アルコール依存症とは何か?
アルコール依存症は、いわゆる薬物中毒の一種です。お酒(アルコール)の飲み方を自分自身でコントロールできなくなり、お酒を絶つことができなくなります。
アルコールは麻薬と同じ薬物(ドラッグ)に相当し、身体依存を引き起こします。いちど依存症になると、体の方が欲してしまって、やめようと思っても断ち切ることが本当に難しい。お酒は、付き合い方を誤ると危険なドラッグになる存在なのです。
どうしてアルコール依存症になるの?
アルコールを飲むことで気分が良くなるのは、脳内の「報酬系」と呼ばれる神経系が活性化するためと考えられています。その中心的な役割を果たしているのは、「幸せホルモン」とも「快感ホルモン」とも呼ばれる脳内ホルモンのドパミンです。アルコールを摂取するとこのドパミンが活発になるため、気分が高まり、気持ち良くなるのです。
麻薬や覚せい剤などのドラッグの多くにもドパミンを活発にする作用があります。アルコール依存症とドラッグの依存症は、メカニズムとしては同じなのです。
アルコール依存症になるとどうなるのか
アルコール依存症の入り口は、習慣的な飲酒です。飲酒が習慣化すると、体内でアルコールに対する耐性が形成されます。いわゆる「酒が強くなる」状態がそれにあたります。そして酒量が少しずつ増加していきます。
最初に始まる依存症の症状は、精神依存です。「酒がないと物足りない」と感じるようになります。それが常態化し、長期間の飲酒を続けていると、身体依存が出現します。
身体依存とは、アルコールが切れると身体的な症状が出ることです。アルコールの摂取をやめると、不眠や発汗、手のふるえ、不安感やイライラが募るなど、ものすごく不快な症状が出るようになります。これを「離脱症状」と言います。
この離脱症状を抑えるために連続飲酒という悪循環が起こります。そして、そんな状態が続くうちに、アルコールが自分の生活と切っても切れない関係になっていってしまうのです。
アルコール依存症の危険因子
アルコール依存症の危険因子は、厚生労働省の情報によると5つあります。
アルコールが好きな人で、この5つに該当する場合は、依存症に注意しましょう。
(1)女性の方が男性より短い期間で依存症になる
(2)未成年から飲酒を始めるとより依存症になりやすい
(3)遺伝や家庭環境が危険性を高める
(4)家族や友人のお酒に対する態度や地域の環境も未成年者の飲酒問題の原因となる
(5)うつ病や不安障害などの精神疾患も依存症の危険性を高める
(参考URL) 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト「e-ヘルスネット」
どれぐらいお酒を飲んだらアルコール依存症になるの?
お酒好きな人はどれくらいのお酒を飲んだら、アルコール依存症になる危険性があるのでしょうか。お酒好きなら、誰でも気になるところでしょう。しかし、その「限界値」には個人差があり、明確な定義は存在しません。「毎日お酒を飲んでいれば依存症」というわけでもありません。
依存症は「やめなければいけない状況なのに、やめることができない」症状です。そして、会社や家族など、いろいろなところでお酒がもとで問題を起こしたり迷惑をかけるようになったとき、依存症が露呈されるのです。
「酒癖が悪い」と「アルコール依存症」は別のもの
皆さんの周りにも、いわゆる「酒癖が悪い」人はいませんでしょうか。へべれけになって人に迷惑をかけてしまった。お酒が好きな人なら、誰でも一度や二度はそんな経験があるのではないでしょうか。しかし、お酒の酩酊状態と依存症は、必ずしもイコールではありません。また、酒を飲んで暴れたり、ケンカになる人もいますが、そういう人はただの「酒乱」であり「酩酊の異常」です。
酒癖の悪い人は、お酒を飲まない日常生活を普通に送ることができます。しかしアルコール依存症の人は、常にお酒を飲まないと身体依存の症状が出現し、まともな日常生活が送れなくなるのです。
「ブラックアウト」は依存症の危険信号!
酒癖が悪い人は、必ずしもアルコール依存症ではありません。とはいえ、酒癖が悪かったり酒乱の人は、飲酒時のアルコール摂取量が多いことが考えられます。酩酊状態がひどくなると前後不覚になり、ひどい時は記憶を失ってしまう場合があります。
お酒に酔って記憶を無くすことを「ブラックアウト」といいます。ブラックアウトを起こす人は少なくありません。飲酒時にブラックアウトを毎回のように起こすようになってくると、それは依存症への道を着実に進んでいる危険信号と思われます。
ブラックアウトを起こすような人は、本格的なアルコール依存症を発症する前に、飲酒にブレーキをかける必要があります。
アルコール依存症から他の病気を併発することも!
アルコール依存症には、さまざまな病気を併発させるリスクを高めるという問題もあります。
真っ先に想定されるのが、肝臓へのダメージです。それがエスカレートすると肝硬変になり、回復が困難な状態に陥る場合もあります。
アルコールが原因で肝硬変になると、今後は肝がんの発症リスクも高くなります。
お酒が好きな人の多くは、ものを食べないでひたすらお酒を飲む傾向があります。そういった飲酒スタイルは、ビタミンの欠乏で脳を痛め、アルコール性の脳障害を発症するケースも珍しくありません。
また、アルコールの過剰摂取は慢性膵炎につながり、命に関わるような状態になってしまうことも多々あります。
アルコール依存症でなくても、飲酒は適量にとどめることが、健康の鉄則なのです。
アルコール依存症の治療法
アルコール依存症は、「お酒を体内に入れない」ことが唯一の治療法です。ここで重要なのは「酒量を抑える」ではなく「1滴も飲んではいけない」ということです。
前段でも説明したように、アルコールは脳内の「報酬系」と呼ばれる神経系が活性化する「ドラッグ」です。「少しくらいならいいだろう」と飲んだが最後、連続飲酒が始まります。ですから、おちょこ1杯のお酒でも、一升瓶を飲むのと同じことになるのです。
せっかくお酒をやめて普通の生活に戻っていた人が、たった1杯を飲んでしまったがために、振り出しに戻ってしまう。そんな事例は多々あります。飲酒の誘惑を断ち切るのは、ものすごく大変なことなのです。
抗酒薬はアルコール依存症治療に有効?
アルコール依存症の治療に使用されるお薬としては「抗酒薬」があります。これは、ある程度服用した状態でアルコールが体内に入ると、大変な悪酔いのような状態になり、体調が非常に悪くなる薬です。「そんな薬を使っているほどだから、お酒を飲んだら死ぬかもしれない」。それくらいの強い意志を持った上でお薬を飲んでいただく必要があります。
抗酒薬は、よくご家族が勘違いして「本人に黙って内緒で飲ませたい」という申し出がありますが、依存症の人が抗酒薬を服用していることを知らないでお酒を飲んだら、大変なことになります。
「お酒を飲みたくなくなるお薬」があればいいのですが、残念ながらそれはまだ開発されていません。
「断酒会」などで支え合う
アルコール依存症の人が、お酒を断る。それは簡単なようで、非常に大変なことです。余程の強い意志で臨む必要があります。
とはいえ、その意思を1人だけで継続できるほど人は強くありません。そのため、依存症の当事者同士で支えあう「自助グループ」が存在します。そういったところに参加するのも、一つの手段です。
断酒会
1950年代に始まった、日本の自助グループです。全国に500以上のグループがあり、1万人程度の会員数がいるといわれています。集まった人がそれぞれ酒害体験を話し、それを全員で聞きます。家族も参加が可能です。
アルコホーリクス・アノニマス(AA)
世界組織で、1970年代に日本に導入されました。都市部を中心に約500の支部があるとされます。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、アルコール依存症について解説しました。
アルコール依存症は、いわゆるドラッグ中毒の一つです。いちどアルコール依存症になってしまうと、お酒なしでは生活できなくなり、人生がメチャクチャになりかねない恐ろしいリスクを抱えることになります。
アルコール依存症にならないよう、ほどほどのお酒で健康的な人生を送りましょう。