狭心症ってどんな病気なの?
心臓の血管には「冠動脈」という動脈が、心臓の周りを“冠のように”取り巻くように存在しています。その冠動脈が病気になると、冠動脈の血流が少なくなり、心臓の筋肉に満足な酸素が供給できなくなります(心筋虚血)。心筋虚血になると心筋が機能低下し、胸が絞めつけられたり、圧迫されたりするような痛みを発する症状を発症します。それが狭心症です。
狭心症では、心臓の本体そのものに異常はなく、冠動脈の異常による症状ということがポイントです。
狭心症の原因を正しく知る
狭心症の原因は、大きく2つ存在します。
狭心症の原因(1)動脈硬化で起こる狭心症
動脈硬化は、動脈が硬化して柔軟性が失われる症状です。喫煙や肥満など不健康な生活を送っていると、内腔にコレステロールなどが溜まってプラーク化します。すると血管の内腔が狭くなり、血栓によって血管が塞がってしまい、動脈硬化が起こります。また、血管にカルシウムが沈着すると血管が石灰化し、硬くなることでも動脈硬化が発症します。
心臓を取り巻く冠動脈が動脈硬化になると冠動脈の流れが悪くなり、狭心症が起こるのです。
狭心症の原因(2)血管のれん縮で起こる狭心症
ストレスなどが原因で、冠動脈がけいれん性の収縮を起こすことがあります。この症状を「れん縮」といいます。冠動脈にれん縮が起こると血管が収縮して内腔が急に狭くなったり、ひどい場合には血管は完全に詰まってしまい、結果的に動脈硬化のような状態になって狭心症が引き起こされます。
狭心症はどんなときに起きやすいのか
狭心症が起きやすい状態は、大きく分けて2つのパターンがあります。
狭心症の症状(1)運動等がきっかけで起きる
冠動脈が動脈硬化で細くなっている場合、階段を上り下りしたり、早く歩いたりするなどの運動をした、いわゆる「労作」をしたときは要注意です。労作によって心臓が早く動いたとき、胸が圧迫されて痛みを感じたり、息切れをするなどの症状から、狭心症を発症することがあります。
狭心症の症状(2)何もしていなくても突然症状が出る
ストレスなどで冠動脈がれん縮して起きる狭心症の場合は、何もしていない安静時なのに、突然胸が圧迫されたり、冷や汗が出たりしたりします。この症状は、特に朝が多く起こるのが特徴です。朝は自律神経の交感神経と副交感神経が バランスが崩れているため、発作が起きやすいとされています。
狭心症の注意点と検査方法
狭心症の注意点は、何よりも症状を少なくする、発症させないようにすることです。
狭心症の症状が以前よりも頻繁に起きるようになった、症状が強くなってきた、時間も長くなっている…。そのような場合は、狭心症の進行し、症状が不安定化している状態です。
狭心症の症状が進むと、冠動脈がそのうち血栓によって完全に閉塞し、血流が途絶えて心筋梗塞を引き起こすおそれもあります。
狭心症の症状が不安定になってきた場合は、心筋梗塞の前兆といっても過言ではありません。その場合は、かかりつけの医師に相談し、適切な検査を行いましょう。
狭心症の診断方法(1)心電図検査
心電図検査は、狭心症の診断でもっともベーシックな検査方法です。しかし、運動をしている時に発症する狭心症の場合、安静時に心電図を取っても、異常が出ないときも少なくなく、診断の意味がありません。そういった場合は、階段を登ったり、ベルトコンベアの上を歩いたりして、ある程度運動を行って心臓に負荷をかけた上で心電図を取ることがポイントです。
また、安静時でも起こる狭心症の場合は、小さな検査装置を体に貼り付けて24時間心電図を記録する「ホルター心電図」による診断を行います。特に、家にいる朝方などに、心電図の変化がないかを調べます。
狭心症の診断方法(2)超音波検査
狭心症の診断に超音波検査を行う場合もあります。狭心症は、心臓の機能そのものは正常です。そのため、超音波検査で狭心症の異常を感知することはあまりありません。ただし、他の原因で胸の痛みが出ている場合もあるので、心臓全般の検査という意味では意味が大いにあります。
狭心症の診断方法(3)その他の検査
心電図検査や超音波検査等で異常が検出された場合は、より精密な検査を行う必要があります。その場合、冠動脈の3DCT検査や、造影剤を使用した心臓カテーテル検査などにステップアップしていきます。
狭心症の治療法はどういったものがあるの?
狭心症の治療法(1)投薬治療
狭心症の治療は、通常は投薬が第一選択です。
運動した後に起こる胸の痛みや、安静時にも起こるような胸が圧迫されるような痛みがある場合は、痛みの発作を抑える作用がある「ニトログリセリン」が処方されます。ニトログリセリンは服用すると血管を拡げる作用があり、冠動脈の血流を促進させることで胸の症状を収めます。
ニトログリセリンは、従来は錠剤でしたが、最近ではスプレータイプもあります。スプレータイプは舌下に噴霧すると数分で効果が改善されると言われています。
ニトログリセリンは運動前などにスプレーをして、狭心症の発作予防をする人もいます。
狭心症の治療法(2)心臓カテーテル治療
心臓カテーテル検査は、足の付け根や手首、ひじなどの動脈から、直径2ミリ程度の「カテーテル」と呼ばれる細い管を差し込み、冠動脈を検査します。この検査法を応用し、冠動脈にカテーテルで極小の風船を送り込んで膨らませ、狭くなった血管部分を押し広げる治療法が心臓カテーテル治療です。内服薬と心臓カテーテル治療の予後はあまり変わりません。
心臓カテーテル治療は、内服薬だけで痛みをコントロールできない患者さんの場合に用いられる治療法です。
狭心症になりやすい危険因子
動脈硬化による狭心症の場合、危険因子は4つあります。それぞれを解説します。
狭心症になりやすい危険因子(1)高コレステロール
動脈硬化でもっとも危険な要素がコレステロールです。血中のコレステロール成分が多くなり過ぎると、血管の壁のなかに余分なコレステロールがたまり、固まったコレステロールがプラークとなって血管内で大きくなり、冠動脈の内腔を狭くします。
狭心症になりやすい危険因子(2)高血圧
心臓は収縮するとき強い力が必要とします。血圧が高いと、血管の内部に加わる圧力がより高くなります。すると血管の壁が痛みやすくなり、動脈硬化の引き金になる可能性があります。
狭心症になりやすい危険因子(3)糖尿病
糖尿病は、狭心症の合併症として知られています。血糖値が高い状態が続くと、血管がボロボロになる「血管病」を患うリスクが高くなります。血管病になると血管の健康が損なわれ、動脈硬化を引き起こし、さらにその先に狭心症の発症も控えています。
狭心症になりやすい危険因子(4)喫煙
喫煙が生活習慣病の大敵であることがご存知の通りです。喫煙をすると、血管の内側を損傷する活性酸素が多く作られたり、ニコチンが交感神経系を亢進して血管を収縮させたりするなど、血管の健康を損なうリスクが何重にも高くなります。喫煙が原因で引き起こされる狭心症は、「タバコ狭心症」とも呼ばれています。
狭心症を予防するためにはどうしたらいいか
狭心症の予防は、ほぼ生活習慣病の予防と重なります。日頃の生活を正し、生活習慣病リスクを改善しましょう。
狭心症を予防する方法(1)正しい生活習慣を送る
運動不足など、いわゆる生活習慣の乱れは生活習慣病まっしぐらの道です。自律神経をコントロールするためにも、適度な運動を心がけましょう。
特に有効なのが、脂肪を消費し、体脂肪の減少や高血圧の改善が期待できる有酸素運動です。散歩やストレッチといった「無理せず長続きできる」運動が好ましいといえます。
狭心症を予防する方法(2)ストレスをためない
前段で解説した通り、何もしていなくても突然症状が出る狭心症は、ストレスなどで冠動脈がれん縮して起きるものです。この症状は、特に朝が多く起こるのが特徴です。ストレスをなるべくためず、適度に発散させるように努めましょう。
狭心症を予防する方法(3)質の良い睡眠をとる
自律神経をコントロールするためにも、質の良い睡眠をとりましょう。最低でも6時間、理想は7時間くらいで、 次の日に負担がかからない睡眠をとることが大切です。 お昼寝も効果があると言われています。
狭心症を予防する方法(4)栄養バランスの良い食事をとる
狭心症は血管の病気です。当然、食事から接種される栄養が、血管の健康状態に密接に関わってきます。
狭心症予防で心掛けたい食事は、野菜から食物繊維やキノコ類からビタミン・ミネラルを補うことを前提に、糖質控えめで低脂質、減塩などです。青魚を食事に取り入れると、タンパク質や、良質な脂質も摂取できるのでおすすめです。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、狭心症の原因や症状、その対策などについて解説しました。狭心症は、生活習慣病の代表的な病気の一つです。狭心症の症状が悪化すると、心筋梗塞はもちろん、他の生活習慣病を誘発する引き金にもなります。
狭心症は、多くの場合は日頃の健康管理などである程度の予防が可能な病気です。いずれにしても、健康に不安を感じたら、自己判断せずに医師の診察を受けましょう。