Dクリニック東京 名誉院長
塩谷 信幸(しおや のぶゆき)
「若々しく見られたい」「いつまでも美しくありたい」と思うのは世の女性の常。しかし、80歳で20代のような容姿をたもつことは不可能であり、できたとしても違和感が際立ち人目に美しいとは言いがたいもの。では、美しく魅力的に年齢を重ねるには、どうしたら良いのでしょうか。老いと美、そして若さのカギとなる「エロス」について、アンチエイジング研究の第一人者である北里大学形成外科名誉教授・塩谷信幸先生にうかがいました。
アンチエイジングという概念が日本に根付いてまだ14年ほどですが、今では毎日のように、あらゆるメディアでこの言葉が踊っていますね。しかし、本来の意味で使われていることは、あまりないような気がします。
アンチエイジングとは「不老不死」という意味ではありません。健康寿命をいかにのばしていくか、というのがそもそもの目的。つまり、老いという自然現象とどう折り合いを付けていくか、ということなんです。とは言え、クレオパトラや楊貴妃などもそうであったように、若さを追求するのは古来からの人間の本筋。若くありたいということもまた、人間の自然な欲求なのです。ではなぜ、「若さ」がもてはやされるのでしょうか。
もともと日本には、古くから年配者を敬うという風潮があったので、それほど若さへの執着はなかったとされていますが、欧米では「女性の魅力=若さ」「男性の魅力=仕事の能力が高い」という考え方が根付いています。美容外科が盛んなのもそのため。
女性だけでなく男性も、就職活動のためにボトックスやヒアルロン酸注入で見た目の印象を良くしようとする人がいるぐらいですから。そうした流れを受けて、日本でもいつしか「女性の魅力=若く美しいこと」という考え方が波及していったわけです。
若さや美しさというのは、本質的に「エロス」につながります。なぜかというと、男性は本能的に自分の子孫を残すためにパートナーを選んでいるからです。これは、やや生物学者的な考え方になりますが、ちゃんと子どもを産めるかどうかで相手を選ぶということは、若さや美しさ、そしてエロスを感じさせる女性のほうが魅力的にうつる、ということなのです。
ちなみにエロスとは、ギリシャ語で「美」と同義語。エロスを意識し続け、男性を惹きつけるような魅力を持ち続けることこそ、究極のアンチエイジングと言えるでしょう。
後編では、脳とエロスの関係、エロスのある女性でいるための秘訣をお伝えします。
(文・坂井七緒美)
<後編>
「エロス」は究極のアンチエイジング! 年齢不詳の魅力を身につけよ
この記事の監修
Dクリニック東京 名誉院長
特定非営利活動法人アンチエイジングネットワーク 理事長
特定非営利活動法人創傷治癒センター 理事長
特定非営利活動法人フューチャー・メディカル・ラボラトリー 副理事長
見た目のアンチエイジング研究会 代表世話人
日本抗加齢医学会 顧問
塩谷 信幸(しおや のぶゆき)
1931年、東京都生まれ。東京大学医学部卒業。Tokyo Army Hospitalでのインターン修了後、フルブライト留学生としてアメリカに渡り、オルバーニ大学で外科を学ぶ過程で形成外科に魅了される。帰国後、東京大学形成外科勤務を経て、北里大学医学部教授(形成外科)に就任。「美容外科とは、美を求める人間の執念と、造形の魔力に憑かれた形成外科医とが織りなす矛盾をはらんだ人間模様であり、社会現象である」と、医療と美容外科の間に生じる矛盾を追及し、今もなお、美容外科をアンチエイジングという幅広い視野で捉え、各専門家が所属したNPO法人を設立し、意欲的な活動を続けている。
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