中年男性を襲う「男性更年期障害」とは?EDとの関連性は?
男性は年齢を重ねて身体機能が衰え始めると、男性ホルモンであるテストステロンの減少によって、さまざまな体調の不調が出現します。この症状は「男性更年期障害」と呼ばれ、40歳以降の男性に起こりやすくなるとされています。なお正式には、加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)という名称があります。
男性更年期障害は、その言葉の通り、男性版の更年期です。女性の更年期は急速に症状が悪化するのに対し、男性更年期障害はゆるやかに症状が出てくることが特徴です。ただし女性の更年期は、閉経後の5年ほどで落ち着くのに対し、男性のそれは進行こそ緩やかですが、終わりはありません。
男性更年期障害には、関節症や体の火照り、イライラなどさまざまな症状があります。その中に、ED(勃起不全)も含まれています。
つまり、EDの症状が出ているということは、男性更年期障害の症状が出ている可能性が高いのです。
■男性更年期障害の主な症状
【身体症状】
関節痛、筋肉痛、疲労感、倦怠感、
発汗、ほてり、肥満、頻尿
【精神症状】
イライラ、不安、パニック、うつ症状、
不眠症、やる気の低下、集中力の低下
【性機能症状】
ED(勃起不全)、性欲減退
EDの原因は男性更年期障害による血管の衰え?
男性は40代以降になると男性更年期障害のリスクが高くなり、その症状の一つとして、ED(勃起不全)になるケースが多いと説明しました。日本では、実に約600万人の男性が、この症状に悩まされていると言われています。次は、EDについての知識をおさらいしましょう。
そもそもEDとは何か?
そもそも、EDとはどんな症状を指すものなのでしょうか。
EDとは、英語のErectile Dysfunctionを略した言葉です。日本語に訳すと「勃起が機能しなくなる=勃起不全」ということです。
性交を行う上で、充分な勃起が得られない。もしくは、その状態を維持できない。そういった状態を、ED(勃起不全)と呼んでいます。
勃起の持続には個人差があります。しかし、一般的には30%の確率で勃起できない場合、EDの状態にあると判断されています。
EDは加齢に伴って起きやすくなる
加齢に伴って、勃起力は低下していきます。その下降線が一定ラインまで行き着くと、EDと診断されます。
では、EDの原因は何なのでしょうか。EDの原因には、精神的なストレス等に起因するものもありますが、多くは「加齢に伴う血管の衰え(老化)」が、EDを引き起こしているとされています。
勃起は、陰茎(ペニス)の血管に、たくさんの血液が流れ込んで起こる現象です。血管が年老いてくると、勃起が保てなくなったり、十分な硬さが得られなくなるというわけです。
人間の血管は何歳くらいから衰える?
全身の血管は、大体、同じスピードで老化が進んでいくと考えられています。そして男性の場合、男性ホルモンの低下が血管の健康にも大きく関わっています。つまり、男性更年期障害の症状が出ている場合、血管の老化も進んでいると考えられるのです。
男性更年期障害の症状の一つとしてEDが挙げられるのは、そのようなメカニズムがあるからなのです。
男性の場合、血管の老化は42歳位から目立ち始めるとされ、同じようにEDの症状を訴える男性も増加します。
EDの人は動脈硬化のリスクが高い!そのメカニズムとは?
42歳ごろを境に、男性更年期障害によって衰えが目立ち始めるとされる、男性の血管機能。その進行に比例して、EDの症状も進行します。
先ほども説明した通り、全身の血管は、おおよそ同じスピードで老化が進んでいくと考えられています。つまり男性更年期障害が進むと、EDだけでなく、全身の血管にまつわる病気のリスクが高まることを意味するのです。
そこで心配になるのが、心臓や脳の血管の老化によって発生する「動脈硬化」です。動脈が衰えると、血液の通り道が狭くなったり、血栓ができやすくなります。そして、ある日血管が詰まってしまい、心筋梗塞や脳卒中といった大きな病気を誘発することになります。
動脈硬化は血管の内部に起こる症状なので、外からは分かりにくいものです。そもそも、自覚症状はないに等しいので、知らず知らずに血管老化して、動脈硬化のリスクが高まっている人は少なくありません。
血管の老化はペニスに現れる
血管の老化が分かりやすく自覚症として現れる数少ない部位が、ペニスなのです。
血管の老化によってペニスが勃起しなくなるということは、全身の血管も同様に衰えてきていることを意味します。
つまり、EDの症状があるということは、動脈硬化のリスクを見定める指標の1つになると言えるのです。
自分で血管の衰えを確認する方法。それは「朝立ち」!
老化による血管の衰えは、残念ながら自覚症状がほとんどありません。そのため、知らず知らずのうちに動脈硬化のリスクが増大していきます。
では、自分で血管の衰えを確認する方法はないのでしょうか? 実は、あります。それが男性の「朝立ち」なのです!
そもそも「朝立ち」ってなんなの?
朝になると、股間がムズムズしている。そして股間を確認すると、ペニスが元気になっている…。目覚めると、無意識のうちに勃起している。それが男性の「早朝勃起(朝立ち)」です。さて、そもそも「朝立ち」って、何なのでしょうか。
実は男性は、入眠中に自律神経が乱れて、何度かの勃起を繰り返しています。この症状は「夜間睡眠時勃起」(nocturnal penile tumescence、NPT)と呼ばれています。そして、勃起したその状態で目が覚めたときが、早朝勃起(朝立ち)という現象です。
夜間睡眠時勃起は入眠中に繰り返して起こるものですが、その回数は、加齢に伴って回数が減ってきます。それはすなわち、血管の老化が進行しているサインの1つと言っていいでしょう。
早朝勃起の頻度と血管の老化について、具体的な物差しはありません。しかし、40代以上の男性であれば、「週に1回、早朝勃起があれば健康体」という状態が、1つの目安といえるでしょう。
ED治療にはED治療薬が有効
では、男性更年期障害でEDになってしまった場合、どんな治療法があるのでしょうか?
男性更年期障害は、男性ホルモンのテストステロンの分泌が低下して起こる症状です。
実は、テストステロンにも勃起に関わる働きがあります。ですから、テストステロンの減少を防ぐ治療も、勃起の改善につながります。しかしそれよりも、一番は、血管をお薬によって若返らせることが大事になってきます。
血管の拡張するED治療薬
通常、ED治療薬は「ホスホジェステラーゼ5阻害薬」という飲み薬を服用し、血管を開きやすい状態にすることで、EDの治療を行うことが一般的です。
人間の血管には、血管弛緩作用のある「サイクリックGMP」という物質があります。しかし加齢に伴って、そのサイクリックGMPのはたらきを阻害する「ホスホジェステラーゼ5」という物質が増加し、血管を老化に追い込みます。
「ホスホジェステラーゼ5阻害薬」は、その名前の通り、ホスホジェステラーゼ5のはたらきを阻害。血管が広がって血流が多くなることで、勃起不全を改善し、EDの治療を行うものです。
ED治療薬の種類にはどんなものがあるのか
ED治療薬には、ジェネリック医薬品としては
・「タダラフィル」
・「シルデナフィル」
・「バルデナフィル」
の3種類が知られています。
どのお薬も、ホスホジェステラーゼ5阻害薬としてのメカニズムは同じです。ただし、開発された順番や、食事と一緒に服用しても効果が落ちない、効果の持続時間などに違いがあったりします。
「どれが優れている」という判断よりも、体質との相性もあるので「どのお薬がその人に合っているのか」を、医師と相談の上、服用して試して見ることをお勧めします。
なお、これらのED治療薬は医療用医薬品(処方薬)です。EDの治療を謳っているクリニックや泌尿器科で医師の診察を受け、処方箋を出してもらう必要があります。
ED治療薬の副作用は?
ED治療薬は、血管に働きかけるお薬です。本来はペニスの血管にだけ働くように作られていますが、それでも服薬なので、お薬の成分は全身の血管に回り、ペニス以外の血管にも影響を及ぼす場合もあります。
そのため、一部の心臓に持病のある方や、心臓疾患などのお薬を飲まれている方は使用ができません。また、体が火照る、頭痛や目の充血、鼻づまりといった副作用が現れるケースもあります。
ED治療薬は誰にでも効果がある?
ED治療薬は誰にでも効果があるのかと言われたら、残念ながらそれは違います。現在、ED治療薬で治療しても、3割の人には効果が認められないとの報告結果が出ています。
ただし、ED薬にはジェネリックとして「タダラフィル」「シルデナフィル」「バルデナフィル」の3種類があるので、薬をそれぞれ試してみて、自分に合うものを探すのが一般的です。
それでも治療効果が認められない場合は、お薬以外の治療方法を検討することになります。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、ED(勃起不全)と動脈硬化リスクとの関係性について解説しました。
血管の老化は自覚症状がほとんどないため、男性の「朝立ち」が一つの健康のバロメーターになります。週に1回の朝立ちがない場合、動脈硬化リスクに気をつけましょう。
また、EDの治療には専用のED治療薬があるので、まずは服薬治療を行うことになります。
いずれにしても、健康やEDに不安を感じたら、まずは自己判断せずに医師の診察を受けましょう。