男性更年期障害とは何か?
女性の更年期障害はよく聞く症状ですが、男性更年期障害とは何なのでしょうか。
男性更年期障害とは、簡単にいえば、女性の更年期とは異なるものですが、それに似た症状が40代以降の男性に見られる症状です。
男性更年期障害が起こる原因
男性更年期障害が起こる原因は、代表的な男性ホルモンである「テストステロン」が減少することで起こります。
テストステロンは、男性の精巣で作られる男性ホルモンです。テストステロンは男性の心や体、声などを作る男性ホルモンで、いわゆる「男性らしさ」を健康的に形作る上で、非常に大きな役割を担っています。
このテストステロンの数値(テストステロン値)が下がってくると、心や体などさまざまな分野に悪影響が生じます。それによって発生する症状が、男性更年期障害なのです。
この症状は、加齢性腺機能低下症(LOH症候群)ともいわれます。
ある調査によれば、全国に600万人ほどの男性更年期障害の患者がいるといわれています。
男性ホルモン「テストステロン」の役割
テストステロンは、かつて原始時代、狩猟に必要な判断力や行動力、筋力などの源泉になったホルモンです。
また狩猟には集団の中での協調性や闘争心なども必要で、こういった社会性もテストステロンの役割とされています。そのためテストステロンは「社会性ホルモン」とも呼ばれています。
テストステロン値が高い人、低い人
テストステロン値が高い人は、精神的には積極的だったり、意欲的だったりと、いわゆるポジティブで活発な人が多い傾向があります。性的な欲求もあります。また、同じ運動をしていても、筋肉が付きやすく、太りにくいなどの特徴が挙げられます。
逆に、テストステロン値が低い状態が続くと、やる気を失ったり、考え方がネガティブになる傾向にあります。性的な面でも弱くなり、重症化するとED(勃起不全)になります。また、筋肉が付きにくくなって、太りやすくなる傾向にあります。
特に高齢者の場合、記憶力の低下や筋力の低下、骨粗しょう症、夜間頻尿などの症状が出ることがあり、日常生活に支障をきたすので注意が必要です。
テストステロン値が下がると、男性のさまざまな部分に影響が現れるといわれています。その中でも大きなものは「心」と「体」、そして「性機能」の3つです。
テストステロン値が下がると現れる心の症状
テストステロン値が下がると、以下のような心の症状が現れます。
・イライラする
・神経質になる
・落ち込みがちになる
・記憶力が低下する
・意欲を失う
・集中力の低下
テストステロン値が下がると現れる体の症状
テストステロン値が下がると、以下のような体の症状が現れます。
・体が火照る
・汗がよく出る
・筋肉や関節が痛くなる
・体の疲れが取れにくくなる
・なかなか寝付けなくなる
・筋肉がつきにくく太りやすくなる
・骨粗鬆症
・筋力の低下
・糖尿病、高脂血症
テストステロン値が下がると現れる性機能の症状
テストステロン値が下がると、以下のような性機能の症状が現れます。
・ED(勃起不全)になる
・性的欲求が減少する
・早朝勃起(朝勃ち)が減少する
・夜間頻尿
男性更年期障害の症状は、うつ病と同じ?
イライラしたり気分が落ち込むといった男性更年期障害の症状は、うつ病の症状とよく似ているものです。そのため、男性更年期障害なのか、うつ病なのか、判断しかねるケースが少なくありません。
また、どちらか一方だけではなく、男性更年期障害とうつ病の両方を発症しているケースも存在します。
いずれにしろ、「やる気が出ない」「イライラする」といった症状に悩まされている場合は、医師の診察を受けることをお勧めします。
なぜ男性更年期障害になるとED(勃起不全)になりやすいのか?
勃起は、ペニスに血液が大量に集まり、その圧力によって起こる現象です。
人間の血管機能は、加齢に伴って衰えが進行します。それには男性の場合、男性ホルモンが大きく関わっているとされます。つまり、テストステロン値が低下することで男性更年期障害の症状が進んでいる場合、同時に血管の老化も進んでいると考えられるのです。そして勃起も、それに伴って起きづらくなるというわけです。
男性の場合、血管の老化は42歳位から目立ち始めるとされています。EDの症状を訴える男性も、同様に40歳を超える時期から増加する傾向にあります。
また、そもそも男性更年期障害になると、性的な欲求が減退することも、ED(勃起不全)に大きく影響することになります。
男性はテストステロン値が高い方が健康なの?
代表的な男性ホルモンであるテストステロン。このテストステロン値が減少することで、男性更年期障害が発症します。
実は、男性はテストステロン値が高い方が健康的な生き方ができ、長生きするという報告があります。
長寿社会において、ただ長く生きるだけではなく「健康的に長く生きる」ことが非常に重要です。そのためには、テストステロン値を高く維持することが、長い人生を健康的かつアクティブに生きる秘けつだと言うことができます。
ですから、テストステロンは「長生きホルモン」と呼ばれることもあります。
テストステロン値を高める方法
テストステロン値を高めることは、男性の健康的な生活に欠かせないことです。では、テストステロン値を高めるためには、どうすればいいのでしょうか。それには、治療による補充と、生活習慣の改善、そして「自分の居場所を作る」という3つの方法があります。
テストステロン値を高める方法(1)テストステロン補充療法
テストステロンそのものを、治療によって外から体の中に取り入れる方法は「テストステロン補充療法」と呼ばれています。その具体的な方法としては、経口剤(飲み薬)、注射剤、皮膚吸収剤(クリーム)があります。注射剤を筋肉注射するのがもっとも一般的で、早い人では治療直後から効果が現れます。
テストステロン補充療法は、2〜3週間に1回通院し、およそ3か月ごとに効果判定を行なって治療成果を評価し、治療する期間などを話し合って決めます。
テストステロン補充療法は、前立腺がんなどの疑いがある場合は、治療を行うことができません。また、睡眠時無呼吸症候群、重症化した前立腺肥大症などを患っている場合も、治療できないケースがあります。
テストステロン値を高める方法(2)生活習慣の改善
日常生活の中でも、生活習慣を改善することでテストステロン値を上げることが可能です。
それには、3つのことが重要とされています。
①栄養バランスの良い食事を摂取する
②質の高い睡眠を十分取る
③適切な運動習慣を作る
この3つの要素は、質の高い生活習慣の前提ともいえるものです。単にテストステロン値を上げるだけでなく、健康的な生活を送る上での必須事項と言えるでしょう。
テストステロン値を高める方法(3)自分の居場所を作る
実は、テストステロン値を高める上で、非常に大切なことは「自分の居場所を作る」ことだと言われています。
前の段落でも説明したように、テストステロンは「社会性ホルモン」という別名があるほど、男性の社会的な要素に関与しています。実際、誰かに認めてもらったり、褒めてもらったりすると、テストステロン値は上昇します。逆に、定年退職や独居などで社会や家庭の中で居場所がなくなった人は、その孤独感や喪失感から、分泌量が減ってしまうといわれています。
自分に合った心地よい居場所を作り、仲間と励ましあって一つの目標に向けて行動を起こすことで、テストステロン値を高めることができるのです。
テストステロン値の測定方法
テストステロン値は血液検査で分かる
テストステロン値は、クリニックや病院で受診できる血液検査で測ることが可能です。
一般的には、男性のテストステロンは、20代をピークに下り坂になり、減少傾向になるとされています。またテストステロン値には個人差もあります。年齢に応じたテストステロン値から、治療の判断を行うことが大切です。
男性更年期障害のセルフチェック方法
男性更年期障害をセルフチェックするには、「AMSスコア(加齢男性症状調査表)」という質問表を活用します。
AMSスコアの設問に自身で回答することで、ある程度、更年期障害かどうかを確認することができます。
AMSスコアには、「総合的に調子が思わしくない」や「いらいらする」、「性的能力の衰え」など、心や体の変調に関する17項目の設問が用意されています。
それぞれの設問に「なし(1点)」、「軽い(2点)」、「中等度(3点)」、「重い(4点)」、「非常に重い(5点)」のスコアが用意され、その点数を合計した点数が診断結果となります。
そして、点数が低いほど男性更年期障害のリスクが低く、点数が高いほど男性更年期障害のリスクが高いと診断されます。
AMSスコアによる男性更年期症候群の目安は、おおよそ以下の通りです。
17〜26点:男性更年期障害ではない
27〜36点:軽度の男性更年期障害の可能性がある
37〜49点:中等度の男性更年期障害の可能性がある
50点以上:重度の男性更年期障害の可能性がある
この目安から判断すると、27点以上の場合、男性更年期の可能性があるため、病院で診察を受けることをお勧めします。
まとめ
いかがでしたか?
男性更年期障害は、男性ホルモンのテストステロンが減少することで発症する症状です。いわゆる直接的に生死に関わるような病気ではありません。しかし、男性が生き生きと前向きに生きていくには、何らかの対策をたてて克服することをお勧めします。
男性更年期障害の症状を疑ったら、一人で悩むことなく、まずは医師に相談しましょう。