を低くしたボツリヌス毒素を筋肉に注入することで、部分的に筋肉の動きを弱め、表情筋によるシワを軽減させるというもの。
額に走る横ジワや、眉間の縦ジワ、目尻のシワ、ほうれい線など、表情筋を動かすことでできるシワに効果があります。
「能面のようになる」「笑顔が不自然になる」というイメージから敬遠されがちですが、今ではカウンセリングが徹底され、医師の知識や技術力が進歩して、きめ細かいケアができるようになりました。能面のようになることは、ほとんどないでしょう。
・表情筋でできるシワに効果大
・わき汗、手汗など、多汗症を軽減できる
・物を噛むための筋肉(咬筋)に注入すると小顔効果も
・3〜6ヵ月で元に戻る
・表情とは関係なく深く刻まれたシワには効果なし
・頻繁に施術をおこなうと元に戻りづらくなる
・3〜6ヵ月で元に戻る
本気でたるみを解消するには、フェイスリフト施術がもっとも効果的です。ただし、メスを入れるということは、傷跡が残る、出血する、元には戻せない……というように、リスクが大きくなるということ。ですから、たるみが気になりはじめたという人や、そこまでリスクを負いたくないという人は、光治療で肌を引きしめるタイトニングをおすすめします。
ただし、タイトニングによる効果は一時的なもの。たるみの予防には効果的ですが、今あるたるみに対しては、皮膚を切って縫合したり、糸でつり上げるフェイスリフト施術に比べると、効果を維持しづらく、手応えも弱いのが難点。たるみを解消するというのは、それだけ難しいことなのです。
・シワやたるみへの効果が高い
・フェイスリフト施術は1回で済み、効果の持続時間が長い
・光治療によるタイトニングは、たるみ予防に効果的
・光治療では効果を維持しにくい
・メスを入れる場合は、出血や傷跡が残りやすくリスクが大きい
いちばん普及しているのは「シリコン」です。もちろん、安全性の高い素材が使われますが、からだにとって異物は異物。そのため最近では、耳の軟骨を取り、それを注入する施術がポピュラーになってきました。軟骨は耳の裏から取るため傷跡が人目につきにくく、異物反応も起こりにくいのが大きな魅力です。
・理想的な鼻の形を維持できる
・手術跡が目立たない
・シリコンを使う場合には異物反応が起こる可能性あり
・2〜3年に1度メンテナンスが必要
・術後の変化がわかりやすい
豊胸手術には、シリコンバッグを使うのが一般的です。シリコンは生体反応のない安定した材料であり、見た目も触れた感触も自然に近いのが魅力です。
しかし、生体反応がないとはいえ、異物であることに変わりはありません。そのため、シリコンの周りに薄い線維性の皮膜が形成されるといった防御反応がまれに起こります。この膜が薄ければさほど心配はいりませんが、数ミリの厚さになってしまうと、痛みが伴ったり、触れるとゴツゴツとして乳房のシルエットにも影響するため、その場合はバッグを取り出すしかありません。
・シリコンバッグを使えば、自然な形、手触りでボリュームアップが可能
・シリコンバッグは生体反応が少ない
・女性らしいプロポーションを維持できる
・まれに身体の防御反応によりシリコンのまわりに皮膜が形成され、痛みが起こったり、形が崩れることも
注入療法は、シワの除去に効果を発揮する施術法です。数年前まではコラーゲンを使うことが一般的でしたが、必ずしもすべてが吸収されないことや、アレルギーリスクへの懸念から、最近ではヒアルロン酸注入が主流になりました。
ヒアルロン酸は、元来皮膚の中にある成分ですから、安全性が高いことが特徴。繰り返し注入しても副作用がないうえ、ハリやツヤが出るというメリットもあります。
ただし、注射で注入するため、技術力の高い医師を選ぶことがとても重要です。技術力が伴わないと、肌の表面がデコボコになるなど、後遺症に見舞われることもあるので、慎重にクリニックを選びましょう。
・ヒアルロン酸注入は、安全性が高い
・シワの改善だけでなく、ハリやツヤもアップする
・注射で注入するため多少の痛みが伴う
・施術する医師の技術力により仕上がりが大きく左右される
・紫外線を浴びると赤くなりやすいため、日焼け対策の徹底が必要
・3〜6ヵ月で元に戻る
プチ整形の代表といえるほどポピュラーな二重手術。まぶたが腫れぼったい日本人に人気の高い施術のひとつです。
美容医療はメスを入れるほどリスクが大きくなるため、まずはまぶたの皮膚を縫い付けて二重をつくる【縫合法】を施し、それで物足りなければ二重の予定線に切開を加え、縫い付ける【切開法】を施すという、2段階を踏むことが主流です。
最初から切開法をしてしまうと、仕上がりが気に入らなくても元に戻せません。美容医療は、「間違えるならやり足りないほうに間違えろ、迷ったら控えめに」が鉄則です。
・目もとがぱっちりとして顔の印象がはっきりする
・術後の変化がわかりやすい
・切開法の場合、元に戻せない
・切開法の場合、二重の幅を広くとりすぎると修正しにくい
次回は、後悔しないためのクリニック選び、信頼できる医師の見極め方、美容医療の未来についてお伝えします。
(文・坂井七緒美)
この記事の監修
Dクリニック東京 名誉院長
特定非営利活動法人アンチエイジングネットワーク 理事長
特定非営利活動法人創傷治癒センター 理事長
特定非営利活動法人フューチャー・メディカル・ラボラトリー 副理事長
見た目のアンチエイジング研究会 代表世話人
日本抗加齢医学会 顧問
塩谷 信幸(しおや のぶゆき)
1931年、東京都生まれ。東京大学医学部卒業。Tokyo Army Hospitalでのインターン修了後、フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバーニ大学で外科を学ぶ過程で形成外科に魅了される。帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、北里大学医学部教授(形成外科)に就任。「美容外科とは、美を求める人間の執念と、造形の魔力に憑かれた形成外科医とが織りなす矛盾をはらんだ人間模様であり、社会現象である」と、医療と美容外科の間に生じる矛盾を追及し、今もなお、美容外科をアンチエイジングという幅広い視野で捉え、各専門家が所属したNPO法人を設立し、意欲的な活動を続けている。
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