髪が増える!ミノキシジルとはどんなお薬なのか
薄毛に悩む世の男性にとって、「ミノキシジル」はまさに救世主的な発毛薬として知られる存在です。
「ミノキシジル」は薬自体の名前ではなく、医薬品成分の名前です。アメリカのアップジョン社(現Johnson&Johnson社)が開発し、1979年から使用が始まりました。
元々は、高血圧症の治療薬成分として開発されましたが、使用した人に多毛の症状が認められました。そして、薄毛治療薬の成分としても開発が進められたのです。1988年にアメリカで薄毛治療に関する有用性が確認されました。
現在では、外用薬(塗り薬)として世界90ヵ国以上で販売されています。
ミノキシジルの発毛メカニズム
ミノキシジルは、どのようなメカニズムで発問を促進し、薄毛の治療につながるのでしょうか。
Dクリニック東京の脇坂長興先生によると、そのポイントは「毛乳頭細胞が増殖」にあるといいます。
髪の毛は、毛先から伸びるわけではなく、頭皮に埋まっている根っこの部分(毛根)で作られ伸びていきます。
髪の元になっている細胞を「毛の母」と書いて「毛母細胞」と呼んでいます。
そして、血液を経由して栄養を運び、毛母細胞の増殖を手助けする細胞を「毛乳頭細胞」と呼んでいます。
毛乳頭は、毛根のいちばん根の部分にある、膨れた形をしている部分です。
そこにある細胞が毛乳頭細胞です。
ミノキシジルは、毛母細胞のはたらきを活性化させる毛乳頭細胞の数を増殖する作用があります。
「毛乳頭細胞が増えると、毛乳頭細胞には血液からより多くの栄養をもらいます。その栄養を毛母細胞に渡すことによって、より速く、太い髪が成長することができるということなのです。」(脇坂先生)
ミノキシジルは「育毛剤」ではなく「発毛剤」!
脇坂先生は、「育毛剤」と「発毛剤」の違いにも言及します。
育毛剤と発毛剤を混同している人も少なくありませんが、この2つには明確な違いがあります。
育毛剤は、いま生えている髪のコンディションを維持して守るためのもので、髪を生やす作用はありません。
それに対して発毛剤は、毛根を活性化させることにより、髪を早く、太く伸ばすことができます。
脇坂先生によれば、ミノキシジルは「発毛効果のある、現在では唯一の発毛剤」の存在なのです。
薄毛にお悩みの方には、ミノキシジルの存在は大変な朗報だといえます。
ミノキシジルの効果実感には数ヶ月が必要
では、ミノキシジルは使用してからどれくらいの期間で効果が出るのでしょうか。
実は、ミノキシジルの効果は使用した直後から出ていますが、毛根は頭皮に埋まっているのでその効果をすぐに目で見ることはできません。
2週間ほど経過すると、抜け毛が少し増えるそうです。しかし、不安を感じる必要はありません。
脇坂先生によれば、この抜け毛は「新しい髪が毛根の奥から生えることにより、古い髪を押し出すことで起きる現象です」とのことです。
古い髪が抜けて、徐々に新しい髪が生えてくるようになり、だいたい2ヶ月半〜3ヶ月後には、発毛を実感できるようになると言われています。
毛根が委縮してしまった方には発毛効果がない
薄毛の人への福音ともいえるミノキシジルですが、毛根が完全に萎縮した人には、残念ながら効果がないということです。
「ミノキシジルの発毛作用は、毛乳頭細胞を増殖させることで発揮されます。毛根が完全に萎縮してしまっていると、すでに毛乳頭細胞が死んでしまっているので、残念ながら効果が期待できません。レーザー脱毛をすると、毛根が完全に破壊され、永久に毛が生えてこなくなります。それと同じです。」(脇坂先生)
では、毛根が完全に萎縮した人は発毛を諦めなければならないのでしょうか?
脇坂先生はこのように解説します。
「毛根が萎縮してしまうと、お薬で髪の毛を増やすことは、現在の医療技術では難しいと言わざるを得ません。その代わり、実用的な増毛の手段としては、髪が生えている部分から薄い部分に移植する『植毛』があります。また、将来的には再生医療で毛根を作り、それを頭部に移植するという技術が実用化されると思います。」(脇坂先生)
ミノキシジルは体がむくみやすくなる?
脇坂先生によれば、「ミノキシジルは、正しい使用法を守っている限り、副作用リスクは少ない」とのことです。
それを踏まえて、ミノキシジルの副作用リスクとしては「体がむくみやすくなる」ことが挙げられます。
それは、ミノキシジルがもともと、高血圧症の治療薬成分として開発されたことに由来しています。
脇坂先生は「高血圧症の治療薬は、血管を広げて血圧を下げる降圧作用があります。血圧を下げるわけですから、その結果、手足などの体がむくみやすくなるのです」と、解説します。
「一般的に出回っている発毛剤としてのミノキシジルは、外用薬(塗り薬)です。外用薬で、大きなむくみが出るということは、まずありません。」(脇坂先生)
ミノキシジルは、もともと高血圧の治療薬として開発されたものであり、対象は高齢者です。
「高齢の方々が毎日服用することが前提で作られたお薬なので、過度な心配はせず、そういった副作用情報は“参考程度”に聞いていただければいいと思います。」と、脇坂先生はアドバイスします。
また、脇坂先生によれば、ミノキシジルの血圧降下作用の副作用として、体のむくみ以外にも頭痛が起きる場合もあるそうです。
「その場合、頭痛薬を使用してももちろん大丈夫です。ただし、偏頭痛などをもともとお持ちの方は、慎重にお使いください。」(脇坂先生)
ミノキシジルはAGAの進行を止めるわけではない!
AGAをはじめとする薄毛の治療薬であるミノキシジル。
しかし、脇坂先生は「ミノキシジルは、AGAの進行を止める作用はありません」と、言います。
これは一体、どういうことなのでしょうか。
脇坂先生は、それを野球やアメリカンフットボールのゲームに例えて解説します。
「野球やアメリカンフットボールのゲームでは、2つのチームが『オフェンス』(攻撃)と『ディフェンス』(防御)の2つに明確に分かれます。それと同じで、ミノキシジルには発毛を促すという『オフェンス』の作用はありますが、AGAの進行を食い止める『ディフェンス』の作用はありません」。ミノキシジルは、髪を生やすための発毛剤ですから「抜けていく髪に対しては何の関係性もないわけです。坂道を落ちていくのを止める薬ではなく、坂道を登るためのお薬なんです。」(脇坂先生)
ミノキシジルは、AGAの進行を抑制するわけではありません。
しかし、発毛を促すことで、結果的にAGAの抑制につながっているということになります。「登れば落ちない」ということです。
フィナステリドとの併用でAGA治療が最強に!
一方で、いわゆる「ディフェンス」に当たるAGA治療薬成分も存在します。
それは「フィナステリド」そして、「デュタステリド」です。
この2つの医薬品成分は、薄毛の原因となる5aリダクターゼという酵素の働きを阻害することで、衰えていた毛母細胞のはたらきを正常に戻す作用があります。
つまり、積極的な発毛作用はありませんが、直接的にAGAの進行を抑える「ディフェンス的な作用」があるのです。
脇坂先生は「オフェンスのミノキシジル、ディフェンスの「フィナステリド(またはデュタステリド)」を併用することで、より良いAGA治療の成果を導くことが期待できます」と、言います。
医師の適切な指導のもと、可能であればミノキシジルとフィナステリド(またはデュタステリド)を併用できれば、AGA治療としては最強だと言えるのです。
まとめ
ミノキシジルは、AGAをはじめとする薄毛の治療薬として非常に有用な存在です。
もし薄毛に悩んでいるなら、迷わず治療に 使うことをお勧めします。