この記事を書いた人
藤村 岳
一時期、同じプロジェクトで仕事をしていた知人が先頃、退職をしました。体調不良が重なってという理由。詳細はあえて聞きませんでしたが、化学物質を多く扱う職業に就いていたので、症状を聞いているとどうもそのことと関係があるのかも、と。そこで今回は、最近にわかに注目されてきた現代病の「化学物質過敏症」について考えてみましょう。
化学物質過敏症は「化学物質に大量に接触、または微量でも持続的に接触した後、同じ物質に再接触した場合に起こるさまざまな症状」のこと。その原因は殺虫剤や除草剤などに含まれる化学物質をはじめとして、トルエン、シンナーなどの有機溶剤、防火のために絨毯などに染みこませてある防炎剤などがあります。そう、生活のあちこちにその要因はたくさんあるんです。
身近なものでも洗濯に使う柔軟剤や身にまとう香水などに含まれる物質に反応する方もいます。そして本人の喫煙の有無にかかわらず副流煙を発生させるタバコもまた、大きな影響があるといわれています。自分で避けようとしても周囲の人がそれらを使用していたら、症状が出てしまうのです。仕事場や学校などで一緒に過ごさざるを得ないとしたら、大変ですね。まだ化学物質過敏症はそれほど知られていないので周りの理解を得られることも少なく、今後、議論される必要があるでしょう。
だからといって、生活のすべてをオーガニックでなんて窮屈なことはいいません。いくらオーガニックでもアレルギー症状がでることもありますし。でも、なるべくなら身体にいいものを選びたいと努力することは大切。とはいえ、この現代社会ではなかなか難しいものです。特に前述のような知人の例もあり、業務に関わってくるとやっかいですね。
ちなみに症状とはどのようなものでしょうか? ざっと挙げても8つはあるとされ、その中でも細かな症状に別れるそうです。以下に主なものを示してみましょう。
自律神経
発汗、冷え、めまい、倦怠感……
神経・精神
頭痛、不眠、不安感、うつ状態、集中力・意欲の低下、イライラ、関節痛、筋肉痛……
気道
のどの痛み、鼻の痛み、呼吸障害……
消化器
下痢、便秘、嘔吐……
感覚器
眼精疲労、視力低下、味覚異常……
循環器症状
動悸、不整脈、高血圧……
免疫症状
皮膚炎、蕁麻疹、喘息、リンパの腫れ……
泌尿生殖器・婦人疾患
生理不順、頻尿、尿失禁、膀胱炎……
こうして見てみると、たんなる風邪やうつ病と重なる症状が多々あります。普段「更年期だから」と諦めつつ感じている不定愁訴も実は、化学物質過敏症が原因なのかもしれません。だからこそ、診断が難しいともいわれているんです。アレルギーの専門医でもなかなか気づけないこともあるのだとか。
また、「シックハウス症候群」もよく聞きますが、化学物質過敏症との違いは前者が特定の化学物質や特定の場所に反応するのに対し、後者は微量でもその原因物質があるとこならどこでも反応すること。シックハウス症候群は家から特定の物質がなくなれば、症状が治まるそう。ただし、シックハウス症候群は化学物質過敏症の前段階と呼ばれることもあります。
そして怖いことに、化学物質過敏症になると日光アレルギーやアトピー性皮膚炎、花粉症など化学物質以外のアレルギーも併発しやすくなるとか。こうなると負のスパイラルに落ちいってしまいますね。
アレルギーの対策は、まず自分がどんなアレルゲンに反応するかを知ること。しかし、その原因となる物質が多すぎて、ある程度範囲を絞ってから検査をしないと検査費用だけで膨大なものになってしまいます。特定の症状が続くことに気づいたら、その日時と場所をメモしておくとよいでしょう。自分なりにパターンを分析してから、専門医に相談すると診断の手助けになるはず。そう、医師とのコミュニケーションが原因究明に役立つのです。以前は、医師の診断に患者が口を出すのは御法度という雰囲気がありました。もちろん生半可な知識を押しつけるのは今でもよくありません。しかし、最近はきちんと納得のいくまで説明をしてもらい、その上で治療を受ける権利が患者にもあると認識がかわってきました。正しい知識で、自分の身体と向き合うことも大切ですね。
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