心臓の違和感はどうして起こるのか
心臓の違和感は、どうして起こるのでしょうか。実は心臓自体には、痛みを感じる神経が存在しません。では、どうして心臓が痛いと感じるのでしょうか?ちょっとした謎です。
実は、心臓に違和感を感じる理由は、心臓の周囲の部分が病気になると、その部分から発痛物質が出され、心臓の周囲に作用することで、痛みが生じるからです。
その意味でいえば、「胸のあたりが痛い」という症状を感じた場合、心臓に何らかのトラブルが発生している可能性があります。
後で詳しく解説しますが、心臓の動きには、自律神経が大きく影響しています。そのため、冷や汗をかいたり、脈が早くなる、触ると冷たいといった症状が出ている場合は、 かなりの確率で心臓のトラブルを疑いましょう。
本当にキケンなのは診察全体の3割!
MCS東京銀座クリニックでの診療データでは、「胸の痛み」の症状で救急外来に来る人で、 心臓が原因の痛みは30%程度です。残りの70%は、他の臓器からの痛みなどが原因です。そういった場合の痛みの正体は、「肋間神経痛」や、「体表面の痛み」であることが多いです。
ですから、多少の違和感であれば、それほど心配する必要はありません。
自律神経の働きが心臓疾患の重要な見極めポイント
心臓に何らかの違和感を感じても、心臓には痛覚がないため、心臓そのものの異常なのかどうかを見極めるのは、医学の知識を持ち合わせていないと困難です。
ただし、見分ける目安はあります。それは、自律神経の働きです。
心臓は、自律神経の働きで動いています。例えば、運動したり、びっくりしたような状態なら、交感神経が働き、心臓は活発に動きます。逆に、ゆっくりと安静にしていると、副交感神経が働いて心臓も動きが穏やかになります。
しかし、特に何も激しい運動をせず、心も穏やかなのに、心臓だけが勝手に早く動き始め、なんとなく胸がザワついてしまう。そういった場合は、自律神経が何らかの「心臓の異常」というシグナルを出している場合があります。
仮に心臓に異常があった場合、命に関わることになります。そのため、不安がある場合は医師の診察を受けて検査をし、病気を診断することが重要です。
本当に危ない胸の違和感や痛みはすぐに病院へ!
心臓に違和感を感じた場合、「これは危ない!ピンチだ!という、今まで経験したことがないような症状を感じるケースがあります。特に、胸の激痛(胸痛)が出た場合は、心臓に関する重病である可能性があります。また、いやな冷や汗も出ることが特徴です。
そういった症状の時、2つの疾患を発症した可能性があります。
キケンな心臓の違和感(1)心筋梗塞
心臓に酸素と栄養分を運ぶ冠動脈の中にコレステロールが溜まって動脈の内径が狭くなると、血流の流れが悪くなり、時に胸が締め付けられるような苦しみを覚えることがあります。これが「狭心症」です。
そして、何らかのきっかけで冠動脈が完全に詰まってしまうのが「心筋梗塞」です。
心筋梗塞を発症すると、酸素と栄養分を心臓に運ぶことができなくなります。そのため心臓が動かなくなったり、不整脈が出ることがあるので、まさに「命に関わる」危険性があります。高齢化社会で患者数が増加していて、がん・脳卒中と並ぶ日本人の「3大死因」の一つと言われています。
キケンな心臓の違和感(2)急性大動脈解離
心臓から出ている大動脈という太い血管に亀裂が入り、その裂け目から、血液が血管の壁を裂いて壁内に流れ込むという症状です。大動脈が裂けるときは、過去に経験したことのないような激痛が伴います。
大動脈解離には前兆らしいものがなく、発症の予測は困難とされています。
万一、胸や背中に激痛が起こった場合、迷わず救急車を呼ぶことをお勧めします。
「恋の胸キュン」には 医学的根拠がある?
例えば恋愛している時、「胸がドキドキする」というような場合があります。誰かのことを考えただけで、心臓の動悸がする、胸がきゅっと締め付けられる、そんな経験は誰にもあるものです。
こういった「恋の胸キュン」も、心臓の違和感の一つといえるでしょう。実はこれも自律神経のはたらきによるもので、医学的な根拠が存在します。
心臓と自律神経のはたらきは、密接に関連しています。「好きな人が来た」と、体が反応すると、自律神経のはたらきにより、体内からアドレナリンが放出されます。そのアドレナリンが心臓に作用することで、心臓が早く動いたり、胸のざわつきになって、胸がキュンとする感覚になるのです。
心臓の違和感は50・60代以上が多いって本当?
心筋梗塞や急性大動脈解離といった心臓のトラブルは、一般的には中高年の人に起こるというイメージがあります。確かに、年齢的にいえば、かつて心臓の疾患を発症するのは50歳や60歳以上だと言われていました。しかし近年では、喫煙の影響や、コレステロール値の高い食事、生活習慣の乱れなどなどから若い世代の人にも肥満に悩む人が増えてきています。
心筋梗塞や急性大動脈解離といった病気は、その多くが生活習慣に由来しています。そのため、20代や30代といった若い世代でも、心臓病の危険性のある人が増加し、社会的問題になってきています。
「若いからまだ大丈夫」と考えず、若い世代でも健康管理をしっかりと行いましょう。
女性は男性の10年後が危険?
心臓病の危険性が高まる年代は、男女で違いがあります。女性は、心臓の疾患が出やすくなるのが男性よりも10年ほど遅いと言われています。その原因としては、女性ホルモンが心臓を守っているという説や、男性の方がタバコを吸っていたり、不規則な生活をしているので、早く心臓疾患になりやすいといった要素が絡んでくると言われています。
ですから、女性の人も、それなりの年齢になったら、心臓疾患には注意しましょう。
心臓の違和感は、冬の季節がいちばん危険!
心臓病の危険性がもっとも高まるのは、冬の季節です。冬は、気温の寒暖差が起きやすく、血管に負担がかかるため、心臓や頭の病気にかかりやすくなると言われています。例えば、暖かい部屋から寒い風呂場に足を運ぶと、急に血圧が上がり、心臓に大きな負担がかかります。
また、冬の季節は運動不足になりがちですし、忘年会・新年会などが多く、生活習慣が乱れやすいことからも、心臓に負担がかかりやすいと言われています。
心臓はトレーニングしても鍛えられない。でも…
学生時代、運動部の部活で「心臓は鍛えられる、強くなる」と、コーチや監督から指導されていた経験はありませんか?
心臓は、体内に血液を送り出す重要な器官です。スポーツをする場合、確かに心臓の強さがパフォーマンスに直結します。
残念ながら、心臓のポンプの力自体は、どれだけトレーニングを積んでも鍛えることはできません。
しかし「部活で心臓が鍛えられる」というのは、必ずしも嘘ではありません。それは、心臓そのものは鍛えることはできませんが、心臓の周りの骨格筋を鍛えることによって、血流のめぐりを良くすることは可能だからです。
つまり、筋肉が増え、筋肉が動くようになるほど、「第2の心臓」として、血管を送り出すポンプの役割を果たしてくれるようになります。つまり、筋肉が、心肺機能をサポートしてくれるようになるのです。
心臓が強くなると言うよりは、筋肉の血流の周りがよくなるということです。特に、ふくらはぎの筋肉を鍛える事は有効とされています。
ただし、ハードなトレーニングをやりすぎると、良くないと言われています。なぜならば、アドレナリンがずっと出てしまい、心臓に負担がかかってしまうからです。
トレーニングの前後には、必ずウォーミングアップとクールダウンを行うアスリートの方が、長く健康的にスポーツを続けられると言われています。
まとめ
いかがでしたか?
心臓の違和感は、本当に危険な心臓の疾患から、恋のドキドキまで、さまざまな症状があります。心臓に違和感を感じても、あまり問題がないときもありますが、もし激しい痛みを感じるなど大きな異変があるときは、迷わず病院で診察を受けましょう。